なるほど、部屋選びから入居までの手続きを簡略化したことと、Amazonが発注しやすい仕組みを提供した点が同じということですね。


勝瀬 そうです。それと、AmazonとOYO LIFEに共通する特徴はもう一つあります。従来の競合サービスでは考慮されていなかった「クオリティ」を担保することです。Amazonの場合で言うと、梱包や配送時間のクオリティを高めています。商品の発送を出店者に任せてしまうと、梱包や配送時間のクオリティはバラバラになってしまいます。そこでAmazonはメーカーや販売店からの商品を自社の倉庫に保管し、注文を受けたら倉庫からAmazonのやり方で発送しています。こうすることで、梱包も、配送時間も一定のレベルを保っています。


 OYO LIFEの場合は、住環境としてのクオリティを意識しています。家具や電気・水道・ネット環境を利用者や不動産オーナー任せにするのではなく、それらをOYOが整えたパッケージを基本サービスとして提供します。


 Amazonのプレミアム会員と同様のサブスクリプション型サービスもある。「OYO PASSPORT」というサービスで、契約者は提携パートナーの家事代行やカーシェアリングなどのサービスを利用できます。入居後1カ月間は無料にしています。引っ越し直後は荷物の整理などに時間を取られますから、掃除や洗濯などの家事代行サービスを無料で利用できるのは、入居者にとって大きなメリットになるはずです。家事代行サービスなどを提供するパートナー企業にとっては、入居者に気軽に体験してもらえるわけで、その後の継続利用も期待できるます。

我々は「黒船」ではない、既存業界と共存していける

確かにOYO LIFEは利用者にとってメリットがわかりやすいですね。ただ、新しいプレーヤーは既存の不動産業界の反発を招きやすいのではないですか。ほかの分野では、そのせいで思い通りにサービスを展開できない例もありますよね。


勝瀬 OYO LIFEの場合は、既存の不動産業界とうまく共存できると考えています。業界の方々は、「こういったサービスがいつか登場すると思っていた」などと、よくおっしゃいますが、私たちは、いわゆる「黒船」ではありません。不動産の仲介業者も、物件のオーナーも、従来とほとんど変わらない条件でビジネスできます。


 これまでの賃貸サービスは、不動産オーナーと借主が賃貸契約を結び、家賃については借主から不動産会社に支払うという流れが一般的でした。これに対してOYO LIFEは、オーナーと借主の間に入る形になるため、オーナーと競合するようなことにはなりません。


 同時にOYO LIFEは、不動産業者と借主の間にも入ります。そして、契約手続きを簡略化したり、付加サービスを提供したりするわけです。家賃は、借主からOYO LIFEに支払われ、OYOから不動産会社に支払われます。既存の業界と競合する部分はどこにもありません。

日本発のサービス、グローバル展開を目指す

OYO LIFEはOYOが世界に先がけて日本でスタートした賃貸事業ですね。今後、グローバル展開をするのでしょうか。


勝瀬 はい。「日本発」で、今後はもちろん世界に展開していきます。インドでは既に5都市でサービスを開始しました。もともとインドでも「OYO Living」という中期滞在のレジデンスサービスをテスト展開していましたが、そのサービスの名称も「OYO LIFE」に変更しました。「Living」つまり「住まい」だけではなく、「暮らし」を提供することがOYO LIFEのコンセプトだと考えています。


日本では空き家が年々増加しており、社会問題となっています。空き家を活用したサービスの提供などは考えていますか。


勝瀬 現時点で重視しているのは、今ある賃貸物件をどのようにバリューアップしていくかです。今後は、使われていない物件をバリューアップして商品化するというビジネス展開もあり得ると思っています。


 OYO LIFEは若者向けのサービスと思われがちですが、そうではありません。シルバー層の利用も想定しています。相続税や固定資産税のことを考えると、むしろシルバー層こそ賃貸に入るのが安心という考え方もできます。


 平均寿命が延びて人生100年の時代に突入した時、どうやって資産を管理するか考えると、所有していることが果たして正しいのかどうか、疑問です。世の中は所有から利用へという変化が様々な領域で加速しています。年配者が設備が整っている賃貸を利用すると考えれば、そこに、介護サービスとかペットの世話、お墓などの付加サービスといった需要がありそうなことは、容易に想像がつくでしょう。若者から高齢者まで、幅広い世代に向けて、快適に生活できるクオリティリビングスペースを提供する、OYOが目指しているのは、そのためのプラットフォームづくりです。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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