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Features Lifestyle 公開日:2019.02.27

クルマと周囲の通信規格「C-V2X」が攻勢、CESの会場にぎわす

V2X通信の標準で2方式が火花を散らしている。CES 2019では、移動通信方式を使うC-V2Xの勢いを見た。

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※ 上の写真はパナソニックのプレスカンファレンスの様子(出所:パナソニック)
 クルマとクルマを結ぶV2V(Vehicle to Vehicle)、クルマと信号機・標識などの道路インフラを結ぶV2I(Vehicle to Infrastructure)、あるいはクルマと歩行者や自転車を結ぶV2P(Vehicle to Pedestrian)——。このようにクルマとその周囲にあるさまざまなもの(X)を通信でつなぎ、クルマに対して高度なサービスを提供するV2Xの仕様として、「C-V2X」が台頭してきそうだ。例えば米Ford Motorは2019年1月に米国ラスベガスで開催された展示会「CES 2019」に合わせて、「2022年からC-V2X機能を米国で販売する新型モデルにすべてに搭載する」と発表。QualcommやパナソニックからもC-V2X関連の展示や発表があるなど、C-V2Xが活気づいている。
V2Xの利用シーン1(出所:Ford Motor)
 C-V2Xは4G(LTE)や、今後サービスが開始される5Gといった移動通信(Cellular)の技術を使ってV2Xを実現するものである。通信形態としては、端末と移動通信基地局を結ぶ移動通信の従来の形(Device to Network、D2N)に加え、端末同士が直接通信する形(Device to Device、D2D)も用意する。前者は移動通信に割り当てられた周波数を使う。これに対して後者では、欧州や米国で、V2X用に割り当てられている5.8G〜5.9GHz帯を使うことを想定している。

編集部注)。V2Xを使うと、さまざまな安全機能を実現できる。例えば、曲がり角の先に止まっているクルマがあること、信号が変わりそうなこと、歩行者や自転車が接近していることなどが分かる。

編集部注)日本では5.8GHz帯をITSバンドとしているが、現時点で認められているのは、インフラと車を結ぶV2I用、端的に言えばETC用であり、V2Vには利用できない。もちろん、この帯域においてC-V2Xの利用はできない。世界の動向を受けて今後、見直しが入る可能性はある。
V2Xの利用シーン2(出所:Ford Motor)
 V2Xは元々、無線LAN由来のIEEE802.11pを基盤としたDSRC(Dedicated Short Range Communications)を使うことを前提に開発されてきた(この方式をDSRC-V2Xと呼ぶ)。推進派はドイツVolkswagen、トヨタ自動車、そして米General Motors(GM)である。Volkswagenは2019年以降のすべての新車に、DSRCベースのV2X技術を搭載することを明らかにしている。トヨタ自動車は、2021年にDSRCベースのV2Xを米国で開始し、2020年代半ばまでにほとんどの車種に、同機能を提供する計画だ。GMも2023年までに、人気のあるクロスオーバーモデルにDSRCベースのV2X機能を搭載し、その後、順次車種を拡大する意向を示している。

 そんな中、2016年にドイツAudiやドイツBMW、ドイツDaimler、スウェーデンEricsson, 中国Huawei Technologies、米Intel、フィンランドNokia、米QualcommがC-V2Xを推進する団体、「5GAA(5G Automotive Association)」を結成し、移動通信方式のC-V2X方式を提唱し始めた。メンバーは拡大しており、2019年2月16日現在、ドイツVolkswagenやフランスRenault、日産自動車、ホンダなども同団体に加盟している。

 現時点で、米国や欧州では、 V2X用の周波数帯である5.8〜59GHz帯でC-V2Xを利用することは認められていない。しかし5GAA陣営は、規制当局に同周波数帯でC-V2Xを利用できるように働きかけている。規制当局側も、こうした意見に対して柔軟に対応する姿勢を見せており、5.9GHz帯でC-V2Xを利用可能になる可能性が高い。今回、FordがC-V2Xの採用時期を明示したことからも、規制当局との調整にメドを付けたと読み取れる。

米国ではC-V2Xの公道実験が開始

 冒頭に述べたように、CES 2019ではFord以外にもQualcommやパナソニックがC-V2X関連の展示や発表を行った。Qualcommが示したのは、実車を使ったC-V2Xの実証試験。ラスベガス市の公道および、会場近くの駐車場での実験の様子をCES 2019会場でライブ中継を行った。狙いはC-V2Xが問題なく動くことを示すことだ。

 前者は、ラスベガス市および南ネバダ地域運輸局との共同実験である。公道での実験はラスベガス市の信号や標識にV2X機器を設置した一方で、Qualcommの社員がラスベガス市内をクルマで走り回り、車載のC-V2X機器に現在の信号の状況や、スクールゾーンなどの標識の状態が表示されるのを見せた。
公道を使ったQualcommのデモ。クルマでラスベガス市内を走り回り信号や標識の状態を車載機に表示する。
 駐車場では、米国ではよくある、信号のない交差点における譲り合いシステムを見せた。一般に、こうした場所では、最初に交差点に近づいた車に優先権があると運転者は考え。デモンストレーションではアルゴリズムによって最初に交差点に近づいた車両を判定し、その順番にGoサインを出すようにした。また、歩行者が道路を横断していたり、優先順位を無視して突っ込んでくる車両があったりする場合には、運転者に停止するよう警告するところを見せた。
信号のない交差点の譲り合いのデモ。優先順位の最上位の車載装置にGoの文字が出る。
信号のない交差点の譲り合いのデモ。人がいると、警告が出る。人がもったスマートフォンとの間でV2P通信を実現している。
 一方、パナソニックは、自動車、インフラ、道路、交通事業者がリアルタイムにデータを共有するための基盤システム「CIRRUS by パナソニック」を発表した。2018年夏から米コロラド州政府、Ford、Qualcommなどと2018年からデンバー市と共同で行っているC-V2Xで活用しているとし、この実証実験の一部をデモンストレーションを通じて紹介した。

 V2Xの規格が乱立する中、ドイツのRobert Boschは、CES 2019で、DSRC-V2XとC-V2Xの両方の規格に対応したECUを展示した。周囲で提供されているV2X通信の環境に応じ、最適な通信方式を選択するものだ。無線LANのメッシュ通信や4G(LTE通信)にも対応する。米国のソフトウエア企業Veniamと共同で開発した。
DSRC-V2Xと、C-V2Xの両方に対応したBoschの車載装置(出所:Robert Bosch)
Boschの車載器が対応する通信方式(出所:Robert Bosch)


中道 理=日経BP総研


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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