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Features The Dawn of DX ── デジタル変革が導く未来 公開日:2022.08.31

中小企業こそ働き方改革を推進すべき理由と効果的な取り組み方を解説

 新型コロナウイルスの影響でテレワークに切り替える企業が増えた。このような変化は、日頃から見過ごされがちだった「働き方」そのものを見直すきっかけとなっている。とはいえ、企業規模が小さいところではその余力が無く、未だ働き方改革を取り入れていないことも多い。だが、実際には中小企業こそ働き方改革を推進するべきであると言えるだろう。本記事では中小企業が働き方改革を取り入れるメリットや、効果的な改革の仕方について解説する。

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【画像】Shutterstock

働き方改革とは?

 メディアでもよく取り上げられている「働き方改革」だが、その実態について知っているだろうか。企業などでも経営課題や努力目標として位置づけられることも多く、意外とその詳細は認知されていないかもしれない。

 働き方改革とは、厚生労働省によれば「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護との両立など働く方のニーズの多様化」などの状況から、生産性向上とともに「就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ること」を課題としたものだ。

 これらの課題の解決に対して「多様な働き方を選択できる社会の実現」を解決の指針としていることが説明されていた。
平成30年7月には働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が成立。そのため、多くの企業では課題とされている生産性向上や多様な勤務スタイルを実現させる環境づくりが求められるようになった。また、実際に働き方改革を推進するための課題として以下の三つの柱がある。

1.長時間労働の是正
 日本人は真面目で責任感が強い傾向にあることや、上司が帰るまで部下は帰ってはいけないなどの風潮が、長時間労働を加速させていると考えられる。他の先進国とくらべてもその差は顕著で、2013年には国連から是正勧告を受けているほどだ。

 これを解決するために、働き方改革では特例を除き「時間外労働を1ヶ月に45時間まで」との上限が設けられた。さらに労働基準監督署でのチェックも強化されている。

2.多様な働き方の実現
 最近では、特定の企業に所属することにこだわらないフリーランスという働き方なども注目を集めており、キャリアプランや生活スタイルも多様化している。一つの仕組みやルールを設けることが必ずしも得策とは言えないのではないだろうか。少子高齢社会では、柔軟性の無いワークスタイルに限界がくる日も近いだろう。

 この問題を解決する策として、働き方改革では「フレックスタイム制」の導入が推奨されている。例えば、8時間労働を週5日で合計40時間と計算するのではなく、週5日の労働時間が計40時間であれば、1日の勤務時間に差があってもよいとする制度だ。

3.正規、非正規の格差解消
 正規、非正規社員などの雇用の違いによる待遇の差は、勤務意欲を下げてしまう。非正規社員として勤務している人の数は年々増加しており、2020年には女性118万人、男性112万人になったというデータがある。
 この問題に対し「同一労働・同一賃金の原則」が施行されることとなった。正規と非正規雇用の間に生じる不合理な待遇を解消しなければならないとされている。

中小企業でも取り組むべき働き方改革

コロナ禍によりどう変化した? 働き方改革の実態とは

 2020年4月以降、中小企業でも働き方改革に対する規制が強化された。とはいえ、実際に働き方改革に向けて動いている中小企業の割合はどれほどなのだろうか。
 2020年に発表されたHR総研の調査によると、働き方改革に「積極的に取り組んでいる」と答えた大企業は62%だったのに対し、中堅企業では30%、中小企業では22%となっている。中小企業が働き方改革に踏み切れない実情が浮き彫りになったと言える。
 また、サイボウズチームワーク総研のデータによると約4割の企業では、新型コロナウイルスの流行をきっかけに従来の働き方とは異なる変化が生じたようだ。未だに世界中で完全な収束の目処は立っておらず、このような変化はさらに加速していくだろう。

働き方改革による経営側のメリット

1. 社員の満足度とやる気の向上
 労働時間の短縮やフレックスタイム制などの導入で社員が柔軟な労働時間を選択できるようになり、ワークライフバランスの充実が見込める。日常生活が充実することでやる気が向上し、スキルアップや労働効率の向上が期待できるだろう。

2. 企業のブランド価値の向上
 働き方改革に前向きな取り組みをしている企業は社会的な評価が上がり、企業のブランド価値向上につながるだろう。昨今は就職先を選ぶ際にCSRを重視する傾向が強いと言われており、優秀な人材が集まりやすくなることも期待できる。

3. 業務の効率化、生産性向上
 社員の働き方を変えることで業務の効率化、生産性の向上が期待でき、売り上げの向上や人的コストの削減につなげやすい。中小企業ができる業務効率化の方法としては大きく分けて以下のA、B、Cの方法が考えられるだろう。

中小企業における働き方改革の導入事例

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 実際に、この働き方改革を元にどのような取り入れ方がされているのだろうか。導入によって生じている効果や、メリットなども合わせて紹介する。

ITツールの導入でシフトが自由に

 焼肉店を運営する「SKレストラン三水苑」では、IT技術を導入しセルフオーダー化することによって正確さやスピードが向上。店舗に居るスタッフは調理や接客に専念することができるため、シフトに必要な人数を減らすことに成功した。オーダー状況の分析からメニューの改善も行うことで、同じ営業時間でも利益が上がった。

 これらの改革からスタッフのシフトの自由度が増したことで、働きやすい環境づくりも実現させた。ITツールの導入は働き方改革をするうえで大きな役割を果たしている。

コミュニケーションツールでモチベーションを維持

 福岡県にある「お掃除でつくるやさしい未来」では、集合住宅の共有部の清掃を行っている。契約物件は関東や近畿、九州など多岐にわたるが、契約しているスタッフは子育て世代の女性が九割以上だ。

 集合住宅の共用部の清掃は、比較的勤務時間の調整が可能なため、子育て世代の女性が働きやすい環境である。遠方での注文にも対応するため現場である集合住宅に直行直帰できるスタッフを中心に雇用したものの、本社スタッフと遠方に居るスタッフのコミュニケーションが難しく、モチベーション維持が大きな課題となっていた。

 そこで、福岡県が立ち上げた「テレワーク導入支援事業」の活用がきっかけでクラウド型コミュニケーションツールを導入し、社内のみで見られる電子掲示板やチャットなどの機能を使い、遠方に住んでいるスタッフと本社スタッフとのコミュニケーションが可能になった。その結果、本社と同レベルの清掃品質の確保が実現し、モチベーション向上にもつながり、さらには、雇用者数を三倍に増やすことに成功。ターゲットに合わせた働き方改革を行うことで、結果的に契約棟数も七倍に伸びている。

全員で情報を共有するホラクラシー型の組織

 英会話スクールの「ジェム」では上司や部下という関係性をなくし、徹底したIT化によって、メーリングリストやクラウド、社内ポータルサイトで時間や場所を問わず全員で情報を共有している。また、個人が持つ裁量権を広くすることによって個人の意見を反映しやすくなり、目的達成のために自分には何ができるかを自発的に考えるカルチャーが醸成され、スタッフの育成にも役立っている。

 また、性別や国籍、宗教、年齢に囚われることなくスタッフの能力を引き出せる企業経営を行っており、個人のプロフィールに関わらず誰もが安心して働くことのできる環境を実現させるという考えがベースになっている。このような改革で社員同士の格差解消を実現させることにより、モチベーション維持はもちろん、スタッフのスキルアップに向けて大きな力となっている。

中小企業が働き方改革へ対応する際のポイント

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 実際に働き方改革へ対応する際には、どんなポイントに気をつければよいのだろうか。国内雇用の大部分を担っている中小企業だからこそ、働き方改革を積極的に取り入れていきたいものである。

人材不足を解消させるうえで多様な働き方ができる環境作りを行う

 優秀な人材を確保することに難しさを感じている企業は多いだろう。しかも優秀な人材が入ったところで、離職率が高ければ意味が無い。競合他社との差をアピールするためにも、人材を確保しやすい勤務体制を整備する必要がある。フレックスタイム制や確実な有給消化、労働時間の制限などを設けることが大切だ。

業務の効率化をはかる

 コロナ禍になり、出社義務が見直されている企業も増えているが、仕事に不要な行程が無いか徹底的に話し合うのは重要だろう。ITに技術を用いることで、瞬時に時間を短縮できるものもあるかもしれない。やらない仕事とやるべき仕事の差別化をしよう。そうした作業が、全体として残業を減らすことに繋がるのだ。

 加えて、時間に猶予ができると新しいことに挑戦したり、成長に向けて勉強したりする時間が生まれる。スタッフの自主性や能力向上にもなるだろう。こうした小さく思える業務整理が、将来への大きな投資になる。

中小企業が働き方改革を行ううえで直面する課題

 中小企業のなかには働き方改革を導入したとしても、有効活用できていない状況に陥ることもあるだろう。実際にどんな壁にぶつかることがあるのかを説明する。

残業移管の上限が設けられたことによる業務量の変化

 上限があり、残業時間が減ってしまったために、通常の業務量を遂行できないということがあるだろう。残業有りきで回っていたシフトだった場合、利益が落ち込んでしまうのは明らかだ。上限が気になって、勤務中に休憩が取れないなどの本末転倒な事態にならないよう注意しよう。

新人の教育にあてる時間がないことによる離職率の高さ

 残業が減り、労働時間が減ったことによって通常の業務を集中して進める必要がある。そのために、新人教育が十分にできない事態に陥ることが懸念される。そのような環境に居る新人は離職率も高い。マニュアルを整備したり、チャットツールなどを利用して新人が質問しやすい状況を作り出すなどの工夫が必要だろう。

アナログな業務をデジタル化し、生産性を向上させる

 ITツールの導入で無駄の多いアナログ業務を効率化したり、人力で行っている煩雑な業務を自動化したりすると、社員の業務負荷の削減につなげやすい。このような業務の代表例としては以下の三つが挙げられる。

ダイレクトメールや年賀状の送付

 各部署から名刺のコピーを収集し、エクセルなどに手作業で入力して送付先のリストを作る必要がある。この作業にある程度の工数を取られる。また、リストのメンテナンスを怠ると、得意先がリストから漏れてしまったり、送付先の誤りに気が付かずに送ってしまい届かなかったりするミスも発生しやすい。

アプローチ企業や得意先への営業

 先方の担当者の連絡先や過去に行ったやり取りを自社の担当者に確認する必要がある。また、そもそも得意先からの問い合わせに担当者以外の社員が対応した場合、その得意先と自社との取引実績を知らない場合も考えられる。その場合には適切なコミュニケーションが取れず、顧客満足度が低下する恐れがある。

業務引き継ぎ

 組織変更などで業務の引き継ぎが発生した場合、担当する案件の情報や商談の状況をアナログなメモや口頭でやりとりするケースがある。これでは組織変更のたびに、前任者と後任者の間でやり取りが必要となり、非効率な状況が生まれてしまう。また、引き継ぎが正確にできていない場合、得意先とのコミュニケーションが適切に取れず、この場合も顧客満足度が低下する恐れがある。

 この三つの業務は、顧客に関する情報がアナログな方法で保存されており、属人化していることによって、非効率で不正確なコミュニケーションが発生している。このような業務はITツールの導入によって効率化することができる。効率化のポイントは「顧客の情報や過去の商談情報のデジタル化」である。

顧客情報をデジタル化するのにおすすめツール

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 では、どのように顧客情報をデジタル化すればよいのだろうか。一般的にはCRM(顧客管
理)システムやSFA(営業支援システム)、MA(マーケティングオートメーション)の導入によって解決を図る場合が多い。

CRM

 顧客一人ひとりのニーズを細かくくみ取り、利益を最大化しようとする手法がCRMである。CRMシステムでは一般的には顧客データベースの管理やプロモーション機能、レポート機能が標準で含まれる。また、俗にCRMシステムを指して「CRM」と呼ばれるが、本来CRMは手法の名称であり、ITツールであるCRMシステムとは別の概念である。

SFA

 SFAもCRMシステムと類似した機能を持つITツールである。しかし、CRMがマネジメントに重点を置いているのに対して、SFAは営業担当者の支援に重点を置いている。データを参考に戦略を練る、あるいは、営業部やマーケティング部といった複数部門で顧客データを共有し、商談のデータも担当者間で共有できる。

MA

 上記二つと似たツールだが、こちらはマーケティングの支援に主軸を置いているのが特徴である。顧客データの収集・蓄積によって、収益のプロセスを可視化し、改善に取り組みやすくする。

正確な顧客データを構築するために活用できるITツール

 既存の顧客情報を正確にデジタル化するにあたって鍵になるのは、実は名刺データである。名刺は最も正確かつ最新の顧客情報であり、名刺をデータ化して管理することで正確な顧客情報を常に利用することができる。特に名刺管理サービスを使えば、顧客の名刺をスキャンし、デジタル化された顧客データとして取り込むことができる。名刺管理サービスを導入し、CRMやSFA、MAと連携させることで効果的に業務改善を進められるはずだ。

名刺管理サービスの導入で働き方改革の第一歩を

 本記事では中小企業でも働き方改革に取り組むべき理由と、その第一歩としてのアナログ業務のデジタル化について解説した。顧客データのデジタル化によって業務の効率を高め、生産性の向上が可能である。ぜひこの機会に業務のデジタル化を通じた、働き方改革を検討してみてはいかがだろうか。

 コロナ禍で働き方の変化も激しく、これから増々、多様性に富んだワークスタイルは人材を確保していくためにも必須である。総務省のデータによると全国382万企業のうち、99.7%が中小企業のようだ。中小企業での働き方改革は日本の社会や労働環境などにも大きな影響を与えるだろう。
 だからこそ、中小企業には管理ツールを活用して人員のコストを下げる働き方改革の推進が必要だ。名刺管理サービスである「Sansan」は案件の状況を共有し、提案内容を相談することもSansan上でできるため、営業活動の効率化を実現できる。営業DXサービス「Sansan」について、詳しくは以下の資料をご覧いただきたい。

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