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Features Ideas 公開日:2018.05.31

GoogleのAI開発アプローチを探る──Google I/O 2018

GoogleのAI開発のアプローチは、ビジネスアイデアの宝庫だ。

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 Googleが毎年開催している大型のイベント「Google I/O 2018」。開発者向けではあるが、Googleが“今”と“未来”をどのように考えているのかが詳細に語られるため、次のビジネスのヒントを得られる有意義なカンファレンスとして人気を博している。

 そんなGoogle I/Oで今年、特に注目を集めたのが人工知能(AI)や機械学習のセッションだ。聴講してみると、「Googleのプラットホームで何を開発できるのか」というよりも、「Googleに来ればこんな未来を一緒に創れる」という人材の勧誘の場にすら見えてくる。

 AI開発が競争する激化の中で、Googleは何を考え、AI関連テクノロジーをどのように製品に落とし込んでいるのか──。GoogleでAI開発に携わる技術者やデザイナーは、これからどんな“未来”作ろうとしているのだろうか。

 本稿は、Google I/O 2018でのセッション「Building the future of artificial intelligence for everyone(みんなが使えるAIの未来を構築する)」「Design, machine learning, and creativity(デザイン、機械学習、そして創造性)」をレポートとしてまとめた記事だ。Googleで機械学習や深層学習を研究する科学者だけでなく、Googleの日替わりロゴ「Doodle」を制作しているデザイナー、さらにはスマートスピーカー「Google Home」のデザイナーが、それぞれの立場からAIについて語っている。彼らの考えを紹介することで、GoogleのAI戦略への理解を深めるとともに、AIが私たちのライフスタイルに与える影響や、次のビジネスのヒントを得てもらいたい。

「機械は思考できるのか」への解答を探る

 AI開発の現況を知るためには、その歴史に触れる必要がある。「みんなが使えるAIの未来を構築する」に登壇したフェイフェイ・リー氏は、AIの歴史をなぞりながら現在の開発動向を解説した。

 リー氏はGoogle CloudのAI・深層学習担当チーフサイエンティストで、スタンフォード大学コンピューターサイエンス学部教授を務める人物。つまり、この分野では指折りのエキスパートだ。
フェイフェイ・リー氏

フェイフェイ・リー氏

学術界と産業界の両方で活躍しており、新世代の研究者・ビジネスパーソンのロールモデルともいえる人物だ(出所: スタンフォード大学 )
 リー氏によると、AIは60年前に「機械は思考できるのか」というテーマへの解答を探るために始まった挑戦だという。

 「AIは“人の思考を再現する”というアプローチで進展してきました。機械による思考、視覚、聴覚、会話、動作、意志決定、操作を実現するために、(AI研究は)ロボット工学、コンピュータビジョン、自然言語処理、音声認識など、様々なジャンルに分岐して研究が続けられてきました」(リー氏)

 その中でも現在のAIブームを作り出した最も重要な要因は、1980年代から90年代に起きた機械学習と統計学的な学習、そしてニューラルネットワークと深いつながりを持つツールの成立だったという。リー氏は、特に2010年代に入ってからのAI開発競争とその発展に拍車をかけた要素として、以下の3つを挙げた。

 1. コンピュータの演算能力の大幅な向上
 2. ビッグデータの出現と統計学習を進展させるアルゴリズムの成立
 3. 機械学習の進歩
 GoogleのAI研究開発チーム「Google Brain」の創設メンバーで、プリンシパルサイエンティストを務めているグレッグ・コラード(Greg Corrado)氏は、現在のAIの発展は統計学的なパターン認識のメリットを享受していると述べた上で、今後の発展について次のような見方を示した。

 「膨大に分散した学問分野は、再び急速な収斂を見せています。(現在のAI研究は)人工知能とは別に取り組まれてきた認知科学や神経科学などの知見を参照するようになっており、最近では神経科学と融合することで人工ニューラルネットワークから深層学習へと発展しました」(コラード氏)

 コラード氏は、次はAIと認知科学が融合した「強化学習」が一層の発展を遂げると見ている。強化学習では、ある状況を受けて適切な行動を判断、選択し、報酬(成果)を得るプロセスを学習していく。人間などの高等生物の思考プロセスと極めて似ていることがわかるだろう。また、大学では以前から心理学や神経科学の授業として扱われてきたコンセプトでもあるという。

 コラード氏は、完全に動的な環境=私たちが暮らす現実の社会で、AIが自ら情報を集めたり判断できたりするようになるには、強化学習が不可欠だと考えている。

 現在のAIは、人の行動の「まねごと」によって賢くなっている。実際、GoogleのGmailは「メール」関連して起こる行動で得られた膨大な単語の並びを学習したことで、その場面、場面で最も適した単語や文章の候補を挙げる「スマートリプライ」(自動返信)や「スマートコンポーズ」(自動作成)といった機能を提供できるようになったという。

Google公式Twitter

 画像や音声の認識、そして碁のようなゲームは、データとルールが存在しているおかげで、各分野に特化したAIが人間以上の能力を発揮できている。しかし、冒頭に挙げた「人間のように思考する機械」、すなわち、環境を認識し、情報を集め、その解決方法を導き出す「汎用人工知能」(Artificial General Intelligence:AGI)の出現までには、まだ数十年の年月が必要だ。

 リー氏によると、AGIを実現するために必要なのが“現代の人工知能”なのだという。つまり、エンジニアが注力分野を定め、データを与えて鍛え続ける人工知能が発展のために不可欠ということなのだろう。“現代の人工知能”の学習を裏返すと、監督無しで学習を継続でき、感情を理解したり、さらには自ら感情を持つようになったりして、人間とコミュニケーションを取るようになっていく──。これに「数十年の年月が必要」ということだ。現在はAGI実現のための初期段階にあるといえるだろう。

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