「民間主導のデジタル通貨」の実用化も加速

 一方、中央銀行が発行するデジタル通貨であるCBCDとは別に、民間主導でデジタル通貨の実用化を目指す動きも活発だ。Facebookが全世界の利用者27億人が利用することを想定してデジタル通貨「Libra(リブラ)」の発行を進めていることは広く知られているが、日本でも民間主導で実証実験を行う動きが活発化している。


 大同生命保険は2020年7月7日、暗号資産(仮想通貨)交換業者のディーカレットと共同でデジタル通貨の発行や利用に関する実証実験を開始した。実証実験では、大同生命の幹部社員約100人が、スマートフォンで動作するウォレットアプリ「DAIDO WALLET」を通じて、デジタル通貨「DLDC」を利用する。DLDCは日本円と1対1で交換可能で、DAIDO WALLET内でDLDCをチャージすると、利用者の給与から差し引かれる。DLDCは物品購入のほか、個人間の送金や自動積み立てなどに使うことができるという。2023年ごろの実用化を想定している。


2020年7月7日ディーカレットニュースリリース2020年7月7日ディーカレットニュースリリース
出典:2020年7月7日ディーカレットニュースリリース

 東京海上日動火災保険とディーカレットは2020年3月、保険料の領収や保険金の支払いといった保険契約の業務プロセスを対象に、ブロックチェーンやデジタル通貨を活用した自動化の技術検証を実施した。具体的には、ブロックチェーン上に保険契約の情報などを事前に登録しておき、事故が発生した際にその事故情報をブロックチェーンに読み込ませることで、保険金の支払い条件に合致するか自動的に判定。保険金をデジタル通貨で即座に支払う仕組みの有効性について検証した。


2020年5月13日ディーカレットニュースリリース
出典:2020年5月13日ディーカレットニュースリリース

 また、三菱UFJフィナンシャルグループでは独自のデジタル通貨「coin」を開発し、2020年度下期に発行する予定となっている。リクルートグループと共同で、まずはリクルートが運営する「ホットペッパーグルメ」や「じゃらん」などの加盟店舗において、1コイン=1円で使えるようになる。換金して銀行口座への入金も可能なほか、個人間送金に使える見込みだという。


決済機能だけではない、デジタル通貨の可能性

 将来的にデジタル通貨が実用化されれば、決済手段としての利用だけでなく、新たな機能を持った通貨としての可能性も見えてくる。具体的には、通貨に特殊な機能を持たせた「プログラマブルマネー」としての活用が検討されている。例えば、個人間でデジタル通貨での金銭の貸し借りがあった場合、当事者間で「返済期限」を取り決めておき、それをプログラム化して貸し付けたデジタル通貨に組み込んでおけば、返済日に自動で返済されるようになる。貸金業者、クレジットカード会社などがこのプログラマブルマネーを利用すれば、返済の確認・催促などをプログラムによって自動化することができる。返済の確認、督促状の送付などの業務から解放される。


 また、例えばデジタル通貨1コインを100円と設定し、「気温が25度を超えた日に冷たい飲み物を買うと1コイン120円に自動的に変動する」といったプログラムを組み込むこともできる。季節やキャンペーンのタイミング、気象条件、時間帯、場所などのさまざまな条件に応じて、通貨の価値を自動で変動させる仕組みを盛り込むことができるのだ。すでに、2020年2月にはKDDIグループとディーカレットがこうしたプログラマブルマネーの実証実験を実施。KDDIの社内カフェにおいて、前日と今日の気温を比較して、前日より暑ければ冷たい飲み物が安く買えるという仕組みを検証した。


2020年2月18日ディーカレットニュースリリース
出典:2020年2月18日ディーカレットニュースリリース

 このように、中央銀行によるCBCD、民間主導のデジタル通貨には、従来の紙幣や硬貨にはなかった新たな可能性がある。世界で初めてデジタル通貨(CBCD)の商用化を実現したカンボジアの取り組みをはじめ、ウルグアイやスウェーデンでの実証実験、中国のデジタル人民元、そしてG7の連携と、デジタル通貨の発行・実用化に向けた動きは、さらに加速していくと考えられる。そして、その影響は、単純に決済手段が紙幣や硬貨からデジタルに移行するだけにとどまらないだろう。通貨に、決済など従来の機能だけでない、新たな機能が追加され利用が進むことになると想像できる。つまり、通貨のデジタル化は、新たなビジネスが生まれるチャンスでもある。