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Features Business 公開日:2018.11.28

新たなモビリティ社会への挑戦が始まった

ライドシェアや自動運転によって加速するモビリティ変革。影響はまちづくりにも及ぶ。

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 デジタル技術の進歩を背景として、クルマを中心とするモビリティ市場が大きな転換期を迎えようとしている。中でも、世界で大きなムーブメントになっているのが、米Uber Technologies、シンガポールのGrabなど、「所有から利用へ」の流れを生み出したライドシェアだ。加えて、自動運転がそれを一気に加速させる可能性がある。
シンガポール「Grab」の説明画像
 この変化をとらえ、米フォード、GM、ドイツのBMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンと、世界の自動車大手が次々に、ライドシェアを中心とする新事業に乗り出している。トヨタ自動車や日産自動車も同様だ。トヨタは2018年1月に「e-Palette」のコンセプトを打ち出したほか、同10月にはソフトバンクと提携。合弁会社の「MONET Technologies」を立ち上げた。クルマや人の移動に関するさまざまなデータを活用し、移動における新たな価値を創造するという。

 これら自動車メーカー各社が目指すようになっている新分野のビジネスが「MaaS(Mobility as a Service)」である。クルマや人の移動に関し、その需要と供給を最適化して、快適なモビリティ環境を提供するサービスである。自動車メーカーは、従来のような車両提供の枠を超え、MaaSのためのプラットフォーム提供を狙う。

交通手段はどれも直前予約、操作は決済まですべて1つのアプリで

 モビリティ変革の動きは、クルマに限ったものではない。鉄道、バスなどの公共交通での動きもある。その初歩的な取り組みはバスのロケーション管理だ。走行中のバスの現在地や、各バス停への到着までの見込み時間を顧客向けに示す仕組みである。

 こうした仕組みをベースに、複数の交通手段を組み合わせる、いわゆるマルチモーダルでのMaaSの展開も始まっている。代表例が、フィンランドで展開されている「Whim」である。スマートフォンのアプリを使って、交通機関を料金支払いの手間を気にせずスムーズに乗り継げるサービスで、MaaS Globalが提供している。アプリを立ち上げて目的地を入力すると、現在地(あるいは出発地)からの経路と、その移動に最適な交通手段の組み合わせを検索し、提示する。
 これだけなら、いわゆる乗換案内/経路検索だが、Whimはもっと進んでいる。ポイントは、鉄道やバス、タクシーといった、いわゆる公共交通機関だけでなく、シェアサイクルやシェアカーといった手段まで含めた結果を示す点と、同じアプリで予約・決済もできてしまう点だ。あらかじめクレジットカード情報を登録しておけばいい。チケットの購入や受け取りは必要ない。予約・決済はUberなどのライドシェアのアプリとも似ている。
MaaS Globalの「Whim」は各種交通手段を一括して予約・決済できる
 こうした動きを見て、日本で乗換案内サービスを提供するジョルダンなども動き出した。2018年10月には「乗換案内」と「行き方案内」を統合したアプリを公開した。今後は決済機能なども取り込む方針だ。

 JR東日本も2017年に、「モビリティ変革コンソーシアム」を設立し、各業界の企業に参加を呼びかけた。オープンイノベーション型で、新しいモビリティサービスを考えようという取り組みで、ICT企業、家電メーカーなど80社以上が参加。Door to Doorなどいくつかのテーマのワーキンググループを設け、MaaSの新サービスを模索している。

モビリティ変革から、「新モビリティ社会」づくりへ

 これらの動きは、モビリティ革命のほんの入り口に過ぎない。例えばモビリティとして、新しいものが登場してくる可能性がある。典型例が空飛ぶタクシーや、家を出てすぐに、あるいは何らかの施設内で利用できるパーソナルモビリティ。空飛ぶタクシーではUberが東京でサービス提供する方針を明らかにしている。一方、パーソナルモビリティでは、電動車いすを開発するWHILLが、空港内でのシェアリングサービスを皮切りにMaaS事業に乗り出している。

 モビリティサービスだけでなく、周辺の市場も拡大する。「Uber Eats」での食事のデリバリーを代表例とする、新しいモビリティを前提としたサービスである。トヨタがe-Paletteで打ち出している移動無人店舗なども、こうした分野に入る。

 規模の大きな話題としては、中国政府が北京市近郊で、すべてのクルマが自動運転になることを想定した都市づくりに乗り出している。2035年までに作り上げるとしており、インフラや法制度を整えるという。

 そこまでの規模ではないが、国内でも観光やまちづくりに関連した取り組みが見えてきた。例えば小田急電鉄。2018年8〜9月、神奈川県の江ノ島周辺で、自動運転バスを使った実験に取り組んだ。具体的には、実験期間に限り、臨時バス停「小田急ヨットクラブ」を設置し、ヤフーのスマートフォンアプリ「Yahoo!乗換案内」で、自動運転バスのルート検索・乗車予約などのサービスを提供した。同アプリ内で、小田急線藤沢駅および片瀬江ノ島駅の駅情報に駅構内図を追加。バリアフリー経路の案内、江の島周辺の話題のカフェ情報など、利用者の移動や飲食に役立つ情報を一括提供した。
小田急電鉄はヤフーと共同で自動運転とアプリを連携させた実験を行った
 東京急行電鉄(東急)は、JR東日本と組んで、2019年から伊豆エリアを対象とした観光型MaaSの実証実験に取り組む。国内外観光客が駅や空港からの2次交通(バス、タクシー、AI型オンデマンド交通、シェアカーなど)をスマートフォンなどで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できる「2次交通統合型サービス(観光型MaaS)」を提供する。国や自治体と連携しながら、新しい交通手段の開発に取り組むことで、旅行者の利便性向上と地方活性化に貢献するという。
東京急行電鉄、JR東日本、楽天は共同で2019年に実証をスタート
 街という観点では、ビルつくりも変わってくるかもしれない。例えばビルとモビリティの連動である。外出する時刻にあわせて、公共交通やタクシーだけでなく、ビルのエレベータ、キャンパス内のビル間移動などのためのモビリティなどまで連動させることだってあり得る。


河井 保博=日経BP総研


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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