インド発のスタートアップOYO TECHNOLOGY&HOSPITALITYが、2019年3月28日、日本でサービスを開始した。OYOが提供するのは、ホテルを予約する感覚で賃貸アパートを借りられるようにするサービス「OYO LIFE」。デジタル技術を活用することで実現した、いわゆる不動産テックの一つである。


 インドでは短期間にホテルチェーンを築き上げたことで注目されたが、日本でまず始めたのは賃貸アパートの物件探し、手続き、決済をワンストップで、しかもスマホから利用できるサービス。単にアパートを借りやすくするだけでなく、新たな経済圏を築く構想を持つ。


 この手の新たな価値を提供するサービスは、米Uber Technologiesや米Airbnbなどにみられるように、既存業界からの反発を受けやすい。これに対して、OYO LIFEは業界との軋轢はなく、浸透させやすい点も特徴の一つといえる。


 OYO LIFEの強みは何か。目指している新経済圏はどのようなものか。OYOの成り立ちを含め、日本法人であるOYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPANのCEO、勝瀬博則氏に聞いた。(以下、敬称略)


OYOは設立からわずか5年で世界最大のホテルチェーンに成長しましたね。それほどの急成長を成し遂げたOYOとは「どんな会社」ですか。


勝瀬 OYOでは社員に3つの能力を求めています。「分析能力」「問題解決能力」、そして、責任を持って「決定する能力」です。例えば、あるホテルのお客様が、チェックインに20分もかかったことで不満を持ったとしましょう。この課題に対し、「できるだけ短くする」では課題解決にはなりません。もっと具体的に「何分以内なら満足してもらえるのか」を調査・分析し、目標とする対応時間を達成するにはどうすればよいかを考え(問題解決)、そして、それを遂行する必要があります。この一つひとつを、誰かに頼っているようではスピーディに事業を展開できません。 この中でも特に重視しているのが、自分で「決定・遂行する」ことです。実は、これができる人がなかなかいません。その能力を備えた人材が豊富にそろえていることが、わずか5年で世界最大のホテルチェーンになった最大の原動力だと考えています。


 インドでは、例えば資系企業に勤めた若者たちが数多くOYOに入ってきていますが、その理由もここにあります。インドでは、若く優秀な人材はみな、外資系グローバル企業を希望する傾向があります。ところがグローバル企業では、社員一人ひとりの裁量に任される範囲に限りがあって、自分の判断で何かを決められないケースが珍しくありません。これに気付いた人たちが「面白くない」と思ったのでしょう。2018年にはOYOがインドで入りたい会社の第3位に選ばれました。


一つの問題に対し、何人もが分析し、自分の責任で決断し、実行することを認めてしまうと、事業方針などに関してなかなか統制がとれず方向性が合わない、意見の衝突が起こるなど、マイナス面がありそうにも感じます。これは「日本的発想」なのでしょうか。


勝瀬 それはインド人の特徴的なところだと思います。インドにいらしたことはありますか?時間帯などにもよりますが、街中には人があふれかえっています。車もたくさん走っています。そうかと思うと牛もいますし。しかも、人は必ずしも信号を守らずに、思い思いの方向に歩いていたりして、まさに混沌というイメージです。それでもお互いに相手の邪魔をしていなかったり、自動車事故もあまりなかったりと、なぜかうまく機能しています。それぞれが自分で判断して動きつつ、全体として機能するように振る舞える。これはインドの文化です。


 それと同じことが、OYOの事業運営でも起こっていると考えてください。先の例で言えば、分析に基づいて「チェックインにかかる時間を5分以内にする」といった目標を立て、それを達成するための策を担当者がそれぞれ考えて実行し、やり遂げます。それでも全体として事業は改善され、成長していくわけです。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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