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Features The Dawn of DX ── デジタル変革が導く未来 公開日:2022.07.11

成功のために欠かせないDX戦略は、まず自社のビジョンやミッションから考える

 昨今、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の実行が最優先の経営課題として認識されるようになった。しかし、DXを実行した経験のある人材が自社内に存在しない企業も多く、いざ「DXを推し進めよう」と思っても「何から始めたらよいのかわからない」というケースも少なくない。  本記事では、DXをこれから推進していきたいという読者のために、DX戦略の立て方やDX戦略のフレームワーク、実際の段取りなどをまとめて解説する。

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【画像】Shutterstock

実現したいビジョンや目標を逆算して立てるDX戦略

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 DX戦略とは、文字どおりDXを進めるための戦略を意味する。DXは、単にデジタルテクノロジーを用いてビジネスを変革するだけではなく、その先には、売上げアップや利益率改善、まったく新しい事業の創出など実現したいビジョンが必要だ。    

 DXとは闇雲に進めるものではない。DXを通じて実現したいビジョンや目標から逆算し、DX計画を立ててプロジェクトを遂行していかなければならない。つまり、DXとはビジネスの成果と切り離して考えられない概念だ。

 DXがビジネス上の目標を実現するための概念であるならば、当然ビジネス上の戦略立案ツールを使うことができる。その上で、DX特有のフレームワークや段取りを考慮して戦略を立案すればよい。

DX戦略が必要となる理由

 DXを進めていくには、適切なDX戦略が必要になる。DXはビジネスモデルの根本的な変革を含むので、DXを経て最終的に自社のビジネスをどのような方向に導いていきたいのか戦略を立てるか、ビジネス戦略を確認した上で、そこから逆算したDX戦略を組み立てなければならない。ビジネス戦略とDX戦略は不可分の関係だ 。

 DXを推し進めようというとき、ただ闇雲にデジタルテクノロジーを利用して今までのビジネスを変革しても、ビジネス上のプラス効果をもたらさなければ意味がない。DXをする上では、市場にどのような競合やユーザーがいて、DXをすることでどういった点で競合よりも優位に立ちたいのか、どのような点でユーザーに訴求していきたいのか、といった考えに基づいていなければ、DXが無意味になる可能性もあるためだ。

 つまり、DX戦略を立てるということは、デジタルテクノロジーを利用して自社が市場で勝つための方策を立てるということでもある。

DX戦略導入のメリット

ユーザーニーズの変化に迅速に対応できる

 DX戦略を導入することでユーザーニーズの変化に迅速に対応できる。DXを実施すると、ユーザーのデータをより効率的かつ大規模に収集できるようになるので、ユーザーの意向をより反映したプロダクト開発や、サービス提供が可能になっていく。

 また、DX戦略を導入するということは、ユーザーの意向をどのように企業戦略に反映するか、ということを考えることでもある。ユーザーニーズの変化に迅速に対応していけるようになれば、市場での生き残り確率も上がる。

DXに関わるステークホルダーの意識統一

 DX戦略を導入することで、プロジェクトに関わるメンバーやステークホルダーたちの意識を統一することができる。なぜDXをする必要があるのかといったことや、DXを実施した先に目指す自社ビジネスのあり方、DXにおける優先順位など、DXについてあらゆる角度から意識を統一できる。DXをする前やDXを実施している最中に、DX戦略をその都度参照すれば、ステークホルダーたちが一丸となってDXを推進していくことが可能だ。

DXプロジェクトのマネジメント力を上げる

 DXプロジェクトは必ずしも成功するわけではなく、実態としては失敗することも非常に多い。失敗の原因はさまざまだが、プロジェクトメンバーやステークホルダーの中での意思統一や、DXをした後のビジネス上のビジョンがなければ、DXプロジェクトは途中で瓦解してしまう可能性も高い。

 つまり、DX戦略を描くことは、DX成功のために不可欠だ。DX戦略を先に描き、デジタルテクノロジーを利用して実現したいビジョンを描くこと、その上でそのDX戦略が筋の通ったものであること、その両方がDXプロジェクトのマネジメント力を高める。

DX後のビジネスの市場競争力を高める

 ビジネス戦略を立てることがなぜ重要なのか。それはもちろん、市場で競合に勝てるビジネスを作り、収益を上げるためだ。ビジネスをする上では、戦略なしに負けるビジネスを始めても仕方がない。それゆえ、戦略立案は企業において最高に重要な仕事であり続けている。DX戦略も同様だ。デジタルテクノロジーを用いてビジネスを変革することで、どのような競合優位性を得るのか、確かな戦略がなければ、デジタルテクノロジーを用いたところで市場で勝てるビジネスを作ることはできないだろう。

DX戦略を進めていく プロセス

1.ビジョンや ミッションを考える

 DXを実行するにあたって、改めて自社のビジョンやミッションについて再考する必要がある。今後自社はどのようになっていきたいのか、その点について定めなければ、当然なすべきDXも見えてこない。

 逆にビジョンさえあれば、そこから逆算することで 「今改革すべきことは何か」といったことも見えてくる。DXという枠に囚われず、自社はどうありたいのか、改めていろいろな粒度で設定する必要がある。

2.As-IsとTo-Beを考える

 DX戦略において、ビジョンや ミッションの設定が完了したら、次は「As-Is(現状の姿)」と「To-Be(あるべき姿)」のギャップを分析する。ビジネスプロセスや投資管理、組織文化など、DXフレームワークで示されていた項目ごとに、検討するとやりやすいだろう。

 「As-Is」と「To-Be」のギャップを発見することができたら、自ずとDX戦略における焦点が定まってくる。

3.DXすべき事項を洗い出し優先順位をつける

 「As-Is」と「To-Be」のギャップを分析すれば、DXすべき事項が洗い出せる。しかし、洗い出した事項が多くなるほど、DXの実行は遠くなる。

 そこで、DXを実現に移すべく、3P分析や4C分析などの戦略フレームワークを用いて、分析で洗い出したDXすべき事項群について、優先順位をつける。優先順位をつけた上で、具体的にどの事項を実行していくのか社内合意を形成する。

4.具体的なDX計画を立てる

 DXフレームワークや戦略フレームワークを活用してDX戦略を立てたら、DX計画を策定する。スケジュールを引いて、具体的なWBS(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャー、業分解構成図)を検討しなければならない。

 いつまでに何を実現していかなければならないのか、現実的な数字や目標を検討し、設定する。DX計画の策定にあたっては、DX経験が豊富なコンサルティングファームやITベンダーに助けを借りたほうが確実だろう。社内にDX経験が豊富な人材がいる場合は自社で策定してしまってもよい。

5.プロジェクトを組成する

 DX戦略を策定し、DX実行のための計画やWBSへの落とし込みも終われば、次はプロジェクトを組成する。社内だけでなく社外のリソースも含めて、DXに必要なケイパビリティを有するプロジェクト体制を作ることからスタートだ。

 DX遂行のためのプロジェクトチーム組成が終われば、キックオフミーティングを開いてDXプロジェクトを開始する。実際のプロジェクト開始前に社内合意を形成しておくことで、プロジェクト遂行に邪魔が入らないように環境を整備しておくことも重要だ。

6.DXを実行する

 DXはそもそも難易度が高いものだ。そのため、スケジュールで決めたどおりにプロジェクトが進んでいかないこともある。専門のプロジェクトマネジメントチームを組成し、その都度、進捗管理や課題の特定、課題解決に向けて動かすことでプロジェクトの進捗を見守る必要があるだろう。

7.DXの成果をモニタリングする

 DXプロジェクトが完了しても、DXの成否を効果検証すべく、モニタリングし続けていく必要がある。DX前にあらかじめKPIやKGIといった指標を設定しておき、それらの指標が達成されているか、定期的に検証する。

 DXをモニタリングすることで、今後新しいDXプロジェクトを推進することになった際に気をつけるべきポイントが炙り出される。一般に流布しているポイントなどではなく、自社固有の問題も見えてくるはずだ。

DX戦略の立て方を立てる際のポイント

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DXフレームワークを使う

 一つはDXフレームワークを使うことだ。DX戦略を立てる時に役立つDXフレームワークがさまざまある中でも、今回はアクセンチュアが発表している「DXフレームワーク」を紹介する。

 アクセンチュアのDXフレームワークでは、一番上のレイヤーに「ビジョン・ミッション」、二番目のレイヤーに「ビジネスプロセス」、「投資管理」、「文化・組織」、「タレント」、三番目のレイヤーにアナリティクス、クラウド、セキュリティなどを含む「テクノロジー・プラットフォーム」が並んでいる。

 つまり、DXを進める際にもまず必要になるのが「ビジョンとミッション」であるということだ。設定したDXの「ビジョンとミッション」を実現するために、「ビジネスプロセス」     「投資管理」     「文化・組織」     「タレント」を変革する。それらの変革を実現するために最適な「テクノロジー・プラットフォーム」を設計する、という段取りになる。

 もちろん、すべての変革を一挙にやり切ることはできない。DXにおける「ビジョンとミッション」を定めることは必須だが、それ以外の変革については、優先順位と段取りを考えて実行していくほかない

代表的なビジネス戦略フレームワークを使う

 代表的なビジネス戦略フレームワークを活用するのもいいだろう。

 例えば、3C分析は、代表的な戦略フレームワークとして知られている。「Customer(顧客)」     「Competitor(競合他社)」     「Company(自社)」の三つの要素について分析し、戦略を立てるフレームワークだ。DX戦略を立てる場面においては、顧客はどのようなユーザー体験を求めているのか、それに対してデジタルテクノロジーを利用して提供できる付加価値は何か、というところを深掘りして考えるとよいだろう。

 4P分析は     「Product(製品)」     「Price(価格)」     「Place(流通・販売場所)」     「Promotion(販売促進)」の四つのPについて分析し、戦略を立てるものだ。DX戦略を立てる場面においては、「Product(製品)」     「Place(流通・販売場所)」     「Promotion(販売促進)」の三つのPについて、デジタルテクノロジーを利用して変革できる点がないか考えてみるとよい。デジタルテクノロジーを利用してサブスクリプション型のサービスにすることで、「Price(価格)」についてもDX戦略を考えることもできる。

DX戦略の成功事例を参照する

 DX戦略を描き、DXを成功させている事例を参照することもおすすめだ。トヨタは生産性向上を目指すため、「工場IoT」を実現した。これによって「現有資産の最大有効活用」、「データ分析の効率化」、「ログデータとして現有資産に保管されたデータの有効活用」、「セキュリティ対策」、「生産データの一元管理」などを実現させたのだ。

 以下の記事では各企業のDX事例を具体的に解説しているので、あわせてチェックしてほしい。

成功事例の情報収集も立案時に欠かせない

 DX戦略の立て方のポイントを理解すれば、DX戦略を立案することはさほど難しくない。DXの事例などについての情報収集は不可欠になる。本記事で紹介したDXフレームワークや戦略フレームワーク、事例などを活用し、自社に最適なDX戦略を立ててみていただければ幸いだ。

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