sansansansan
  • DIGITALIST
  • Articles
  • アジア太平洋に後れをとる日本のIT職場改革、IDCが調査
Pocket HatenaBlog facebook Twitter Close
Ideas 公開日: 2018.12.11

アジア太平洋に後れをとる日本のIT職場改革、IDCが調査

お気に入り

ITを使って職場計画を実施している企業、アジアは60%、日本ではわずか30%という衝撃の調査結果。

 ITを利用した職場改革は進んでいますか――。こう問われたら、あなたはどう答えるだろうか。職場改革の内容にもよるが、大抵は「それなりに進んでいる」と答えるのではなかろうか。

 では、世界的に見て、日本の取り組みはどの程度進んでいると思うだろうか。最も進んでいるとは言わないものの、グループで言えば先頭集団に入っている、くらいのイメージを持っているのではないか。

 そんな私たちの「大いなる勘違い」を明らかにするデータがある。

 「アジア太平洋地域の12カ国・地域で、ITを使って職場計画を実施している企業が60%もあるのに対し、日本ではわずか30%しかない」

 これは、IDC Japanが日本とアジア太平洋地域の12カ国・地域(以下、AP)を対象に、企業IT職場改革の状況を調査したものだ(2018年6月に実施)。従業員が100人以上で売上額が10億円以上の規模の会社に在籍するCXOや、最新テクノロジーの導入に関わる役職者を対象に、働き方の未来に関して、アンケート調査を実施した(図1)。日本を除くAP12カ国・地域は、中国、韓国、香港、インド、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、台湾、ニュージーランド、ベトナムである。日本が150社、APは1275社が回答。企業を選択するうえで、製造業やサービス業など業種の比率はほぼ一定にした。
日本を含むアジア太平洋13地域でIDCが調査 出典:IDC Japan
 中長期の将来における破壊的テクノロジーは何かという問いに対しては、日本でもAPでも、人工知能(AI)、モバイル、IoTが挙がった。ただ、APではさらに、クラウドとロボティクス、5G(第5世代移動通信)も同程度に重要としている。加えて、AR/VRやブロックチェーン、3Dプリンティング、ウエアラブル、量子コンピュータなども、APは日本よりもずっと高い比率で重要と答えている。日本企業のテクノロジーに対する意識の低さが、浮き彫りになっているといえよう。

 冒頭で紹介したITを利用した職場改革に関する意識も日本は極めて低い。その具体的な低さを見ていこう。

ワークスペースのテクノロジー変革意識、日本はAPの半分

 まず、働く場所に関しては日本とAPとでは大きく意識が違う。「フレキシブルな働き方や、時間や場所にとらわれない働き方の比率を増やしている、または増やす予定である」と答えた企業はAPでは40%だが、日本企業は30%弱にとどまった。「既に一部の社員はサテライトオフィス/コワーキングスペースやフリーアドレスのオフィスで働いている」とした企業も、APでは30%弱だったのに対し、日本は10%しかない。

 「社内にコワーキングスペースやフリーアドレスのフロアを作ってパートナーとの競争の場にすることを検討している」企業はAPが34%に対して日本は10%。「社員または業務の一部にサテライトオフィス/コワーキングスペースを提供することを検討している」企業でも、APが30%に対して日本はわずか7%にとどまる。日本はまだ会社が社員をオフィスに縛りつける傾向が強く、働き方改革の一環として含まれるこれらの考え方が日本企業には乏しいことがわかる。

 次に、30歳半ば以下の若いミレニアル世代を企業活動の中でうまく生かすための仕組みについて見てみる。

 まず、「ミレニアル世代を労働力として加えていくうえで、ワークスペースのテクノロジーに変革が求められていることを認識している」企業は日本が25%しかないが、APは48%もある。ほぼ2倍に近い。

 以下の設問は、この結果を裏付けるものだ。「さまざまな世代が働き、互いを理解し合いながら働くための一貫性のあるワークスペースを作るための指針がある/作ろうとしている」企業は日本が31%に対して、APは49%。「ミレニアル世代に合わせてワークスペース、ワークカルチャー、テクノロジーを変革するための指針を持っている/作ろうとしている」企業は日本が28%、APは42%。「ミレニアル世代の意見や希望を汲み取るためにミレニアル世代をリーダーに抜擢したり、意思決定のプロセスに参加させている」企業という質問でも、同程度の違いがあった。

最大の問題はテクノロジーが将来も不要という考え

 最新テクノロジーの導入状況となると、日本企業とAP企業との差はもっと顕著になる。特に、「ビッグデータやBI(ビジネスインテリジェンス)ソリューション」は日本が9%しか導入していないが、AP企業は42%も導入している。「企業向けモビリティ管理とセキュリティ」となると日本7%に対してAPは37%とその差は大きく開く。

 最新テクノロジーの導入に関しては、日本企業はAPでの企業と比べて、ウエアラブル端末、ドローン、LTE通信機能付きPCやタブレット、デジタルマーケティング、Software-Defined xx(NetworkとCompute、Storage)など調査項目に挙げた全てのテクノロジーについて、遅れているという結果となった。これらのうちドローンはAPの12%に対して日本が8%と近かったが、それ以外は大幅に遅れている。

 さらに日本企業の問題は、今後最新ハードウエアやデジタル技術の導入計画についても非常に消極的なことだ。上述のテクノロジー調査項目すべてに関して、今後12〜18カ月に導入を予定していると答えた日本企業は最大6%で、項目平均で3〜4%しかなく、AP企業の20%と比べて、テクノロジー導入の意識が極度に低い。
IDC JapanのPC、携帯端末&クライアントソリューショングループマネージャーの市川和子氏
 日本企業は、デジタルスキルと知見を持った人材が不足していると回答した企業は48%に達し、AP企業の27%よりもずっと多い。にもかかわらず、デジタル人材を育てるトレーニングも外部リソースの活用もAP企業よりもずっと遅れている。これは「ITスキル不足を経営者が認識していないからだ」、とIDC JapanでPC、携帯端末&クライアントソリューショングループマネージャーの市川和子氏(図2)は述べている。

 日本でも大手企業の取り組みを見る限りでは、APに対してそれほど遅れているということもないだろう。問題は中堅・中小企業。とはいえ、労働者不足が加速し、生産性向上が強く求められる日本が、深刻な状況にあることは間違いない。


津田 建二


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

関連記事

DIGITALIST会員が
できること

  • 会員限定記事が全て読める
  • 厳選情報をメルマガで確認
  • 同業他社のニュースを閲覧
    ※本機能は、一部ご利用いただけない会員様がいます。

公開終了のお知らせ

2024年1月24日以降に
ウェブサイトの公開を終了いたします