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Ideas 公開日: 2020.08.06

ウィズコロナ、デジタルツールで変わる働き方

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新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、新しい生活様式に合った働き方へのシフトが急速に進んでいる。それを可能にしているのがデジタルツールの活用だ。

「必要なときだけ出社」が当たり前に

 本来は「オフィスに出社する」ところを自宅やサテライトオフィス、コワーキングスペースなどで仕事をするというのが、これまでのリモートワークの考え方。ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、現在は「オフィス以外の場所で勤務すること」が新しい働き方になりつつある。2020年5月に、厚生労働省は「新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』の実践例」を公開し、リモートワークやオンライン会議を推奨。こうした状況の中、リモートワークで活用するデジタルツールが注目されている。こうしたツール群が、新しい生活様式へのシフトをさらに加速させることになるのだろうか。

 例えば、政府の緊急事態宣言以後、リモートワークへの移行やオンライン会議の実施を余儀なくされた多くの企業が導入したツールとして、Googleの「Google meet」やZoom Video Communicationsの「Zoomミーティング」が挙げられる。いずれも、アカウントを取得すれば無料で利用を開始でき、インターネットに接続できる環境であれば、モバイル端末からでもオンライン会議に参加できる。

 中堅規模以上の企業では、Microsoftの「Microsoft Teams」、シスコシステムズの「Cisco Webex Meetings」などのオンライン会議ツールを導入するケースも多い。いずれもリモートワークの需要拡大に伴い改善が施され、使いやすさが向上している。最近では、「Microsoft Teams」で参加者が一つの背景に並んで表示される「Togetherモード」が実装されることが発表された。これは従来のグリッドビュー(参加者が四角い枠で区切られて表示)と違い、参加者の姿が背景に固定され、よりリアルな会議に近い環境をオンライン上で再現できるようになるという。
Microsoft Teams「Togetherモード」 出典:Microsoft
 また、ドコモ・システムズの「sMeeting」は、「純国産」のウェブ会議システムだ。2015年の提供開始からNTTグループの約23万人が業務で実際に使用し、機能が強化されてきた。特長はセキュリティと音声品質の高さにある。特定のURLにアクセスして会議をするシステムが多い中、sMeetingは端末認証機能を備え、登録していない端末からは、会議にアクセスできない仕組みだ。機密情報を扱う経営会議などでの使用に適している。さらに、高圧縮・低遅延な音声コーデック技術「Opus」を採用し、音声が聞き取りやすく途切れにくい。 長野県茅野市でプリント配線基板を製造する、ちの技研では重要な技術会議や経営会議でも、セキュリティを担保しながらクリアな音声でのウェブ会議を実施できるようになったという。

オンライン会議をさらに便利にするツール

 こうしたオンライン会議ツールを活用していく中で、新たな課題も見えてきている。例えば、名刺交換や資料配布といった「対面だからこそ成立していた行動」が制限されてしまうことだ。それらを解消するデジタルツールも数多く登場している。

 ウェブ会議などにおいて紙の名刺と同じように交換できる「オンライン名刺」の機能提供を始めたのが、Sansan株式会社のクラウド名刺管理サービス「Sansan」と名刺アプリ「Eight」だ。サービスの利用者同士はもちろんのこと、どちらかがSansanやEightを利用していれば、サービス上で発行できるオンライン名刺のURLをウェブ会議ツールのチャットやメール、QRコードなどを使って伝えることで、紙の名刺と同じようにオンライン上で簡単に名刺を交換できる体験を実現した。

 また、オンライン会議上での資料配布をペーパーレスで実現したのがアステリアの「Handbook」だ。Google meetやZoomミーティングでも会議中に資料を画面に表示させて共有することはできるが、Handbookではその資料を会議参加者全員に配布することができる。文書や画像、映像などをクラウドで管理し、簡単に共有できるようにするツールで、コロナ禍以前から竹中工務店や鴻池組、三和シャッター、レノボなどが導入。すでに1500件以上で契約実績がある。

 一方で、タブレット端末を使った資料配布に特化したサービスが、キッセイコムテックの「SmartDiscussion」だ。タブレット端末のメリットである直感的な操作性が高く評価され、全日空やダスキンをはじめとした多くの企業・自治体で導入されている。

 そのほかにも、2020年7月7日には、既存のオンライン会議ツールを拡張するツール「mmhmm(ンーフー)」をEvernoteの元・CEOであるフィル・リービン氏が発表。mmhmmはオンライン会議における資料の見やすさを改善することができるツールで、画面背景にスライド画像を表示させる、人物に拡大縮小や透過処理を施して資料を見やすくするといったことを可能にする。
フィル・リービン氏による「mmhmm」紹介動画 出典:mmhmm

オフィスのデスクトップ環境をリモートで利用可能に

 これまでに紹介したデジタルツールだけにとどまらず、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えて、本格的にリモートワークに移行し、「働き方改革」や「働き方の新しいスタイル」の実現を考えている企業も少なくないだろう。

 本格的にリモートワークを実現するためには、「仕事はオフィスでするもの」という固定概念を変えていかなくてはならない。しかし、業種や業態によってはオフィスにあるPCを使わないと業務が回らないこともあるし、社内ネットワークやグループウェアにアクセスする必要もある。そうした問題を解決するのが、オフィスにある自分のPCにリモートでアクセスし、利用できるようにするツールだ。

 スプラッシュトップの「Splashtop Business」は、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)といったクラウドサービスを利用し、導入企業側で自前のサーバを用意することなく使えるのが特長だ。オフィスにある自分のPCと同じデスクトップ環境をリモートで再現できる。

 リモートからオフィスのPCにアクセスするときに気になるのがレスポンスとセキュリティの問題だがSplashtop Business は、1秒あたり30フレームのリアルタイム高速描写技術を採用。SSL/AES 256での通信、端末認証技術によるセキュリティ対策が取られている。

 また、幅広いデバイスに対応しているためBYOD(Bring Your Own Device:個人端末の業務利用)利用にも適していることから、セゾン情報システムズや三井造船、小岩井乳業など多数の企業において導入されている。

 一方、VPN(Virtual Private Network)を使ってオフィスのPCへのリモートアクセスを可能にしているのがソフトイーサの「Desktop VPN」。RSA1024bitの暗号化によるSSL-VPNトンネリングや各種認証機能の採用など、セキュリティに配慮されている。

 同サービスはすでに1万社以上の企業に導入されていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、2020年2月に同サービスの無償提供を実施。さらに多くのユーザーがサービスを利用するようになった。2020年4月上旬の緊急事態宣言の告知以降は、速いペースでユーザー数が増加し、ピーク時の同時接続数は無償開放前の約15倍にまで拡大したという。

 また、シンクライアントを活用してリモートデスクトップ環境を実現するツールを導入している企業も多いが、シンクライアントはオフライン環境では利用できない。そこで、ZenmuTechの「ZENMU for PC」のように会社PCの持ち出しをセキュアにするツールもある。

 ZENMU for PCは、PC上のデータを秘密分散技術によって無意味化し、データの片方をPCの内蔵ディスク、もう片方をUSBメモリやクラウドに分散保管する。両方のデータが揃わないとデータを読み取ることができないため、万が一どちらか片方のデータを紛失しても情報漏えいを防ぐことができる。

 一般的なファイルの暗号化に比べ、データを物理的に二つに分割・管理することで、より高いセキュリティの実現を可能にするというサービスだ。

 例えば三井倉庫ホールディングスでは、セキュリティ対策として導入していたシンクライアントにコストやパフォーマンスの課題があるとし、新たにZENMU for PCを導入。シンクライアントと同等のセキュリティを保持しつつ、パフォーマンスが大幅に改善したという。

業務のデジタル化をさらに推進し、新しい働き方を実践

 ここまでリモートワークの実現を支援するさまざまなツールを紹介してきた。ウィズコロナ、アフターコロナの時代には、新しい生活様式に合った新しい働き方の実現が求められる。「リモートワークは当たり前」になり、さらに、社内の会議も取引先との商談もオンラインが前提となっていくだろう。

 そうした中で求められるのは、業務の「デジタル化のさらなる推進」だ。業務フローの中に紙や手書き書類のやり取りなどが存在してしまうと、そこが新しい働き方へのシフトの妨げになりかねない。そして、今回、紹介したようなデジタルツールを活用することで業務のデジタル化をさらに推進できれば企業にとってさまざまなメリットが見えてくる。

 例えば、子育てや親の介護などを理由に離職を余儀なくされた従業員や、業務に制約がある従業員を貴重な戦力として再び活用することも可能となる。

 労働力不足の解消の一助にもなり、働き手が増えることで従業員一人あたりの業務負荷を軽減できれば働き方改革にもつながる。また、企業全体としての生産性向上も期待できる。業務のデジタル化をさらに推進・徹底することで、新しい生活様式に合わせた、新しい働き方の実践も可能になっていくだろう。


川口 裕樹=タンクフル

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