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Features Lifestyle 公開日:2018.08.26

クルマは「負債」から「利益を生み出す存在」へ 欧米カーシェアリング最前線

欧米でもクルマ離れは深刻だが、メーカーはカーシェアを突破口にしたい考えだ。

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 「あなたが新車を買う時に払ったお金の一部を回収できます」──。

 アウディが2018年に新型A7スポーツバックを欧州で発表した際、プレスリリースにはこう書かれていた。この言葉の意味するところは「カーシェアリング」である。自分が買ったクルマを貸して、お小遣いを稼げますよ、ということなのだ。

 なぜアウディがわざわざそんなことをプレスリリースに書くのか? そこにはデジタルテクノロジーが介在しているのである。

 アウディはスマート端末をキーの代わりに使えるシステム「デジタルキー」を採用している。スマート端末を持っていればドアを解錠できるし、エンジンもかけられる。6人のプロファイルを登録できるようになっていて、エンジンスタートと同時に各人のデータを呼び出し、電動シートであればシートの位置、ミラーの角度、ナビゲーションや音楽のアーカイブにいたるまでをセットする。
アウディの場合は、ユーザープロファイルをこのように車両へ登録していく(写真=アウディ)
 アウディで話を始めておいて他社の例を持ち出すのもなんなのだが、欧州でメルセデス・ベンツの同様のシステムを試した時は、しっかり切り替わった。登録されたユーザーの名前がモニターに出てくるので、そこからドライバーを選ぶのだ。

 笑ってしまったこともある。メルセデス・ベンツのエンジニアが「上司の名前を選んでみましょう」と選択したら、シートが動き、ミラーの角度が自動で切り替わったまではいいが、同時にヘビーメタルが大音量で流れたのだ。「こういう趣味だったんだ……」。メルセデス・ベンツ本社の2人のドイツ人エンジニアがあっけにとられたようにつぶやいていたのが、なんともおかしかった。
メルセデス・ベンツのカーシェアリングはスマート端末でクルマの状況をチェックするところから始まる(写真=ダイムラー)
メルセデス・ベンツのカーシェアリング機能搭載モデル(ドイツ)はスマート端末がキーの代わりになる(写真=ダイムラー)

メーカーがカーシェアを手がける意味

 話を戻そう。カーシェアリングは世界的なトレンドで、レクサスは米国でデジタルキーのサービスを展開しているし、ゼネラルモーターズも7月に「メイヴェン(Maven)」というスマートデバイスを使ったシェアリングサービスを展開すると発表したばかり。

 メイヴェンは個人間取引を可能にしたP2P型カーシェアリングを標榜している。メイヴェンはもともとサイドカーというスタートアップ企業が始めたサービスだったが、2016年にゼネラルモーターズに買収され、以降は同社の製品(クルマ)とデジタルテクノロジーを融合させ新しいライフスタイルを提案をする事業へとピボットした経緯がある。
メイヴェンのユーザーには、車両を貸し出したことで75ドルの収益があったことがこのように通知される(米国、写真=ゼネラルモーターズ)
メイヴェンでクルマを借りる方は、スマート端末で車両の位置を確認できる(米国、写真=ゼネラルモーターズ)
メイヴェンのイメージ画面(写真=ゼネラルモーターズ)
 「クルマは最も高価な所有物です。今こそ、そのクルマに働いてもらう時です」

 メイヴェンを担当するゼネラルモーターズのバイスプレジデント、ジュリア・ステイン氏はこう語っている。

 「ゼネラルモーターズのオーナーは自分のクルマを登録して利益を得ることができます」とはゼネラルモーターズのプレスリリースの文言。導入はまず米国の3都市で始めるとのことだ。

 カーシェアリングはデジタルテクノロジーを背景に実現されており、様々な角度からその特徴について触れることができる。その中でもテクノロジーがクルマの所有形態に変革を促し、「負債」ともいわれていた自動車を、「利益を生み出す存在」へと変貌させる可能性を持っている点に注目したい。

 世界中でクルマ離れといわれるなか、クルマを持つことの意味を「収益性」に見出せるか。僕はそこに興味津々である。


小川 フミオ


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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