1960年代からリモートワークに取り組む北欧

 2020年4月に新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が出され、日本中の多くの企業が在宅勤務による出社抑制を求められた。大手企業は比較的スムーズに移行したところが多いようだが、freee株式会社が2020年4月に実施した調査によると、中小企業で働く従業者のうち60%以上がリモートワークを許可されていないと回答している。


 リモートワークを導入した中小企業も、その多くは働き方を急に変更することとなり、利用するICTツール、リモートワークの制度とその運用ルールなどについて、十分に吟味する時間を持てなかったであろう。通信のセキュリティーの確保なども含め、課題を抱えたままリモートワーク体制に移行していることが実情と言えるだろう。


 一方で、世界に目を向けると、多少呼び名は違えどもリモートワークと同じような働き方は、欧米を中心に広く浸透している。欧州生活労働条件改善財団(European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions:Eurofound)の調査によると、リモートワーク先進国の一つである北欧のスウェーデンでは、すでに1960年代からリモートワークの導入を推進してきた。また、デンマークについても、2006年の時点ですでに国の労働力人口の4分の1以上が何らかの形でリモートワーク勤務していたとの報告もある。


ストックホルム

 北欧の場合、交通網の整備の度合い、厳寒な気候など、通勤したくてもできないことが理由で、外出せずとも働けるリモートワークが普及した。世界最大級の統計データベースを運営するドイツ・スタティスタの2018年のリポートでは、企業で働く15歳~64歳のうち、何らかの形でリモートワークを実施している人の割合は、スウェーデンが34.7%、アイスランドが31.5%、ルクセンブルグが30.8%、フィンランドが30.3%。ルクセンブルクを除き、北欧の国々が軒並み3割を超えている。


 こうした土壌があったためか、新型コロナウイルス対策として、リモートワーク体制への移行はスムーズだったようだ。ある報道によるとスウェーデンでは、感染が拡大するにつれて、政府から特別な指示がなくても労働者の半数が在宅勤務に切り替えていたという。


アメリカでは430万人が仕事の半分をリモートワークで行う

ニューヨークの街並み

 北欧と並ぶリモートワーク先進国のアメリカだが、今や新型コロナウイルス感染者数が世界第2位の国でもある。新型コロナウイルス対策としてリモートワークの導入が進んだアメリカには、北欧と同様にリモートワークの推進を可能にする下地がもちろんあった。


 その下地とは、ここ十数年間でリモートワーク人口が急激に増加したことだ。ジョブ・ポータルサイトのFlexJobsと、調査会社・Global Workplace Analyticsが実施した調査では、アメリカにおけるリモートワーク人口は、2008年から2017年までの10年間で91%、2006年~2017年間の12年間で159%も増加したという。その具体的な人数は、2017年の時点で約430万人とされている。


 リモートワークに関する統計や調査では、リモートワーカーの定義によって人数や労働人口に占める割合が異なってしまう。日本でも、仕事でITツールを活用し、オフィス以外の環境で仕事をする時間が週のうち8時間以上となる「狭義のリモートワーカー」の人口は、すでに1000万人を超えている。


 このことを踏まえると、アメリカの約430万人という数字だけを見ると意外に少ないと思えてしまうかもしれない。しかし、この数字は自身の「労働時間の半分」をリモートワークで働いている人の数を指している。


 つまり、アメリカでは約430万人が、勤務時間の半分をリモートワークで行っているということになる。週5日の勤務と考えれば、週2日以上リモートワークしていることになる。この約430万人という人数は、アメリカの労働人口の約3.2%に過ぎないが、今後ますます増加することが考えられる。


 というのも、ホワイトカラーの業種においては、雇用される側、特にミレニアル世代(1989年~1995年生まれの世代)が自身の就職先を選ぶに当たって、企業がリモートワークを許可しているかをとても重要視しているという調査結果があるからだ。


 こうした下地があったことで、アメリカでは新型コロナウイルス対策としてリモートワークへの移行がスムーズに進んだ。また、従業員の職務内容や勤務地、労働時間が明確に定められたいわゆる「ジョブ型雇用」が主流だったことも、従業員の在宅勤務を後押しした。


 さらに、同様の状況はアメリカの教育現場でも見られている。大学だけでなく小・中学校、高等学校でもノートパソコンが学生・生徒に配布されている地域が多く、遠隔講義や授業の実施も容易だったという。