電子カルテや遠隔診療、手術用ロボットなど、近年のデジタル化によって医療や介護の分野は大きな変化を遂げようとしている。さまざまな最新技術を活用した新たなシステムやサービスが誕生するなか、大腸がんおよび前がん病変(大腸腫瘍性ポリープ)をリアルタイムに発見する、内視鏡検査時にAI(人工知能)を活用したシステムも開発されている。NECとともに、医師の立場で同システムの開発をけん引しているのが、国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科 研究所 がん分子修飾制御学分野(併任) 医学博士の山田真善氏だ。

「医師の技術や経験の格差」をなくしたい

 山田氏が開発しているのは、大腸の内視鏡検査時に撮影される画像を解析するシステム。大腸がんやポリープをリアルタイムに自動検知する機能の実現を目指している。内視鏡で撮影した画像の解析にAIを用い、解析結果をリアルタイムにフィードバックできるようにする。それが、内視鏡医の病変発見をサポートする「リアルタイム内視鏡診断サポートシステム」である。

 開発の背景にあるのは「医師側の技術や経験の格差」である。大腸腫瘍性ポリープは大腸がんの前がん病変で、このポリープを内視鏡検査時に見つけ出して摘除すれば、大腸がんへの進行を抑制できることが多い。ただ、ポリープは内視鏡医が肉眼で探すため、サイズが小さかったり形状が認識しづらかったりすると、発見しづらい。検知できる確率は、医師の技量と経験に依存することが多い。

 加えて、内視鏡検査では画像を見ながらリアルタイムに異常を見つけようとするため、経験の浅い医師は検査に時間がかかる傾向にある。検査のスピードという点でも、医師の経験とスキルが影響するわけだ。国立がん研究センターでは、1日平均で25件程度の内視鏡検査を実施している。すぐに予約が取れるとは限らず、場合によっては検査まで何日も待つことになる。1件ごとの検査時間を短縮できれば、病院内での待ち時間も、検査日までの待ち時間も短縮できる。検査日を早められれば、より早期での発見にもつながる。

 そこで、医師をサポートするシステムとしてリアルタイム内視鏡診断サポートシステムの開発が動き出した。先人たちが積み上げてきた検査結果や診断学をAIに覚え込ませることで、見逃しがちな箇所にまで素早く注意を向けられるようになり、それが結果として医師の適切な診断に結びつく。ある意味では、誰もが経験豊富な医師と匹敵する能力を得られるツールであり、患者からすると、常に経験豊かな医師に診てもらえるのと同じことになる。

リアルタイム内視鏡診断サポートシステムの概要図
(出所:NECプレスリリース)