安倍首相が宇宙開発産業に5年間で1000億円規模の資金を供給すると発表――。
ゼネコン大手の清水建設が「フロンティア開発室」という専門部署を設立して宇宙産業に本格参入――。
ZOZOTOWN創業者の前澤友作氏が、宇宙ベンチャーの米スペースXが開発するロケットで民間人初となる月面旅行を計画していると告白――。


 この数年、世界各国で宇宙ビジネス開発への注目度が急速に高まっている。そうした取り組みの一つとして、月面に居住施設の建築を目指す研究が、国内で進められている。テラフォーミングを題目にしたSF映画のような話だ。


 では、その未来図はどのようなものか。現状では、どこまで実現可能になっているのか。宇宙建築の第一人者である東海大学建築学部の十亀昭人准教授と、日本の民間初の宇宙建築を目指すスタートアップ企業「OUTSENSE(アウトセンス)」代表の高橋鷹山氏に話を聞いた。


「建築学部」と聞いて宇宙建築を思い浮かべる人は少ないかもしれません。そもそも、いつから宇宙建築に携わっていらっしゃるのでしょうか?


十亀:私は大学院在学中に展開構造物というものに興味を持って、「ミウラ折り(地図や防災マップなどに採用されている、紙の対角線の部分を押したり引いたりするだけで即座に簡単に展開・収納ができる折り畳み方法)」を考案した三浦公亮先生(現JAXA、東京大学名誉教授)の一門に弟子入りしたんですよ。建築学科にいながら、宇宙に進出できると思ったんですよ。そこから現在まで、形態や展開のパターンなどの基礎研究を行っています。


高橋:私の場合は、最初は普通の建築を学ぼうと思って愛知県の大学に入学したんですけど、宇宙建築というものを知ってから、それが頭を離れなくて……。十亀先生の研究室を訪ねて、東海大学に編入したんです。そして、どうしたら研究だけで終わらずに、実現できるかと考えた末に、自分で会社をやろうと思い、研究室を飛び出しました。


編集部注)十亀教授らが実用化を目指す「展開構造物」研究とは、折り紙の応用で、住居や倉庫などの構造物を小さく折り畳んだ状態で宇宙に打ち上げ、目的地で展開する建築技術。これによって、完成済みの住居を打ち上げるよりもはるかに高効率な運搬が可能になり、広い居住空間を生み出すことができるという。


展開構造物の研究は、地上ではどの程度まで実用化が進んでいるのでしょうか? 既に実際に使用されている例を教えてください。


十亀:展開構造物の理論は、ソーラーパネルに使われています。しかしこれはまだ1次元での展開。3次元(立体)でも利用できるようにしようとしているのが現在の研究です。4月からは、高橋さんと一緒に月面のフィールドを使った実験を始めようとしており、現在はどうやったら月面の環境下で構造物を開けるかをシミュレートしています。特許の都合で詳しくは話せませんが、つい先日も相模原にある実験施設を視察してきたところです。


高橋:私たちはまず、全長2m程度の構造物を作ろうとしていて、より月面に近い環境で実験ができるのは非常に有意義なことだと思っています。地球では重力(月面は地球の6分の1の重力)までは再現できませんが、その他の環境をできる限り模擬して実験を行っていく予定です。


月面での構造物の3次元展開には、どのような用途が見込めるのでしょうか?


十亀:一つは太陽光パネルです。現在のパネルでは、月面の極地で使用する際に地平線の太陽の動きに合わせて、面の角度を変えなければなりません。しかし円筒型のパネルを設置できればその必要がなくなります。


 もう一つは、「シールド」への利用です。


シールドというのは、何かを覆うために活用するということですね。


十亀:月面で資源探査、採掘をする際に発生する石や粉塵を、膜状のシールドで覆うことで飛散するのを防ぐことができます。シールドはスペースデブリ(宇宙ゴミとも呼ばれる、衛星軌道上を周回する人工物)から国際ISS(宇宙ステーション)を守るのにも役立ちます。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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