ヴァージンギャラクティックは当初、約120km飛ぶと発表していましたが、今回は約80kmでしたね。

大貫 通常、国際航空連盟は100km以上を宇宙と定義していますが、昨年12月の試験飛行では予定通りエンジンを60秒間燃焼して82kmに到達する飛行でした。今後の試験飛行で、エンジンをフル燃焼させて高度を上げていき、スペースポートアメリカでの商業運航の実現を目指します。

なるほど、エンジンの燃焼を今後どこまで伸ばしてくるかが注目ですね。

大貫 商業運航が始まれば、次々宇宙旅行者が飛び立つと思います。最初に乗る100人のファウンダーを含む宇宙旅行申込者たちは既に訓練を行っていて、「いつでも準備OK!」という状態で心待ちにしていますよ。

7年ぶり、アメリカ有人宇宙機の復活

オービタル宇宙船(地球の周囲を回る宇宙船)についてはどうですか? スペースシャトルが2011年に引退してから、国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士打ち上げはロシアのソユーズ宇宙船に委ねていますが。

大貫 今年、いよいよアメリカの有人機が復活します。2社がカプセル型の商業有人宇宙船を開発中です。スペースXの「クルードラゴン」は1月に無人飛行を行う予定でしたが、米国政府のシャットダウン(閉鎖)の影響で早くて2月以降になる予定です。まず無人でISSにドッキングして帰ってきます。2回目の飛行は1回目の飛行結果次第ですが、今の計画では6月に宇宙飛行士が乗ることになっていますね。


1回無人飛行しただけでもう有人飛行。大丈夫でしょうか?

大貫 スペースXは2012年に商業貨物船ドラゴンを民間機として初めてISSにドッキングしてから、昨年12月で貨物便サービスを20ミッションも行っていますから。

ISSへ民間有人宇宙船のデモフライトに乗る宇宙飛行士たち(提供:NASA)
ボーイングの有人宇宙船「スターライナー」の方はどうですか?

大貫 3月に無人飛行をする予定です。その次の8月に予定されている有人テスト飛行で注目されるのは、最後のスペースシャトル飛行の船長を務めたクリストファー・ファーガソン元NASA宇宙飛行士が搭乗することです。彼はシャトルの最後の飛行後、NASAを引退してボーイングでスターライナーを開発してきました。ボーイングの宇宙飛行士としてNASAの現役飛行士と一緒に飛行する予定です。


ボーイングは将来的に民間宇宙旅行を考えているそうですね。

大貫 スペースXとボーイングは商業顧客、つまり宇宙旅行も有人商業機が創る市場と見ています。政府のアンカーテナンシー(長期購入契約)とともに民間マーケットも開拓して、マルチな市場を持つことを目指しているんです。



政府のサービスに頼りすぎず、自分でマーケットを開拓しなさいというわけですね?

大貫 はい。ボーイングは宇宙旅行会社スペースアドベンチャーズや商業宇宙ステーションの建設を目指しているビゲロウエアロスペースと協力関係を結びました。今、商業宇宙ステーション建設を目指した宇宙ベンチャーが複数ありますが、これらも将来の市場になるでしょうね。


ソユーズ宇宙船が職業宇宙飛行士と宇宙旅行者を一緒に載せているように、7人乗りのスターライナーに、例えば宇宙飛行士4人と旅行者3人が一緒に乗ることはあるでしょうか?

大貫 一緒に乗ることはないと思います。NASAはNASA独自の安全基準のもと、スペースXやボーイングから商業有人輸送機の飛行サービスを購入して宇宙飛行士4人が搭乗するミッションを行う。一方、宇宙旅行は商業活動になるのでFAAの管轄になります。宇宙旅行ではパイロットを含め7人が搭乗すると考えられます。


宇宙旅行者について、米国では事業者が宇宙飛行のリスクを説明した上で、自己責任で飛ぶことが法律で認められているわけですよね?

大貫 そうですね。サブオービタルとオービタル宇宙船での宇宙旅行や、商業宇宙ステーションへの商業有人飛行に向けたレギュレーションはすでにFAAで整備されていて、今後、商業有人宇宙飛行の実績とともに見直されます。

1961年のユーリ・ガガーリンの宇宙飛行以降、延べ1319人が宇宙飛行している。今年、宇宙旅行が始まり、多くの人が宇宙にいくようになると「有人宇宙飛行の世界観が変わると思います」と大貫氏(提供:Bryce Space and Technology)
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将来は宇宙ホテルもできているかもしれないし、目的地も違う可能性もありますよね。ところで2019年末の野口聡一宇宙飛行士がISSに向けて打ち上げられることになっていますし、2020年にISSに行く星出彰彦飛行士も含め、注目ですね。

大貫 今後、日本の宇宙飛行士もアメリカの商業有人機に搭乗するのが楽しみです。2019年はサブオービタルもオービタルも有人宇宙飛行の歴史に残る1年になるでしょう。


アメリカ中が宇宙への復活に興奮し、世界が注目するでしょうね。次回は、月への輸送や、爆発的に増えつつある小型衛星マーケットなどについて聞かせて下さい。

本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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