sansansansan
Created with Snap
Pocket HatenaBlog facebook Twitter Close

Features Lifestyle 公開日:2018.09.03

キャデラックの自動運転技術なら安全なルートでアメリカを横断できる

GMの自動運転車が進むのは、同社スタッフが実際に走行して安全を確認したルートだ。

お気に入り
 自動運転は避けられない道なのか、だとしたら正しい選択はあるのだろうか。自動車メーカー各社が様々な方向性を探っている。

 米テスラの車両が“自動運転”中に事故を起こしたという報道は記憶に新しい。実はどこまでを自動運転とするかは定義がいくつかあり、テスラが本当の意味で“自動運転”を実現しているのかどうか、筆者の経験からいうと微妙である。

 日本政府は自動運転を5段階のレベルに分けて定義している。レベル1は自動ブレーキなどの運転支援、レベル2は先行車に追随走行しながら車線をキープするなど複数の動作を同時に行うこと。レベル3は、走行は基本的に車両が自動で行うものの緊急時にドライバーへ操縦が委ねられる。レベル4は一般道を含めて完全自動運転。そしてレベル5は領域に制約のない完全自動運転という定義だ。

 上のレベルにいくほど法制化や国際的な取り決めが必要になる。市販車ではレベル2までしかいっていない。それでもメーカーによる“クセ”があり、自動車線変更時などの動きに馴れないものも存在する。

 そのなかで現在、筆者が最も有効だと思っているのは米ゼネラルモーターズの「スーパークルーズ(Super Cruise)」だ。これは同社独自の自動運転技術で、特徴を一言で表現すると「定められたルートを通行するときのみ自動運転が有効になる」。大雑把にいうと、「入り口と出口のある高速道路」である。
中国にも導入される「スーパークルーズ」は場所限定の自動運転技術。キャデラックCT6に標準搭載(北米)
 この技術、米国ではキャデラックCT6に標準搭載されている。7月の発表では、2020年までにキャデラックのすべての車種に搭載し、さらにゼネラルモーターズ保有の他ブランド(おそらくシボレーなど)にも展開する予定だという。
ステアリングホイールの絵のアイコンが「スーパークルーズ」の作動ボタン
キャディラックのフラッグシップ「CT6」は日本にも導入されている(「スーパークルーズ」はないがクルマとしての出来はとてもよい)

実際に走行して安全を確認

 スーパークルーズが働くのは、「ゼネラルモーターズのスタッフが実際に走って安全を確認したルート」だそうだ。ニューヨークからロサンゼルスまで、アクセルもブレーキもステアリングホイールも、操作はクルマ任せにして北米大陸を横断できるという。現在は北米の13万キロをカバーする。

 2018年にニューヨークで筆者が体験したのはCT6のスーパークルーズだった。従来のCT6との違いは、ステアリングホイールのリム上部に黒い帯のようなモニターが埋め込まれていること。システムがスタンバイになるとモニターは青、スイッチをオンにすると緑になる。緑の間は自動運転で進み、システムが停止する際は赤になり運転手にバイブレーションでそのことを伝えてくる。
「スーパークルーズ」が作動するとステアリングホイールに設けられたマーカーがグリーンになる
「スーパークルーズ」が作動すると計器盤にも表示が出る
「スーパークルーズ」が停止すると表示が赤に変わる
 最初はおっかなびっくりだったが、緑の時に思いきってステアリングホイールから手を離すと、車両は車線の中央を維持しながら設定速度で見事に進んでいくではないか。

 3D地図データ(地図情報データベース)の「LiDAR」と、ゼネラルモーターズが北米で使う高精度GPS「オンスター」をコアの技術として採用している。LiDARはスーパークルーズが作動している間、車線中央(イエローラインと呼ばれる)を保持するコマンドも組み込まれている。さらにカメラとレーザーセンサーも重要な構成技術である。加えて、ドライバーの表情をモニタリングするカメラも搭載しており、運転手が正面を見ていないとコンピューターが判断したら、ステアリングホイールでバイブレーションを送って注意を喚起する。追い越し時などは一時的にシステムが停止し、車線の移動が完了すると再び動き出す。

 このシステムが優れていると思うのは、無理をしていないからだ。デジタルテクノロジーをうまく使いこなし、できる範囲で最善の結果を得ようとしている。フリーウェイ走行という退屈な苦行においてドライバーを補助するシステムとして有効だし、事故回避という重要な部分は人間に委ねているのも賢いと評価したい。

 筆者が試したときは急カーブが目の前に見えているのに車両は高い速度を緩めず進み、ぎりぎり手前でモニターが赤に変わってちょっと焦った。でもドライバーが運転に“参加”しているので、危険な事態に陥ることはないのだ。

 中国でも導入が発表されている。GPS「オンスター」を含むゼネラルモーターズの技術を軸に、中国のナビゲーション会社と共同開発したという。やはり高速道路限定だが、地方によって道の状態や運転マナーがかなり異なるので、最適化がそれなりに大変だったようだ。
 顔認識システムも同様で、中国には55の少数民族(中国政府による定義)が存在するため、さまざまな“中国人”に実験段階から協力してもらったそうだ。

 日本での導入予定はない(北米のようなオンスターが使えない)。便利なテクノロジーなので、それが残念である。


小川 フミオ


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

関連記事

DIGITALIST会員が
できること

  • 会員限定記事が全て読める
  • 厳選情報をメルマガで確認
  • 同業他社のニュースを閲覧
    ※本機能は、一部ご利用いただけない会員様がいます。

公開終了のお知らせ

2024年1月24日以降に
ウェブサイトの公開を終了いたします