sansansansan
Created with Snap
Pocket HatenaBlog facebook Twitter Close

Features Ideas 公開日:2018.05.31

女性エンジニアが体験したAndroid Thingsでのものづくり

GoogleのIoTプラットフォームに初挑戦した女性が得た経験とは?

お気に入り
 Google社員は、社内外の様々なプロジェクトに参加している。時にはボランティアとして、時には人生の楽しみとして、プロジェクトへの参加を通じて様々な経験を手に入れているようだ。

 そんなGoogle社員が参加するプロジェクトの一つに「Women Techmakers」がある。

 Women Teckmakersは、女性がイノベーションの現場に参画できるように促すGoogleのプロジェクトだ。多様性を重んじ、米国のどの地域よりもオープンと言われるカリフォルニア州のシリコンバレーでも、テクノロジー企業のリーダーは依然として男性が中心。そうした状況を変革する具体的な取り組みを進めているのだ。

 Googleが開催した大規模カンファレンス「Google I/O 2018」では、「Women Techmakers panel: experiences developing on Android Things」と題し、4人の女性がハードウエア作りにゼロから挑戦した経験を語り合うパネルディスカッションが用意された。プロジェクトはどのように進められたのか、そして女性エンジニアたちが得たものは何だったのだろうか。

Android Thingsとは

 「Android Things」は、AndroidのIoT(モノのインターネット)プラットホームのこと。現在はIntel、NXP、Raspberry Pi 3などのハードウエアをサポートしている。最大の特徴は、Androidアプリ開発のノウハウやAPI、Googleのクラウドプラットホームを活用しながら、IoTの開発に取り組めることだ。

 Googleは2015年にIoT向けのOS「Project Brillo」を発表したが、より幅広い開発者にアピールするべく、Brilloを撤回してAndroid Thingsを立ち上げたという経緯がある。

 本セッションに登壇したのは、
 
  • レイチェル・ワインスタイン・パターソン氏(ソフトウエアエンジニア)
  • カーソン・ホロゲート氏(社内コミュニケーションのテックリーダー)
  • バース・クリシュナマーシー氏(Nestのエンジニア)
  • ブリタニー・ウィルバート氏(プライバシー関連のエンジニア)
 Googleは毎年、女性エンジニアのためのイベント「グレースホッパー」に参加している。今回4人が取り組んだのは、Android Thingsを使ったグレースホッパー向けの出展作品づくりだ。

 パターソン氏とホロゲート氏は、高さ5メートル以上におよぶ対話できる木「Steve the Tree」を、クリシュナマーシー氏とウィルバート氏は人とコミュニケーションできるセルフィー撮影ロボット「Rosie」を開発した。

開かれたリソースの重要性

 彼女たちがAndroid Thingsの開発で体験したことは、電子工作で何らかの作品を制作しようとする人とほぼ等しかったように思われる。つまり、計画し、取り組み、問題に直面し、試行錯誤して解決策を発見して乗り越えてきたのだ。

 興味深かったのは、コードを共有できるGitHubなどののオンラインリソースを活用することで、アイデアを具現化するまでのプロセスが驚くほど早い点だ。

 例えば作品「Rosie」を制作する上で参考にしたのは、GitHubにアップロードされていたあるリソースだったという。それはおもちゃのレンジローバーを走らせるためのレースカーキットで、これを子どもくらいのサイズに対応できるよう修正して、Rosieのベースを作り上げた。両者には寸法や重量、バッテリーなど、多くの点で違いがあるため、解決すべき問題もまた多い。しかし、すぐそばにあるテクノロジーリソースをフル活用できれば、前に進めることが多いのだという。

 このキットが、いつでも、どこからでもアクセスできるGitHubで、誰もがアレンジできる形でオープンに共有されていたという点が重要なポイントだ。特別な人脈や地位がなくても、GitHubで公開されているコードなら誰でもアクセスできる。既に存在しているテクノロジーや手法を発見し、自分のAndroid Thingsの作品に応用できる状態にあるのだ。ただし、そうした性質を知った上で活動できる人は、まだ驚くほど少ないという。プログラムを学び、オープンなコミュニティに触れなければ、こうした活用法や可能性を知ることができないからだ。

ネット接続さえあれば──

 Googleは、クラウドコンピューティングの発展を最もけん引し、最も謳歌している企業だ。そんな同社が、AndroidスマートフォンとAndroid Thingsで、IoT環境でのクラウド活用の道筋をつけた。インターネットにさえつながっていれば、そしてアイデアさえあれば、突出した技術や環境を利用して作品やサービスを制作できるのだ。

 Googleなどのテック企業が、ネットの普及が進まない地域でアクセス手段構築に取り組んでいる理由がここにある。ネット接続さえあれば、その地域の人や環境と対話しながら問題解決に取り組むことができるからだ。

 そして、Women Techmakerもまた、現在世界が抱える問題に正面から取り組もうとしている。それは「女性の社会進出」という話にとどまらない。私たちが様々な問題を解決する時に、当事者として、そして個性ある視点を持つ者として、女性自身によるエンジニアリングが必要不可欠になっているのだ。


松村太郎


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

関連記事

DIGITALIST会員が
できること

  • 会員限定記事が全て読める
  • 厳選情報をメルマガで確認
  • 同業他社のニュースを閲覧
    ※本機能は、一部ご利用いただけない会員様がいます。

公開終了のお知らせ

2024年1月24日以降に
ウェブサイトの公開を終了いたします