アスリートの汗の成分を分析して、それぞれに最適なスポーツドリンクを提供する。そんな取り組みが始まっている。仕組みを開発したのは米国のスタートアップ企業、エピコア・バイオシステムズ(Epicore Biosystems)だ。


 同社は、皮膚に貼って汗をとらえ、その成分を分析するデジタル・パッチを開発している。パッチに実装したマイクロ流体管で汗を収集し、バイオマーカーで汗の成分を分析。摂取が必要な成分や水分の不足度合いなどを知らせる。エピコアは、ウェアラブルデバイス開発を手がけるMC10のCTO(最高技術責任者)を務めたルーズべ・ガファリ(Roozbeh Ghaffari)氏と、曲げ伸ばしできるフレキシブル電子回路の研究を専門とするノースウェスタン大学のジョン・ロジャース(John Rogers)博士が共同で創業した。


スキンケアパッチの例(出所:Epicore Biosystems)
デジタル・パッチ(出所:Epicore BiosystemsのWebサイト)

 この機能に注目したのが、米ペプシコのスポーツ飲料部門、ゲータレード(Gatorade)である。同社は、このパッチを使ってアスリートに正確なデータを提供し、個々のアスリートの身体や状態に合わせたスポーツ・ドリンクを提供することを目指している。近く、パッチを一般公開する準備を進めている。


 エピコアの特徴は、使い捨てできるほどパッチのコストを下げた点にある。BluetoothやWi-Fi、NFCを組み込むこともできるが、そうなるとバッテリーが必要になり、使い勝手の悪いものになってしまう。無線通信できる場所を前提としてしまうと、アスリートやパイロット、建設作業員にとっては、現場で使用しづらくなるという面もある。


 試行錯誤の結果、エピコアは通信モジュールを取り除くことにした。通信せずに変化をとらえられるよう、食用色素を使い、汗の量やバイオケミカルによりパッチの色が変化するようにした。スマートフォンのカメラでパッチの写真を撮って専用アプリで分析すれば、アスリートが何をどのくらい飲む必要があるか、レポートが提示される。エピコアは、このために30以上にのぼる特許を取得しているという。


 ゲータレードはこのパッチを、フロリダにあるゲータレード・スポーツ・サイエンス・インスティチュート(GSSI)で開発。これからプロ/大学/高校のアスリートに配布する。既にテニスのセリーナ・ウィリアムスがパッチを貼って出演するTVキャンペーンを繰り広げ、2800万ビューを獲得した。


 このほか、2020年には一般消費者向けにもパッチを提供する計画である。ただし一般向けは、アスリート向けほどの専門的な解析ができるものでなく、脱水症状を教えてくれる程度の簡単なものになると見られる。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.