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Features The Dawn of DX ── デジタル変革が導く未来 公開日:2022.07.01

【DX事例】国内・海外企業の成功事例とメリット・デメリットをご紹介

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【画像】Shutterstock
 デジタルトランスフォーメーション(DX)と言われても、言葉だけが先行して、具体的なイメージやビジョンを思い浮かべるのは難しいものだ。デジタルトランスフォーメーションを経験したことがある人材も少ないが、そもそもデジタルトランスフォーメーションを効果的に実行できている企業はそれほど多くない。

 本記事では、デジタルトランスフォーメーションの具体的なプロセスを理解し成功のイメージをつかめるよう、17社におけるDXの事例をわかりやすく解説する。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?

 デジタルトランスフォーメーションとは、企業の競争優位性確立のためにデジタルテクノロジーを用いてビジネスを変革することだ。経済産業省は、デジタルトランスフォーメーションについて以下のように定義している。

DXとは

 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
 デジタルトランスフォーメーションは単なるデジタル化とは違う。デジタル化は今までアナログで遂行していた業務をデジタルベースに置き換えることだが、デジタルトランスフォーメーションは、デジタル化を手段として組織やビジネスを再構築して競争優位性を獲得することを意味する。

 例えば、今まで紙ベースで行っていた契約書作成業務を、デジタルデータベースで作成するように置き換えることはデジタル化。顧客とのやり取りも含めて、すべての契約プロセスをデジタルベースに置き換え、電子契約だけですべての契約が完了するように組織体制を変革するのがデジタルトランスフォーメーションだ。両者の違いは、根本的なビジネスプロセスの変革があるかどうかで判断できる。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の成功事例

【画像】Shutterstock
 デジタルトランスフォーメーションの定義はわかったとしても、それだけでは具体的なイメージは依然としてしづらいだろう。そこで本項では、デジタルトランスフォーメーションを成功させた国内・海外の企業事例を紹介したい。

トヨタ自動車

 日本の製造業の代表的存在であるトヨタ自動車も、デジタルトランスフォーメーションの先駆者だ。トヨタ自動車は、自社工場のデジタルトランスフォーメーションを進め、工場から取得できる3D CADデータなどの生産データを社内全体で一元管理できる仕組みを構築して「工場IoT」を実現させた。

 トヨタ自動車は「工場IoT」によって、より生産性が高く、顧客に提供できる付加価値が大きい自動車作りを目指している。激しく変化する顧客ニーズに対応できる高効率な生産体制や、生産ラインの異常検知ができるシステムは、マーケティングやセキュリティにも役に立つ。
【参考】TOYOTA

ソニー損害保険

 ソニー損害保険は自動車保険のデジタルトランスフォーメーションを実現させた。自動車運転者の運転スキルをスマホアプリを通じて収集し、運転のリスクをより正確に判断できるようにした「GOOD DRIVE」という商品を開発、提供している。

 アプリによって事故リスクが低く安全運転をするとみなされた契約者には、ソニー損害保険からキャッシュバックする。このようなインセンティブ設計を導入することによって、契約者が危険な運転をすることも減るだろう。

家庭教師のトライ

【画像】Shutterstock
 家庭教師のトライでは、従来ではオフラインの授業しか行っていなかったが、映像授業「Try IT」を開発し、デジタルトランスフォーメーションを実現させた。映像授業を提供することで、より多くの生徒に効率よく授業を届けられるようになった。コストも当然オフラインより安く提供できる。

 さらに、映像授業を開発したことによって、オフラインと組み合わせて使うだけではなく、オンライン専門の教育サービスを提供できるようにもなったのだ。
【参考】Try iT

三井住友銀行

 三井住友銀行は、電話や窓口、インターネットなどで応対して得られた顧客の声の分析をデジタルベースで行うようにした。その結果、より高速かつ正確に顧客の声を分析できるようになり、それらのフィードバックを業務に活かすことで顧客サービスの品質向上を実現させたのだ。

 さらに、集まったデータから声の大きいニーズを分析して抽出することで、そのニーズを実現するための新規サービス創出もできるようになった。この事例のように、デジタルトランスフォーメーションを行うことで、顧客のデータが取れるようになると、思いも寄らないチャンスが掴めるようにもなる。

鹿島建設

 鹿島建設は建設作業のデジタルトランスフォーメーションを進めている。従来まで建設現場で実際に人が進めなければならなかった業務を、AIやロボットなどを活用して一部自動化させることに成功した。

 これによって、慢性的な建設現場の人員不足を解消できる。また、作業現場における不慮の事故などを減らすこともできるだろう。建設作業自体の効率性アップも期待できる。建設業のデジタルトランスフォーメーションはいいことづくめだ。
【画像】Shutterstock
 Amazonは言わずと知れたEC界の巨人だ。当初主流だったオフラインでの商品売買事業をオンラインに普及させるために、市場が大きくオンライン販売で成功する可能性も大きかった本からインターネット物販をスタートさせ、今では本以外にもさまざまな商材を取り揃えているオンライン商店へと成長した。
 また、Amazonのインフラシステムは、Amazon Web Servicesとして、それ自体が商品にもなっている。デジタルトランスフォーメーションが単なるデジタル化以上の価値を生むことがわかる好例といえよう。
【参考】aws

IBM

 IBMは、AIを用いて人材育成をはじめとする人事戦略を変革している。自社の従業員体験向上を図るためにAI「IBM Watson」を活用し、社員それぞれのスキルや歩みたいキャリアに沿って、スキル習得の機会を個別最適化しキャリア形成プランの構築に役立てている。企業の優位性を獲得するにあたって必要な資本である人材領域において従業員体験向上は重要視されており、「IBM Watson」はその発展に寄与している。

 「IBM Watson」はサービス化され、IBM社内の人材育成だけでなくだけでなくさまざまな企業のデジタルトランスフォーメーションをサポートしている。フォーラムエンジニアリング社では人が介在しない人材マッチングという新たなビジネスモデルの実現をするなど、育成業務にとどまらず新たな価値を創出している。

ユニリーバ

 ユニリーバは、顧客データベースを独自で構築し、デジタルツールも活用することでより高度なマーケティング戦略立案を実現し成果を上げている。会員登録やユーザーのオンライン上における購買行動などから獲得した膨大な情報から顧客データベースを作成。マーケティング戦略の一つとして、顧客データベースを活用して広告ターゲティングの精度を向上させることで、従来と同水準のブランド認知度を得るためにかかるコストを約80%削減した。

 また、AIによるトレンド予測やRPAを用いたビジネスプロセスの生産性向上など、顧客データベースを有効活用するためのテクノロジーも導入し、優位性獲得につなげている。

デジタルトランスフォーメーション(DX)が必要である理由

 デジタルトランスフォーメーションが必要な理由は多数ある。

 例えば、デジタルビジネスが主流になっていくなか、出遅れてしまえば他の最先端デジタル企業に自社の市場シェアを奪われる恐れがある。デジタルビジネスはどの業界でも基本的に勝者総取りになるので、一刻も早くデジタルトランスフォーメーションに取り組まねばならない。

 日本における労働人口の減少による人材不足の問題もデジタルトランスフォーメーションを推進しなければならない理由のうちの一つだ。少ない人数で高い成果を上げるためには、収益性の高いデジタルビジネス分野で基盤を築くことが重要になる。

デジタルトランスフォーメーション(DX)のメリット 業務効率化・生産性向上

 デジタルトランスフォーメーションの最大のメリットは、業務効率化・生産性向上だ。例えば、工場をデジタルトランスフォーメーションしてIoT化すると、工場の生産データを一元管理できるようになり、データを分析して業務上の無駄を発見して業務改善ができるようになる。基本的に、デジタルテクノロジーは効率化と相性がいい。

 また、業務効率化により、より少ない人数で大きな成果を上げることも可能になる。少子高齢化が進んできている日本では、人手不足が深刻な課題となってきている。今後、より進んでいく人手不足に対応するためには、デジタルトランスフォーメーションを進めるして、自社の生産プロセスをより効率化する必要がある。

新規事業を創出できる

 デジタルトランスフォーメーションを進めると、ビジネスプロセスやユーザー行動などに対するデータを収集しやすくなる。それらのデータを分析することで自社の強みをあらためて認識し、真のユーザーニーズを発掘することが可能だ。デジタルトランスフォーメーションを進めることで得られた質の高いデータがあれば、より確度の高い新規事業創出が可能になる。

 また、既存のビジネスをデジタルベースに置き換えることだけで、新しいタイプのビジネスを創出することにもなる。例えば、店舗でしか販売していなかった商材を、ECサイトを作成して販売すると、今までは購入していなかったタイプのユーザーを発掘できる可能性もあるだろう。

コスト削減

 デジタルトランスフォーメーションとは、より少ない人数で多くの付加価値を創出できるようになる変革のことでもある。今までよりも少ない人数で事業が回せるようになるのだから、人件費を削減できる。また、例えばECサイトで自社商品を販売するようになれば、店舗を出店するコストがかからない。もちろん広告費などはかかるものの、やり方次第であろう。

 自社ビジネスをデジタルベースのものに変革すると、さまざまな面でコスト削減ができる。ビジネスプロセスだけではなく、営業やマーケティング、バックオフィスの業務なども含めてあらゆる分野が対象になるだろう。

採用の競争力が向上

 自社ビジネスをデジタルベースのものに置き換えることで、若くて優秀なデジタル人材を獲得できる可能性が高まる。これからのビジネスの大半はデジタルベースのものになることを考えれば、早い段階からデジタルテクノロジーを駆使できる優秀な人材を自社に確保しておきたいところだ。

 デジタルトランスフォーメーションを実施すれば、伝統的な企業でも、「新しいことにもチャレンジする意欲や能力がある会社なのだな」と理解される。デジタル人材の多くは、新しいことや、変化を好む。そうした事情を考えれば、デジタルトランスフォーメーションは、間接的にではあるが採用競争力を高めることにもつながる。

デジタルトランスフォーメーション(DX)のデメリット 全社的な問題になる

 デジタルトランスフォーメーションは単なるデジタル化やIT化とはスケールが異なる。ビジネスの根本的な変革が必要になるため、全社的なプロジェクトとして推し進めていかねばならない。まず、デジタルトランスフォーメーションを企画する段階で、社内の各部署の部長などと調整することが必要になるだろう。他の部署が変革に反対し、計画が頓挫する可能性もある。

 ビジネス変革に直接的に関わってくる部署の関係者には、プロジェクトに実際に加わってもらい、一緒にプロジェクトを推進してもらわなければならない。自部署の通常業務に加えてプロジェクトの業務を行ってもらうことになるので、業務の負担はかなり大きいものになる。全社的なプロジェクトとなると、関係各部署の説得も大変だ。

失敗する可能性もある

デジタルトランスフォーメーションは、実施したからといって必ずしも成功するわけではない。     例えば、デジタルテクノロジーを活用した新規事業を作ったとしよう。しかし、その新規事業が市場から受け入れられず、デジタルトランスフォーメーションにかけた投資が無駄になってしまうこともあるはずだ。

 また、デジタルトランスフォーメーションのプロジェクト自体が頓挫することもある。日本のデジタルトランスフォーメーションの進みが遅い理由として、現場の反発が強い点は忘れてはいけない。デジタルツールを積極的に取り入れてビジネスプロセスを変革しようとしても、現場がそのツールを使ってくれなければ変革はできない。他にも、外部のステークホルダーが協力してくれないなどの理由でプロジェクトが失敗する可能性もある。

人材流出の可能性

 デジタルトランスフォーメーションは組織やビジネスの根本的な変革をともないものなので、現場のベテラン社員などから反発を受ける可能性が高い。実際に、製造業などでデジタルトランスフォーメーションがなかなか進まない主要因として挙げられることもある。そうした状況のなかで、現場の反発を押し切りデジタルトランスフォーメーションを推し進めるとどうなるだろうか。

 おそらくではあるが、高確率で現場社員の流出を招くだろう。今まで慣れ親しんだやり方を続けていきたい社員が大量に退職してしまう恐れはある。しかし変革にはさまざまなリスクがともなう ものであり、人材流出のリスクもあらかじめ理解した上で実施するほかない。

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のポイント DX推進の目的を明確にする

 デジタルトランスフォーメーションを推進する際には、プロジェクト推進の目的を明確にしなければならない。何のために変革をするのかが明確でなければ、変革の具体的な内容も定まらないためだ。新しい収益源の確保なのか、旧来のビジネスプロセスの効率化なのか、しっかりと目標を定めることが重要になる。

 目的を定めるにあたっては、自社のビジョンや全社的な経営戦略と齟齬がないようにする必要がある。より優先度が高い目的を採用するとよい。

経営トップ層がプロジェクトに加わる

 全社的なデジタルトランスフォーメーションを実施する場合、経営トップ層もプロジェクトに加わらなければならない。上述したように、デジタルトランスフォーメーションは、伝統がある企業であるほど、現場からの反発も大きくなる。旧来のカルチャーを変革するには、経営トップが本気度を見せなければ、現場もついてこない。

 成功しているデジタルトランスフォーメーションの事例では、経営トップであるCEO自らがプロジェクトのリーダーになっているケースも多い。

DX経験が豊富な人材をプロジェクトに入れる

 デジタルトランスフォーメーションは一筋縄で行くものではない。現場を説得するための対策や、ステークホルダーとの調整、プロジェクト全体のマネジメントなど、実施すべき内容は多岐にわたっており、その上難易度も高い。

 あらかじめデジタルトランスフォーメーションの経験が豊富でなければ対応できないことも多いだろう。自社に経験がある人材がいない場合には、業務委託という形でプロジェクトに入ってもらうなど、コンサルティングファームなどに依頼するのも手だ。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けた企業の現状と課題

 戦略コンサルティングファーム世界最高峰のマッキンゼーが出したレポート「デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ」によれば、日本におけるデジタルトランスフォーメーションの成功率は16%に過ぎない。一番の理由は、やはり現場の反発だ。

 同レポートにて、マッキンゼーは具体的な事例を紹介している。とある伝統的な大企業が、デジタルについての知見が豊富な40代のリーダーを自社に招聘し、デジタルトランスフォーメーションを実行しようとした。しかし、生え抜きのベテラン幹部たちは今までのやり方を変えようとせず、そのリーダーの話を聞かなかった。結果、デジタルトランスフォーメーションは失敗に終わったという。

 上記の事例のように自社内部にデジタル人材がいないことや、外部人材を登用して活躍してもらうカルチャーがある企業が少ないことが、日本企業におけるデジタルトランスフォーメーションの課題となっているということだ。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に必要な「DX人材」

 では、デジタルトランスフォーメーションの推進を一線で担うDX人材とはどのような資質を持った人材だろうか。実現したい目的によって求められるスキルは異なるが、基本的にはプロジェクトマネジメントができて、デジタルリテラシーがあり、実際にデジタルトランスフォーメーションをリードした経験がある人材のことを呼ぶ。

 プログラミングのスキルがあれば、プロダクト開発をリードできるだろうし、デジタルマーケティングの知識があれば、マーケティングの変革をリードできるだろう。スキルによって得意分野は異なってくるということだが、どのようなプロジェクトであっても、最低限プロジェクトマネジメントのスキルは必要になるといえるだろう。
   
 本記事では、デジタルトランスフォーメーションを成功させた先達企業の17事例を紹介した。デジタルトランスフォーメーションはさまざまな角度から実現可能なことがおわかりいただけただろう。今後も進化し続けるテクノロジーやデジタル世界を、よりよいものに変革させ、イノベーションを起こすためのヒントとしていただきたい。

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