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Features Lifestyle 公開日:2018.07.31

アストンマーティン、空を飛ぶ

アストンマーティンのヴォランテ・ビジョンコンセプトは、飛行機か、未来のクルマか。

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 英国のスポーツカーブランド、アストンマーティンが2018年7月16日、英国で発表した「ヴォランテ・ビジョンコンセプト」のビジュアルは、あきらかに飛行体だ。不思議なビジュアルだが、アストンマーティンによると「空をいくラグジュリー・トランスポテーション」を顧客に提案するのだという。
未来の高級車は、アストンマーティンの「ヴォランテ・ビジョンコンセプト」のようになるかもしれない(写真提供:アストンマーティン)
 形態としては「VTOL(垂直離着陸機)」と言っていいだろう。このモデルの開発プロジェクトには、ロンドン郊外のクランフィールド大学、クランフィールド・エアロスペースソリューションズ、それにロールスロイスが参画している。

 「都市の過密化と渋滞はひどくなる一方です。そこで空へと眼を移すことが必要になると判断しました」。アストンマーティンのアンディ・パーマーCEOはこう語った。「郊外に住む人は、渋滞のためにクルマでの通勤に苦労しています。かつてのような都市と郊外住宅の関係が、今は崩壊していると言っていいでしょう」

 こうして浮かび上がったのが、都市とベッドタウンの関係を再構築して、昔のような人間らしい生活を取り戻すというアイデア。これがヴォランテ・ビジョンコンセプトの役割なのだそうだ。
動力源は、航空エンジンで実績多数のロールスロイスが担う計画だ
 アストンマーティンは「V8とV12という多気筒エンジンを搭載した後輪駆動」というオーセンティックな成り立ちで売るスポーツカー。それが空を飛ぶのは驚きである。まだ具体的な計画は明らかにされていないものの、例えばホンダが別会社で小型ビジネスジェットを開発したのとは少しわけが違い、アストンマーティンというスポーツカーが将来“離陸”する可能性を追求している。

 ちなみに「ヴォランテ」とは「2輪の小型馬車」という意味だ。それが飛行体のネーミングなのだから、旧世界と未来とが合体したようである。

各社が描き始めた「未来の都市の移動」

 視点をすこしズラして、都市交通のありかたに目を向けよう。自動車メーカーにとって、「都市と移動」はずっと大きなテーマだった。
大都市はいつも交通渋滞に悩まされている
 都市と移動というテーマにつながる話題としては、古くはフォードが1907年に開発した「モデルT」が挙げられる。比較的安価で買えるこのクルマがあったから、砂嵐で農地を失った米国の労働者がカリフォルニアへと移動するきっかけができた。

 「ヒトとモノの移動が自動車の存在意義」という考え方は、今も揺らいではいない。ごく最近の話でいうと、アウディの例がある。同社は2010年に「アーバン・フューチャー・イニシアティブ(Urban Future Initiative)」というプロジェクトを発足させた。イスタンブール、ムンバイ、サンパウロ、(香港やマカオ、深圳などで構成される)珠江デルタなど、渋滞で有名な世界各都市の過密化と、それに伴う渋滞解消へのソリューションを探ろうというのがこのプロジェクトの目的だ。
 その解決策の一つが「空」である。アストンマーティンに先立ち、イタリアのイタルデザインはエアバス、アウディと共同で「Pop.Up Next」というコンセプトを2018年春に発表した。このモデルは2つのモジュールで構成されている。一つは従来の自動車型、もう一つは飛行体で、空を飛ぶ際には飛行用モジュールが合体してVTOLのように浮かぶとされている。アストンマーティンの「ヴォランテ・ビジョンコンセプト」が純粋な飛行体であるのに対して、こちらは自動車がメインである。
飛行モジュールと自動車モジュールを合体させる「Pop. Up. Next」(画像提供:アウディ)
「Pop. Up. Next」の自動車モジュールはイタルデザインが開発し、飛行モジュールはエアバスが開発するという合同プロジェクト
「Pop. Up. Next」の2つのモジュールのイメージ図
「エアバスは将来のアーバン・エア・モビリティ(都市内飛行交通)の開発に熱心で、そこには自動車の知見も欠かせないという考えです。今後も私たちは密接に協力して開発を続けていきます」と、イタルデザインは、プロジェクトが先へ進むことを期待させるコメントを出している。

SF映画で描かれた未来がすぐそこに

 同時にアウディはアウディで、この「Pop. Up. Next」を「エアタクシー・プロジェクト」として研究を進めていく意向があることを2018年6月に発表した。パートナーとしてエアバスの名前は残っているが、アウディが本社を置くバイエルン州インゴルシュタットで、市を巻き込んでのプロジェクトに発展させていることは驚きだ。

 「自動運転が進むことで移動が快適になり、事故が減り、環境負荷が低くなることが期待されています。さらに次は3次元の移動によって交通問題も解決できると考えています」。アウディはこのような声明を発表しているのだが、これを読んですぐに連想するのはリュック・ベッソン監督の映画「フィフス・エレメント」だ。この作品では、空が層に分かれて車線のようになっているイメージが描かれていた。
アウディは「Pop. Up. Next」をエアタクシーと位置づけ、開発を継続することを明らかにしている
 空飛ぶ自動車は、手の届きそうな未来の乗り物になるだろうか。もう一つの映画「ブレードランナー」に登場するスピーダーに僕たちが乗る未来は、予想よりずっと早く来るかもしれない。


小川フミオ


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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