※ 上の写真は長野県信濃町ノマドワークセンターの室内空間のイメージ。実証実験により、自然環境での体験は、人の脳や心に良い影響を与えることのエビデンスを得られた。(出所:Nature Service)

 「森林でのリモートワークは、働き手のパフォーマンスを向上させる」。こんな実証実験の結果がある。実証実験を行ったのは、地方自治体や企業向けに自然体験に関わるコンサルティングサービスやイベントの企画・開催などを手がけている特定非営利活動(NPO)法人、Nature Serviceだ。


 実証実験の正式名称は、「脳波測定による、自然体験が寄与する企業経営課題解決への実証実験」。Nature Serviceが長野県信濃町の委託を受けて、2016年度から2年半をかけて実施したもので、2019年2月に結果を公開した。


 自然の中に足を運ぶと、心なしか体がほぐれて、リラックスし、よどんだ気分が払拭された。その結果、仕事に対するやる気が戻ってきた――。都会で働く人であれば、こんな感覚を得た経験は少なからずあるだろう。森林が人の心身に与えるセラピー効果は多くの人が同意するところだ。ただ、定量的なエビデンス(科学的根拠)は十分ではなかった。


 この実証実験のポイントは、脳波測定器を使って被験者の脳波データを取得したところにある。実験に参加した被験者は、首都圏で働く労働者20人(男性15人、女性5人、平均年齢37.2歳)。被験者には東京では勤務先のオフィス、そして信濃町では自然を一望できる会議室などで働いてもらい、そこでの脳波を測定した。


実証実験で使った簡易脳波測定器。慶應義塾大学理工学部の満倉靖恵教授と電通サイエンスジャムが開発した。(出所:Nature Service)

 北里大学大学院の田中克俊教授や木村理砂医師など、実証実験のチームメンバーによる考察は下記の通りである。


  • 「森林環境で過ごすことにより、都内オフィスで働いていたときよりも心身の状態が良好になった」
  • 「80%の参加者に、森林環境では都内オフィスより興味が高まり活性化する傾向がみられた」
  • 「森林環境と都内オフィスにおいて同様の作業を実施したところ、森林環境のほうが作業成績が高まる傾向がみられた」
  • 「脳波測定により、森林環境では心穏やかに快適性を保ちながら作業していることが検証された」

長野県信濃町の森林環境における、被験者の全般的な脳波測定結果。「興味関心が高まり、脳が活性化している状態」を示す指標を解析したところ、被験者の80%で、この指標が都内オフィスよりも上昇した(出所:Nature Service)
被験者のクレペリンテスト(単純計算などの作業を繰り返し実施させることで処理能力をチェックするテスト)を実施したところ、信濃町の森林環境においては都内オフィスに比べて作業成績が向上したという。(出所:Nature Service)
被験者が知的作業をしている最中の脳波を測定したところ、信濃町の森林環境における脳波の状態は、都内オフィスにおけるそれよりも「心穏やかに作業できる傾向」が見られたという(出所:Nature Service)

 実証実験に携わった医師の木村理砂氏は、「信濃町の森林環境における知的作業中、被験者には、心の穏やかさ、興味関心、快適さといった脳波の指標の向上が見られた。このことからは、森林環境にいるほうが疲れが取れやすく、リラックスした状態で集中力を高めやすいものと推測される。森林セラピー、自然体験、自然の中におけるリモートワークなどにより、健康増進や生産性の向上を図れる可能性がある」と語る。


 Nature Serviceと信濃町はこの実証実験の結果を受け、リモートワーク施設である「信濃町ノマドワークセンター」を開設し、6月にも本格運用を開始する。空間設計に工夫を凝らし、壁一面のガラス窓を設けるなど、施設内のどの場所からも緑を眺められるようにした。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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