Features Lifestyle 公開日:2018.08.28
「自動車メーカー」から「移動サービス事業者」へ、フォルクスワーゲンの最新戦略
自動車業界の巨人フォルクスワーゲンが、デジタルテクノロジーで事業の大転換を図る。
※ フォルクスワーゲンは、ベルリンを皮切りに、将来的には北米や中国での展開も視野に入れるという「Volkswagen We」はスマートデバイスを使ったコネクテッドサービス
独フォルクスワーゲン(VW)が8月23日、ベルリンからのオンライン中継を流した。トピックは「ワン・デジタル・プラットフォーム(One Digital Platform)」だ。同グループの車両がこれから大きく変わると謳っている。
フォルクスワーゲンが新しいEV用プラットフォームを使った新世代の電気自動車としてデザインしたコンセプトモデル「I.D.」(写真提供:フォルクスワーゲン)
「私たちのグループ企業はこれからも素晴らしいクルマを作り続けますが、フォルクスワーゲンは車輪のついたデジタルデバイスになるでしょう」
フォルクスワーゲンブランドにおけるセールス担当の取締役、ユルゲン・シュタックマン氏はこう述べた。VWグループは今後、「フォルクスワーゲン・ウィ(Volkswagen We)」と名づけた新サービスを大きく展開していくことなるそうだ。
直近では、ベルリンでの「e-ゴルフ」(電気モーターで走るゴルフ)のカーシェアリングサービスから始まる。このサービスではスマートデバイスを通じてクルマの位置情報を把握できるだけでなく、クリーニングが終わった衣料品や宅配便などを無人の車内に入れておいてもらうサービスなども展開する。
フォルクスワーゲンブランドにおけるセールス担当の取締役、ユルゲン・シュタックマン氏はこう述べた。VWグループは今後、「フォルクスワーゲン・ウィ(Volkswagen We)」と名づけた新サービスを大きく展開していくことなるそうだ。
直近では、ベルリンでの「e-ゴルフ」(電気モーターで走るゴルフ)のカーシェアリングサービスから始まる。このサービスではスマートデバイスを通じてクルマの位置情報を把握できるだけでなく、クリーニングが終わった衣料品や宅配便などを無人の車内に入れておいてもらうサービスなども展開する。
ベルリンでは2019年中に1500台の「e-ゴルフ」を「Volkswagen We」のために投入するという
「Volkswagen We」で将来使う電気自動車のコンセプト
会見では驚くような発言も飛び出した。
「私たちは自動車メーカーからモビリティサービスプロバイダーになることを目指します」
筆者は守旧派なのか、この夏日本で発売されたフォルクスワーゲンup! GTIや同ポロGTIを運転して、その楽しさに心を奪われていただけに、脱自動車メーカー宣言には衝撃を受けた。
「各地のスタートアップと協働して、アプリケーションを共同開発することなども積極的に行います」
フォルクスワーゲンブランドで「デジタル&ニュービジネスおよびモビリティサービス」のヘッドを務めるクリストフ・ハルトゥング氏はそう語っている。
「私たちは自動車メーカーからモビリティサービスプロバイダーになることを目指します」
筆者は守旧派なのか、この夏日本で発売されたフォルクスワーゲンup! GTIや同ポロGTIを運転して、その楽しさに心を奪われていただけに、脱自動車メーカー宣言には衝撃を受けた。
「各地のスタートアップと協働して、アプリケーションを共同開発することなども積極的に行います」
フォルクスワーゲンブランドで「デジタル&ニュービジネスおよびモビリティサービス」のヘッドを務めるクリストフ・ハルトゥング氏はそう語っている。
クルマの個性が失われた時代に
クルマは、かつては非常に生産国の個性が強い製品だった。アウトバーンを持つドイツ車、路面の悪い田舎道を走るためのフランス車、アルプスなどの山道を飛ばすのが好きな人のためのイタリア車、という具合である。それも今は過去の話だ。個性を失った背景にあるのは、国家間の貿易関税やローカルコンテント法案(販売国あるいは生産工場のある国で作られた部品を一定以上使うことを義務づける法案)などである。
フォルクスワーゲンも製品の多くがグローバル化していくのを認めつつ、ローカル性はアプリで、としているのが興味深い。使用される地域によってクルマへのニーズは微妙に異なってくる点に注目しているのだ。日本では(今のところはまだ)宅配便が機能しているし、荷物を受け取る拠点としてコンビニを使う方向だが、欧州では荷物の配送先として仕事場に乗っていった車両のトランクを使うのだ。これは有効に働くだろう。
同時にフォルクスワーゲンは「vw.OS」と名付けたデジタルプラットフォームの構築を目指している。消費者は個別のIDを持ち、ディーラーではなくメーカー本体が車両の不具合などを通信で察知し、修理を案内するようになる。トヨタ自動車が始めた「eケア走行アドバイス」(新型クラウンで実用化)などとも近いサービスだろう。
フォルクスワーゲンも製品の多くがグローバル化していくのを認めつつ、ローカル性はアプリで、としているのが興味深い。使用される地域によってクルマへのニーズは微妙に異なってくる点に注目しているのだ。日本では(今のところはまだ)宅配便が機能しているし、荷物を受け取る拠点としてコンビニを使う方向だが、欧州では荷物の配送先として仕事場に乗っていった車両のトランクを使うのだ。これは有効に働くだろう。
同時にフォルクスワーゲンは「vw.OS」と名付けたデジタルプラットフォームの構築を目指している。消費者は個別のIDを持ち、ディーラーではなくメーカー本体が車両の不具合などを通信で察知し、修理を案内するようになる。トヨタ自動車が始めた「eケア走行アドバイス」(新型クラウンで実用化)などとも近いサービスだろう。
フォルクスワーゲンの「One Digital Platform」では、クラウドで顧客の車両の状態を常にチェック。不具合などがあったら最寄りのディーラーに直行できるようにする
フォルクスワーゲンはこれまで「Volkswagen Car-Net」をドイツで提供してきた
デジタル化のカギは「人材」
そういえば、ベルリンでの記者会見に参加した記者から「人員をどう増やしていく計画か」という質問が出た。それを聞いて思い出したのは、トヨタ自動車による新会社「TRI-AD」設立のニュースだ。トヨタは「即戦力募集」としていた。
フォルクスワーゲンの担当者は「このプロジェクト自体、最初は50人で始まって今は200人。近い将来、倍になるでしょう」と答えたが、「重要なのは人数でなく、何をやるか、です」と付け加えるのを忘れなかった。人材が大きなカギであることは間違いない。
フォルクスワーゲンでは、今路上を走っている約150万台のクルマも通信モジュールをレトロフィット(後付け)することでコネクティビティを手に入れることができるとしている。2020年にはすべてのフォルクスワーゲンを”つながる”クルマにしたい計画だ。
同社では、電気自動車に使う「MEB」というプラットフォームを開発中だ。上記の「フォルクスワーゲン・ウィ」によるコネクティビティが標準で使える。まもなく1号車が姿を現すだろう。
小川 フミオ
フォルクスワーゲンの担当者は「このプロジェクト自体、最初は50人で始まって今は200人。近い将来、倍になるでしょう」と答えたが、「重要なのは人数でなく、何をやるか、です」と付け加えるのを忘れなかった。人材が大きなカギであることは間違いない。
フォルクスワーゲンでは、今路上を走っている約150万台のクルマも通信モジュールをレトロフィット(後付け)することでコネクティビティを手に入れることができるとしている。2020年にはすべてのフォルクスワーゲンを”つながる”クルマにしたい計画だ。
同社では、電気自動車に使う「MEB」というプラットフォームを開発中だ。上記の「フォルクスワーゲン・ウィ」によるコネクティビティが標準で使える。まもなく1号車が姿を現すだろう。
小川 フミオ
本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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