VR(仮想現実)の普及が進み、リアリティのあるコンテンツが増えている昨今。それらを楽しむためのVRゴーグルが手軽に入手できるようになってきたこともあり、VR体験がぐっと身近なものになってきた。VRを使った旅行体験サービスは各社から販売されており、高精細な画像や立体的な音響効果、現実世界で使われている装置(飛行機の座席など)の併用といった方法で、より“本物”に近い体験を演出している。そんなVR旅行体験に、「香り」や「触覚」も加わったサービスが誕生しそうだ。


 日本航空(JAL)は、旅との新しい出会い方・選び方の提案を目指した「Try on trips」をコンセプトに、最新技術を活用した取り組みを開始する。第一弾として、VR、AR(拡張現実)、MR(複合現実)など、総称で「xR」と呼ぶ技術を活用した旅の試着サービス「JAL xR Traveler」と、旅行先で体験ツアーを購入できるスマート自動販売機「JAL 体験自販機」の2つを発表した。2019年4月27日から幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議2019」を皮切りに、12月末まで国内のイベントに出展してトライアルを行う。


旅の試着がコンセプトの「JAL xR Traveler」(出所:JAL)

 「JAL xR Traveler」は、xR技術を駆使して視覚や聴覚、嗅覚、触覚と共に旅を体験できるシステムだという。嗅覚はヘッドマウントディスプレイの鼻付近に臭いを出す装置が付いており、仮想空間内に花が咲いていればその花の香り、コーヒーショップがあればコーヒーの香りといった、景色からイメージできる臭いを放出する。加えて、人の手形をしたコントローラーと歩行器でナビゲーターに手を引かれて歩く感覚を、送風機で風を再現し、現地の空気感を味わいながら没入感のある体験ができるとする。


ナビゲーターに手を引かれる様子を再現(出所:JAL)

 このシステムは、SOOTHが筑波大学・岩田洋夫教授のアドバイスを受けて開発したxR歩行装置「VR Private Tour」に、今回のトライアルではハワイの映像ストーリーを組み合わせている。JALが提唱する新しいハワイ旅のスタイル「Style yourself」に合わせた4種類のコンテンツを用意しており、ハワイをよく知るナビゲーターがとっておきの場所や過ごし方を紹介する。


SOOTHが作成したVR Private Tourの紹介動画

 さらに「JAL Neuro Chart」を開発。体験者の脳波を測定して、それぞれのストーリーに対してどのように気持ちが動いたのかを推定し、可視化できるようにした。バーチャルな旅行体験を無意識にどう感じていたのか、体験者本人が気づかない相性を確かめて、将来的に旅行先や旅行スタイルの提案に活用するという。例えば、ある顧客が「ハワイでのんびりしたい」という旅のオーダーをした場合、脳波から「海より山のほうがリラックスしている」とわかれば、山を楽しむプランを提案する。


SOOTHが作成した「JAL Neuro Chart」の画面イメージ(出所:JAL)

 現地のオプション(体験)ツアーなどを購入できるスマート自動販売機「JAL体験自販機」は、JALが日経イノベーションラボの協力を得て開発した。利用者は、体験自販機のパネルに表示される「現地体験」を選んだ後、スマートフォンを使って商品のQRコードを読み取り、インターネット経由で決済する。体験ツアーの購入ならスマートフォンだけでも実現できるが、自動販売機という大きな装置を用いることでより迫力のある広告や紹介動画が配信できる。自動販売機をデジタルサイネージとして利用することで、小さな画面では伝わらない魅力を発信し、購入につなげるのが狙いだ。


 将来的には、顔認証機能やAI(人工知能)による分析、レコメンド機能などを追加し、利用者に最適な現地体験を提案できるようにする。なお、JAL体験自販機もニコニコ超会議2019に出展し、JAL PAKハワイが扱う現地のオプショナルツアーをトライアル販売する。


スマートフォンを使って現地体験を購入できる「JAL体験自販機」(出所:JAL)

 JALは、2018年5月に社内外の知見を活かした新しい付加価値やビジネスを創出する活動拠点「JAL Innovation Lab」を開設している。同ラボを拠点に、今後も最新技術を使った顧客との新しい接点・コミュニケーションの創出に向けたチャレンジを続けていくとしている。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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