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Ideas 公開日: 2018.12.26

【欧米デジタル化事情】製造業の未来は拓けるか、欧米で立ち上がるFaaS

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AI、3Dプリンターといったデジタル技術駆使して製造業改革に挑むFaaS。

 初期投資なしで生産体制を確保する――。そんな新しいスタイルの製造業が生まれつつある。背景にあるのは、FaaS(Factory as a Service)というサービスの台頭だ。

 FaaSは、モノを作って販売したい人や企業向けに、製造装置、ソフトウエアなどの製造環境を月額料金で提供するサービス。産業ロボットと、人工知能(AI)ベースの制御ソフト、クラウド基盤、それに技術サポートを提供する。これまでのように大きな初期投資は必要ない。

 英国・ロンドンを本拠地とするベンチャーのAI Buildは、比較的大型の構造物を3Dプリンターで製造できるFaaSを提供している。サービスに申し込むと、クラウドベースのAIソフト、大型の構造物を印刷するための産業用アーム、それに搭載するセンサーと印刷デバイス、そして印刷するのに最適な環境(一定の温度を保つための)を作るための装置を入れる箱が送られてくる。産業用アームはKukaのものを使用しているが、他のメーカーのものでも対応できる。

 印刷を制御する頭脳はクラウドのAIで、印刷装置が世界中どこにあっても、印刷状況をモニタリングしている。印刷中に問題が起こると、それを検知し、自動で対処するための指令を装置へ送る。装置側に人間は必要なく、アームのキャリブレーションから、印刷前の印刷手順の設定、印刷状況に応じた印刷順序の変更まで、すべて自動で実施してくれる。
 AIによる最適化を行うことで、「小さいものしか作れない」「時間がかかる」「鋳型射出に比べて高すぎる」といった3Dプリンティングの欠点を克服し、大型の構造物を自動で印刷できるようになる。例えば、壁のパネル(2.1m x 1.5m x 0.6m)を作る場合、 既存の方法では5000万円かかったものが、AI Buildの場合は54万円(そのうち材料代はわずか2万円程度)で製造できる。製造(印刷)にかかる時間も80倍だ。

 これにより、これまではコストの問題で製品化できなかったものも、世の中に出せるようになる。例えばザハ・ハディドによるデザインのベッドも、実際の製造はAi Buildが担当している。
 AI Buildのビジネスモデルで注目すべき点は、このサービスを通じてデータが蓄積されていくところにある。同社に様々な構造物の3Dプリンティングのデータ、印刷のための産業用ロボットの設定パラメーターなどのデータが蓄積され、AIがどんどん賢くなっていく。データそのものをコンピュテーショナルデザインの素材にもできるかもしれない。また、どこで何が作られているか、何が売れているか、需要があるか、といったデータもAI Buildのクラウドにたまっていく。これらは、企業のマーケティングや商品開発の支援といったところにも利用できる。

 もう一つ、材料のリサイクルに努めている点も特徴である。Ai Buildはサステナブル・ラグジュアリ・ブランドのBOTTLETOPと組み、リサイクルされた廃棄プラスチックからクリスマス・ツリーを作って、売り出している。520本のプラスチックボトルから170cm x 90cm x90 cmのツリーを作っている。

 AIと3Dプリンティングを組み合わせたFaaSは、さらに応用が広がりそうだ。


川口 洋二=Delta Pacific Partners CEO


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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