宇宙ビジネスコンサルタント、大貫美鈴氏に聞く2019年注目の宇宙ビジネス。前編 では宇宙旅行をはじめとする有人宇宙輸送について聞きました。後半は、民間初の月着陸を行うのはどこ?という話題から。「小型衛星・小型ロケットの大量生産時代が始まる」という発言も飛び出します。宇宙の大量生産時代、その狙いとは?訪れる未来は?

月面一番乗りを果たす民間企業は、イスラエルから!?

今回は、月面着陸についてまずお聞きしたいと思います。お正月には中国の嫦娥4号が月の裏側に人類初の着陸を実現しました。インドも月面着陸を2019年に実現すると言われていますね。一方、気になるのが民間の月面着陸です。どこが一番乗りを果たすでしょうか?

大貫 イスラエルのスペースIL、ドイツのPTサイエンティスツ、米国のムーンエクスプレスが月に2019年に着陸すると発表し、既に打ち上げロケットも調達しています。その中で月に民間一番乗りをするのは、スペースILではないかと言われていますね。2月18日以降に月にタイムカプセルを輸送します。


いずれもGoogleがスポンサーになった民間月面レースGoogle Lunar X Prizeに参戦していましたね。スペースILとムーンエクスプレスはファイナリスト5チームに入っていました。

大貫 はい。Google Lunar X Prizeは2018年3月までの期限に勝者は出なかったものの、宇宙に挑戦するプレイヤーが増え、競い合うことによって技術の向上が加速し、投資も促進され、その結果、月面の経済的価値が上がりました。レースが掲げた目標は達成されていたと言えます。

月面に民間初の着陸をすると注目される、スペースILの着陸機べレシート(提供:スペースIL)
イスラエルが月を目指すとは正直、意外な感じがしましたが。

大貫 イスラエルはロケットを持ち人工衛星も打ち上げていますし、宇宙飛行士も2003年に打ち上げられています。軍事の側面もあるので民間用途とのデュアルユースや、セキュリティ、AI(人工知能)、サイバーなどデジタリゼーションがすごく進んでいます。ITの技術を使った宇宙ベンチャーが活発なんですよね。


ドイツチームの狙いは?

大貫 PTサイエンティスツはアウディやボーダフォンなど非宇宙企業が協力し、自分たちの技術が宇宙で使えないか検証したい、さらに宇宙で使うことで技術革新を起こしたいという狙いがあります。例えばアウディは全輪駆動技術などを提供しています。月面で車を走らせる技術実証、ボーダフォンであれば将来の月面の通信や宇宙間通信に使えないかと。


なるほど、では米国の民間企業の狙いは?

大貫 ムーンエクスプレスには既に月に物資を運びたいというお客さんがいます。2020年に月に着陸する予定です。Google Lunar X Prizeでファイナリストに選ばれたアストロボティックは、既に月に物資を運んでほしいというお客さんを何十社も持っていて、最初のミッションでは12社と契約しています。


物資輸送の需要が民間にもあるわけですね。NASA(米宇宙航空局)は昨年、10年間で26億ドルの契約金で月面に物資を運ぶ商業輸送サービス(CLPS)を発表し、9チームが選ばれましたね。

大貫 CLPSにはGoogle Lunar X Prizeの有望企業だったアストロボティクスやムーンエクスプレスとともに、米国外から日本のispaceやインドのチームインダスが米企業とチームを組んで選ばれました。CLPSでは3段階で月への輸送能力を上げていきます。まずは100kgまでの小型、次に500kg~1tの中型、最終的には5~6tの大型で、有人輸送につながる輸送手段をNASAは民間の力を借りて手に入れようとしています。同時に、月面に物を送る市場を作っていくのがNASAのやり方ですね。


なるほど、今年、月面に着陸する予定の民間3社はどのロケットで打ち上げますか?

大貫 スペースILやPTサイエンティスツはスペースXのファルコン9ロケットを、ムーンエクスプレスはロケットラボのエレクトロンロケットを調達しています。ただ、ロケットラボは今、小型衛星の打ち上げ需要が大きくて、小型衛星打ち上げが優先になりがちです。そのためムーンエクスプレスは他社とも契約を結び、どのロケットでも打ち上げられるようにしているようです。

2018年12月16日にNASAミッションの13個の小型衛星を搭載し打ち上げられたロケットラボのエレクトロンロケット(提供:ロケットラボ、Trevor Mahlmann)

本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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