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Features Business 公開日:2018.12.18

日本は世界のDeep Techに迫れるか──Hello Tomorrow Japan Summit開催

日本では初開催のHello Tomorrow地域版サミット。そのピッチの様子から、Deep Techの可能性をみてみよう。

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Hello Tomorrow Japan Summitのピッチの様子。建物の補強材を開発するAsterが優勝した。
 最先端の科学技術に基づく破壊的ソリューション「Deep Tech」の事業化を推進するグローバル組織Hello Tomorrowは、初の日本版サミット「Hello Tomorrow Japan Summit」を2018年12月13日に開催した。今回のイベントの目玉は、2019年3月にパリで開催されるグローバルコンテスト「Hello Tomorrow Global Challenge」への出場権を競うピッチ(短時間の売り込み)大会である。

 今回のピッチ大会には、科学技術に基づいたプロダクトを開発する10チームが登壇した。Hello Tomorrowが対象とするテーマはバイオ、医療、環境など幅広いが、今回はデジタル技術を活用しているものを中心に紹介しよう。

声で感情解析、自殺志願者を「聞き分ける」――Empath

Empath CSO(最高戦略責任者)の山崎はずむ氏
 Empathは、人の声をAI(人工知能)で分析することで感情を推定するサービスを提供する。数万人の音声特徴量を抽出したデータベースを保有しており、それをもとに喜怒哀楽や気持ちの浮き沈みをリアルタイムで判別する。同社は、外部の企業がサービスに組み込めるよう、解析エンジンのAPIを公開している。

 同サービスは言語に依存していないため、多くのグローバルコンテストで受賞歴があるほか、海外組織からの引き合いも多い。例えば、ドバイが推進する「幸福都市プロジェクト」の推進に向けて政府のシステムに同社のAIを導入、幸福度の向上を目指すために活用されているという。

 同社のソリューションは既にコールセンターなど企業向けにも活用されているが、今回は自殺志願者を判別することによる社会貢献性をアピールした。

人体をアンテナにして個人を認証──eNFC

eNFC代表取締役の和城賢典氏
 eNFCが提供するのは、既存のNFC(近接通信)を活用した人体通信技術である。スマートウォッチなどが備えるNFC対応のICカード機能は、カード内のコイルの近傍磁界を活用する。eNFCではこの磁界の変化を専用のアタッチメントで電界信号に変換し、指をアンテナとして対象物と通信する。これにより、手で触れるだけで個人の認証や支払いを実現しようというものだ。

 現在のスマートウォッチでも「かざす」操作で改札を通過したり、店頭で決済したりできるが、リーダーの読み取りのために手首をひねったりするなど動作は不自然になりがちだ。eNFCは、より直感的な操作で処理できることをアピールした。今回のピッチでは、医療現場や建設現場などにも応用できるとした。

音楽や映像と同じように人体を共有する──H2L

H2L代表取締役の岩﨑健一郎氏
 H2Lが実現を目指すのは、音楽や映像を共有するのと同じような「人体の共有」である。同社が提供する技術には「記録」と「再生」がある。記録は、例えば腕の動きを測定し、数値化して記録する技術。逆に再生は、コンピュータ上にあるデータに基づいて筋肉を刺激し腕を動かす技術である。

 同社は、この技術の応用先としてVR(仮想現実感)やリハビリ、プロの演奏家と同じ体験の再現などを想定しているという。VRでは、ゲームの中で触れた感触を再現するような用途が考えられる。

農業支援データを提供──ListenField

ListenField CEO(最高経営責任者)のRassarin Chinnachodteeranun氏
 ListenFieldは農業支援のためのデータプラットフォームを構築し、APIを通じて農業関係の組織に対して有益な情報を提供している。

 同社が注目したのは、農業に役立つデータが偏在、断片化していること。こうした農業関連の環境データを統合することで、解析・予測しやすくした。農家や農業法人は、ListenFieldのAPIを呼び出すことで自社の農業アプリケーションにデータを取り込むことができる。

 創業者の1人はタイ出身であり、同社のシステムはタイへの導入が始まっているという。

優勝は防災のための建物補強材

 12月13日に開催されたピッチ大会には、このほか以下の6チームが登壇した。
  • Aster:レンガや石積みの構造物の耐震性を高めるコーティング技術を開発
  • Azinzo:移植可能な人工腎臓を開発
  • BelCellBar:注射針を使わない医薬品吸収補助剤を開発
  • H24E Innova:水素製造のためのレーザーと光触媒を開発
  • ミュー:胃腸内検査のための自走式内視カプセル「ミニマーメイド」を開発
  • 理化学研究所:中性子による非破壊検査システム「RANS」を開発
 国内外の8人の専門家による審査の結果、Asterが優勝し、Global Challengeへの出場権と賞金100万円を獲得した。
建物の補強材を開発するAsterが優勝


菊池 隆裕=日経BP総研


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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