「ちょっと時間ができたから、映画でも見ようか」。電波で流れるリアルタイムのテレビ放送、ケーブルテレビ、有料放送、ネット放送、そしてネットの動画コンテンツ。ビジュアルコンテンツは今や、見たいものを探すのにも苦労するほど多様化している。そんな視聴者に、番組探しの手間を掛けさせない、新しいサービスが登場している。


 今、コンテンツ視聴は物理メディアを介さないのが当然になっている。ネット視聴か、ケーブルテレビ経由のVoD(ビデオオンデマンド)か、いずれにせよリモコン操作で欲しいコンテンツを選び、すぐに視聴を始められる。視聴者にとって大変なのは、選ぶこと。選択の自由がありすぎる。もちろん「おすすめ」に従っていてもよいのだが「こんなのがいいな」と、作品の方向性を絞りたいときは、どうすればよいだろうか。


 PC的に考えれば、タイトル名や出演者をキーボードから入力し、検索すればいい。しかしテレビのユーザーインタフェース(UI)は限定的。リモコンからの文字入力は非常にストレスがかかる 。検索は一筋縄ではいかない。


 スマートスピーカーでお馴染みの音声認識技術を使う方法もある。これなら入力は簡単。物理的なキーボードを使わなくても、また画面上のキーボードを使わなくても楽々入力できる。問題は入力した後、つまりテレビ側が提供する検索能力だ。


 米国にTiVoという会社がある。以前はRovi、その前はマクロビジョン(Macrovision)という社名だった。ビデオテープ時代を覚えている人ならば、マクロビジョンの名前に記憶があるかもしれない。コピープロテクション方式の一つを開発した企業だ。レンタルビデオを違法にコピーしても、コピーにより作られたテープでの再生は画面が乱れて全く見えないか、ノイズがひどくて見るに堪えない画像になる。


EPG(電子番組ガイド)の情報提供を行う米TiVoは、以前はコピーガード技術で知られていた。買収したHDDレコーダーの社名を引き継いで現在の名前になった。

 現在、同社の主力はEPG(電子番組ガイド)に関する事業だ。21世紀に入って多くM&Aを行った同社は、EPGの有力企業を買収し、EPG用データ提供を事業の柱とした。最近は、HDDレコーダーの先駆的企業だったTiVoを買収し、Rovi と改名していた社名を再度改名してTiVoとした。TiVo買収により、HDD内蔵のセットトップボックス(STB)事業を強化している。


 TiVoは、EPG関連データ提供や、検索サービスそしてケーブルテレビ事業者向け業務改善支援を事業の柱にしている。また、同社ブランドのHDDレコーダー機能付STBも販売している。自社製のSTBや、同社仕様を満たす機能を持ったSTBに情報配信を行なうエコシステムを完成させた。ケーブルテレビ事業者向けには、視聴情報を活用して利益最大化を視覚的に設計するツールなどを提供するなど、エコシステムの拡大にも成功している。


 CESなどでのデモを見ると、検索はかゆいところに手が届く出来栄えである。例えば、マイクに向かって「ジェームズ・ボンド映画を見たい」と言うと、ずらりとリストが出る。ジェームズ・ボンドとは、映画007シリーズの主人公の名前だが、映画のタイトルにこの名前は使われていない。検索側は「ジェームズ・ボンド映画=007シリーズの映画」と解釈して、リストを返してくるわけだ。


 リストは、放映予定があるテレビ(無料放送)や加入している有料ケーブルテレビでのものに限られない。契約しているネット配信サービスでオンデマンド視聴が可能ならそれも教えてくれる。また、未加入のサービスでも放映予定があれば、「都度課金ならいくら」との注釈付きで、表示される。


 このような「コンテンツを探す」という基本機能に加えて、インタラクティブな絞り込みもできる。「ピアース・ブロスナン が出演したもの」、「ベニスで撮影したもの」といった条件を語りかければよい。絞り込むために思いついた言葉を投げ掛ければ対応してくれる。もちろん、俳優名だけでの検索、監督名での検索など、色々な探し方に対応する。


 もう一つ、映画内の有名なフレーズで試してみた。「I’ll be back」と一言話しかけてみた。映画「ターミネーター(1984年)」でアーノルド・シュワルツネッガー演じるアンドロイドが発した言葉である。このような断片的な情報であっても、検索システムは、目的の作品を探し当てた。


 このサービスは、音声認識の出来の良さもさることながら、検索性の良さが光っている。テレビを前にソファーに座って探すときに何を尋ねるかを理解した上でシステムが組まれているようだ。過去のEPG事業で作製した情報を有効に活用しているのだろう。


 一方、I’ll be backのような決めゼリフや、映画から有名になった出来事、現象などがEPG用の付加情報に収められているとは考えにくい。TiVoによれば、AIシステムが、インターネットなどから常に情報を集めて「学習」しているという。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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