本連載「働き方の未来」は、自分らしく、楽しく働き続けるためのヒントを提案するために始めた企画だ。その第1弾として登場頂いたのが、日本で最も著名なITエンジニア・及川卓也氏である。


 これまで3回にわたって掲載してきたインタビューも今回で第4回。及川氏はDECでビジネスパーソンとしての基礎を固め、OSの影響力がビジネス的にも社会的にも最大化した時期にマイクロソフトでWindows関連製品の開発を担当し、Webがイノベーションの源泉になった時にはグーグルで検索や「Google Chrome」のプロダクトマネージャーを務めてきた。


 今回は、グーグルから日本のスタートアップ企業Incrementsに移籍した背景、そして独立して「フリーランスのテクニカルアドバイザー」になることを決断した理由について話を聞いた。

自分の役割を変えるタイミング

外資系IT企業3社を経て、日本のスタートアップ企業Incrementsに転職しました。決定の背景にどんなお考えがあったんですか?

 DEC、マイクロソフト、グーグルの3社には、それぞれ9年間在籍しました。グーグルで9年がたった頃に、そういうリズムを感じてムズムズしてきたんですよね(笑)


 ちょうど、Google Chromeのエンジニアリングマネージャーとプロダクトマネージャーを5年くらいやって、グーグルを辞めないにしても、この先は別なことをやろうと考えたんです。Chromeはすごく好きなプロダクトでしたけど、一緒に仕事をしていたスタッフが育っていたので、自分がいなくなっても組織として回ると思っていたんです。自分が薄れてきているな、自分の役割を大きく変えるタイミングだなと考えるようになっていたんですね。


 もちろん、Chromeのプロジェクトに残りながら今までやってこなかったことを手がけていくことも考えました。ただ、他のプロジェクトをやってみたいという気持ちが日に日に強くなってきたので、次に何をするかを決めないまま、上司に相談しました。その時は、違うチームに行きたい、それは社外かもしれない、参加したくなるチームを探したい、だから自分の後継者を探したい、と相談しました。グーグルを辞める半年くらい前のことでしょうか。


 上司も理解を示してくれて、そこからグーグル社内の他のプロジェクトやチームを見ました。当時は東京から離れられない理由もあったので、本社があるマウンテンビューやサンフランシスコのような国外の開発オフィスには行けません。東京での選択肢は、Googleという良い会社で開発職を離れ、例えばクラウド・ソリューション・アーキテクトのようなポジションに就くとか、いろんな道もあったんです。でも、僕は技術開発にこだわりたいと考えて、社外を探すことになったんですね。


 社外にも様々な選択肢がありました。大きく3つに分けられるでしょうか。まず1つめは外資系IT企業の開発マネージャーです。もう1つが、エンジニアリングオフィスを新たに組織しようとしていた日本企業のディレクターといったポジション。3つめが日本のスタートアップ企業でした。


 外資系IT企業の開発マネージャーは、これまでずっとやってきました。自分の役割を変えようというときに、これでは変わらないな、と思います。2つめの日本企業は、可能性はあると思ったものの、話を聞いていくと大変そうなんです(笑)。社内調整や社内政治ですね、私なんかはまったく得意ではありませんし……。人生短いのに、そんなことで時間を使っていいんだろうか、と思ってしまいました。


 私のような人材が進む道の一つには、外資系IT企業のエバンジェリストもあります。カリスマエバンジェリストとして活躍中の、マイクロソフトの澤円さんや西脇資哲さんのようなイメージです。自分が彼らと同じ土俵に立った時、はたして勝てるだろうか──。そう考えて、自分の強みをレーダーチャートに起こしてみて、知り合いや同僚も勝手にレーダーチャート化して(笑)、自分はどこを伸ばしたら他の人たちと差別化できるだろうか、って分析したんですよ。