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Features The Dawn of DX ── デジタル変革が導く未来 公開日:2022.08.31

似ているようで違うデジタル化とDX、それぞれの目的とメリットを知って自社を進化させる

 「デジタル化とデジタルトランスフォーメーション(DX)の違いがいまいちよくわからない」という方は少なくないだろう。近しい用語であり同じようなシュチュエーションで使われる言葉、考え方だが、両者には明確な違いがある。  そこで本記事では、デジタル化とDXそれぞれの定義やメリット・デメリット、両者の定義の違いを説明する。また、DXが求められている背景や、DX推進の流れ、具体的事例まであわせて紹介。DX推進を検討されている方は最後まで読んでほしい。

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 「デジタル化とデジタルトランスフォーメーション(DX)の違いがいまいちよくわからない」という方は少なくないだろう。近しい用語であり同じようなシュチュエーションで使われる言葉、考え方だが、両者には明確な違いがある。

 そこで本記事では、デジタル化とDXそれぞれの定義やメリット・デメリット、両者の定義の違いを説明する。また、DXが求められている背景や、DX推進の流れ、具体的事例まであわせて紹介。DX推進を検討されている方は最後まで読んでほしい。

デジタル化とDXの違い

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 デジタル化とDXの違いは質的な面にある。デジタル化はデジタル技術を用いて特定の工程の効率化や生産性向上を進めるものだが、DXには、競合優位性の獲得を目的としたビジネスモデルなどの変革も含まれている。より根本的な変革を目指すのがDXと考えるとよいだろう。

 デジタル化の方が実現しやすく効果も上がりやすいが、DXでビジネスモデルを変革しなければ、競争優位性まで生まれない。

デジタル化とは

 デジタル化とは、アナログで行っていたビジネス活動をデジタルベースに置き換えるなど、デジタル技術を用いて特定の工程に関する業務の効率化や生産性向上、コストカットを図るものだ。例えば、今まで紙ベースで書いていた日報などをデジタルベースに置き換えたり、会議室で行っていた会議をZoomなどのオンライン電話会議ツールに置き換えたりすることもデジタル化だ。

 デジタル化の特徴は、すぐに実行できることだ。今までアナログでやっていたことを単にデジタルベースに置きかえるだけなので、比較的コストがかからず簡単に実行できる。デジタル化はどのような企業であれ、今すぐに実行すべきだ。そうでなければ、業務効率やイノベーション創出など、さまざまな面で競合に置いていかれることが必至だからだ。

DXとは

 DXとは、競合優位性を確立するために、激しく変化する市場に適応しながら、データやデジタル技術を活用して、ビジネスモデルそのものを変革していくことである。「変革」という意味を持つ「トランスフォーメーション」の意味合いがなければ、真のDXとはいえない。経済産業省は、DXを以下のように定義している。
DXとは
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。 」
 営業領域を例に説明しよう。新型コロナウイルス感染症拡大という社会の変化をきっかけに、営業活動はオンラインシフトないしDXを進めることへの需要が高まった。それに伴いZoomなどコミュニケーションツールや、オンラインで得た顧客情報を管理するITツールを導入して営業活動のデータを可視化してきた企業も多いだろう。それらのデジタル技術や可視化されたデータを駆使し、市場の変化や顧客のニーズに合わせて営業の組織体制を再構築することがDXだと言える。

デジタル化とDXのメリットを比較

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 デジタル化とDXそれぞれのメリットを比較したい。デジタル化は具体的な業務の変化を示すことが多いのでイメージしやすいだろう。自社の状況を頭に置きながら、デジタル化からDXの過程で自社がどのように変化していくのかを想像しながら読んでほしい。

デジタル化のメリット

 既存のシステムで行っていた活動をデジタルベースに置き換えることで、生産性の向上が図れる。例えば、今まで紙ベースで行っていた稟議のプロセスをデジタル上のチャットベースに置き換えれば、意思決定のスピードが向上するだろう。健康診断のお知らせなどを会社から従業員に通達する際にも、デジタル上で行えば意思伝達が早くなり、作業時間の短縮、人件費の削減が可能だ。デジタル化によって業務効率が向上すれば、空いた時間をより生産的な活動に向けることもできる。

 デジタル化によって、働き方の多様化も実現できる。業務をデジタル化することで、自宅にいながらにして業務をすることも可能になった。リモートワークを支えているのは、日々のコミュニケーションをデジタル化するチャットツールや電話会議ツールだ。

DXのメリット

 DXはデータとデジタル技術を用いて、新しいビジネスモデルを構築することだ。結果として、市場にないまったく新しいタイプのビジネスが生まれれば、競合企業に対しての競争優位性を獲得できる。

 どの企業でも実践できるデジタル化に対して、DXはビジネスモデル自体の変革ももたらすので、DXを進めることで必然的に競争優位な企業が生まれる。デジタルビジネスには「勝者総取り」の側面もあるので、DXに成功した 勝者が市場の覇者になることも珍しくない。

 また、DXは外部環境への適合からBCP(事業継続計画)対策としても利点がある。パンデミックの拡大や自然災害の発生といった予期せぬ事態をきっかけに、従来のビジネスモデルからの脱却が求められるケースもある。DXをして自然発生的な外部環境に耐えうるビジネスモデルを構築することで、災害発生時も企業が生き抜く可能性を高めてくれる。

DX実現へのプロセス

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 DXを実行するということは、単にデジタル化を推し進めることではない。ビジネスの根本的な変革も行うものである、ということは上述した。それでは具体的に、どのような手順を踏んでいけばDXを実現できるのか。

 ここでは、DXの具体的な実行プロセスについて解説する。DXは駆け足で行うものではなく、全社的な戦略のもとに行うものなので、各プロセスは慎重に実施すべきだ。

ビジョンを描き、計画を策定する

 DXを進める際には、まずDXを通して何を実現したいのか、ビジョンを描くことから始める。DXによって生産性を向上したいのか、競争力の高い新規ビジネスを創出したいのかなど、目的を明確にしよう。その後、DXを進めるために社内の合意形成を促す。合意が取れた段階で、具体的にどのようにDXを進めていくのか、計画を策定する。実施すべき項目を洗い出し、スケジュールにまで落とし込もう。

合意の形成

 DXはプロジェクトチームだけではなく、多くのステークホルダーを巻き込む大変革だ。そのため、ステークホルダーの合意がなければ、頓挫してしまうケースもある。DXによって業務が変わる部署だけでなく、社外も含めた多くのステークホルダーの合意を得ておく必要がある。

DX人材・体制の確保

 DXに必要とされる最新鋭の技術を操れるIT人材は希少だ。自社で確保できれば良いが、一般的にはDX人材を自社で抱え込むのは難しい。ITベンダーや経営コンサルティング会社とチームを組むのであれば、その選定も慎重に実施しなければならない。

DXを実施する

 計画・体制ができたら、DXを実施する。ITベンダーや経営コンサルティング会社と協働しながら、あるいは自社のみで、計画に落とした内容を実施しよう。DX実施後は、定期的に効果測定を行う。これによりDXが有意義なものであったのかどうか、反省することができる。

企業が取り組みやすいDX事例

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 企業が取り組みやすいDX事例を紹介したい。自社のビジネスに対して適応できそうな内容をDXへの足掛かりとしてほしい。

サブスクリプションモデルの導入

    国内最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車では、従来購入しなければ利用できなかったトヨタやレクサスの新車を、「KINTO(キント)」と呼ばれる月額サブスクリプションサービスで提供するようになったことで、ユーザー層を拡大させることに成功した。

  近年では乗用車の保有台数が徐々に減少しており、東京都主税局によれば2050年には乗用車保有台数が2020年に比較して10%以上減少すると見込まれている。そのような社会の変化もある中で、自動車の販売だけでなくサブスクリプションモデルの導入に踏み切った。従来よりあった買い切り型のビジネスモデルを、よりユーザーニーズにあった低価格かつ、事業としての収益も出るような価格設定に変更。サブスクリプションサービスの利用のために必要になるアプリの開発などデジタル技術を取り入れた。サブスクリプションサービスは頻繁にデジタルサービスを利用している層と相性がいいので、SNSなどを積極活用したデジタルマーケティングで訴求することも重要になる。

AIを活用する

AIを自社のビジネスに適用し、新たなユーザーニーズを発掘したり、今まであったユーザーニーズにより深く応えていくような方向性は、DXの王道と言っていい。 

 国内最大級のタクシー事業者である日本交通は、タクシー業界のDXの先頭を走っている。「AI配車」と呼ばれるシステムによって最適なタクシー需要予測を可能にした。これまではベテランと新人の運転手の間で、例えば長距離移動を求める顧客の見つけ方など、需要予測に経験値による差が生まれていた。しかし、交通機関の情報や地域、時間、気象情報やイベント情報などのデータをAIに与えることで、タクシー需要を予測している。最適な配車ができるようになったことで、ユーザーの稼働率は上昇した。

 大手建機メーカーの小松製作所では、「SMARTCONSTRUCTION(スマートコンストラクション)」と呼ばれる建設DXソリューションを提供している。ソリューションにはAI技術を活用しており、建設現場の生産データを収集・活用することによって、安全な建設作業を可能にする。建設機械ではオペレーターが周囲の状況を認識しづらいのが課題であったが、AI付きドローンがカメラで状況をリアルタイム認識しつつ、オペレーターに適切な指示を出せるようになったことで、労働安全性と施工精度の向上につながった。

 また、AIによる建設工事業務の効率化も実現している。従来は人の手で建設現場の複雑なプロセス管理・追跡などを行っていた。しかし、ドローンで収集した現場データを分析することで、ダンプトラックの運搬経路を最適化するといったように、AI付きドローンが3D で現場の状況を収集しプロセス管理・追跡に必要な情報を正確かつ効率的に把握できるようになった。

 自動車保険分野でもAIを活用した新しい価値提供が始まっている。ソニー損害保険が提供する「GOOD DRIVE」という自動車保険では、アプリがドライバーそれぞれの事故リスクを運転時に特定し、「安全である」と判断したドライバーには保険料のキャッシュバックが行える。ソニー損害保険では「GOOD DRIVE」が誕生するまで、年間走行距離や車齢などのリスク較差から自動車保険料を算出していたが、ドライバーの運転特性から事故リスクを計測することは難しかった。

しかし、AIやクラウド技術によって運転特性の計測精度を高めてリスクの推定を可能にし、運転特性を踏まえた自動車保険料の算定が実現した。

 上記の三社のように、AIを活用して自社のビジネスを進化・深化させることができないか、よく検討してみるといいだろう。

アプリの開発

 アプリ開発も取り組みやすいDX事例だ。従来からあったユーザーのニーズに応えたり、新たなニーズを掘り起こすことができる。

 アメリカ最大の小売業者であるWalmartは、従来より機能別に散らばっていたユーザー向けアプリを統合して一本化したことで、顧客満足度を向上させた。ユーザー向けアプリが複数ある企業であれば、それを一本化するだけでできる施策なのだから、比較的容易にできると言っていい。

 鹿児島銀行では、鹿児島におけるキャッシュレス決済を推進すべく、完全キャッシュレス商業施設の「よかど鹿児島」をオープンさせるとともに、キャッシュレス決済アプリ「Payどん」をリリース。「Payどん」は「よかど鹿児島」において約25%の利用率を誇る。施設とアプリの相乗効果で、地方におけるキャッシュレス決済化を加速させている格好だ。

 アプリ開発は目的によって、さまざまな活用法が考えられる。自社が実現したいビジネス上の課題から逆算し、アプリを開発することが重要になる。

今、自社に必要な施策を検討しよう

 デジタル化とDXは似ているが、違うものだ。デジタル化は既存のアナログ業務をデジタルベースに置き換えることを意味する。一方で、DXはより根本的なビジネスモデルの変革・創出も含む。つまり、デジタル化はDXの一歩前のステップともいえる。

 昨今の社会的背景からデジタル化とDX両者ともにニーズが高まっている。自社にとって必要な施策を検討してみよう。

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