「タクシー業界にUber、ホテル業界ではAirbnbといった変革者が登場し、サービス提供者とユーザーをつなぐデジタルプラットフォームを提供した。そして、各分野で生き残るのは数社だけ。それがデジタルビジネスだ」。こう語るのは、米Innitの共同創業者であり、CEO(最高経営責任者)を務めるKevin Brown氏だ。Innitは、スマートフォン向けのレシピアプリを提供するスタートアップ企業。彼らが仕掛けようとしているのは、食分野におけるデジタル化である。


デモにあわせてシェフに扮したInnitのKevin Brown氏

 彼らが提供するのは、単なるレシピサービスではない。食事の計画から買い物、ビデオ映像を使った準備から、スマート家電を活用した調理に至る、一連のユーザーの行動に寄り添うサービスを提供する。アプリのユーザー登録時に、特定食品へのアレルギーやビーガン(動物性食品を一切口にしない菜食主義者)など、食事へのこだわりや健康上の配慮を尋ねる。つまり、個人の事情に合わせた「あなただけのレシピ」を提供してくれるのが特徴だ。Innitは、「料理する人のためのナビゲーターになる」という意図で「あなたの料理GPS」を自称する。

40人の新興企業に大手メーカーが続々

 Brown氏によると、同社の従業員数はわずか40人。このInnitに対して、今、世界中の大手企業が熱い視線を注ぐ。同社の提携先としては、独Bosch、スウェーデンElectrolux、米GE Appliances、韓国LG Electronics、スイスNestle、オランダPhilipsなど、そうそうたるグローバル企業の名前が並ぶ。


 2018年8月末から9月初旬にかけてドイツのベルリンで行われた家電ショー「IFA2018」では、ElectroluxやLGの上級ブランド「Signature」ブース内で、Innitアプリを使ったデモが行われた。会場では、ブース内にキッチンを用意し、料理する人に対してInnitアプリが手順を追って助けてくれる様子を実演した。


Electroluxのブースで行われた、Innitとソニーとの連携ソリューションのデモ

Innit、Electroluxとの連携を紹介したソニーのブース

 同社のレシピアプリは、料理の進行に合わせてオーブンを予熱するなど、スマート家電との連動機能も備えている。Innitは、アプリが備える使いやすいユーザーインタフェースによって「家電が持っている機能をもっと使いこなそう」と、ユーザーに働きかける。これもまた、「機能はたくさん用意したのに、一部しか使ってもらえない」と悩む大手家電メーカーを惹きつけているようだ。


 今回のIFA2018では、InnitとElectroluxとの連携にソニーも参加。同社グループが提供する短焦点プロジェクタXperia Touchを組み合わせることにより、キッチン台にスマートフォンの画面を表示し、汚れた手で画面に直接触れることなくアプリを操作できるところを実演してみせた。