sansansansan
  • DIGITALIST
  • Articles
  • 【欧米デジタル化事情】 ファーストフードの次はファースト・ファーニチャー?家具のサブスクは家具屋を破壊するのか
Pocket HatenaBlog facebook Twitter Close
Innovators 公開日: 2019.06.25

【欧米デジタル化事情】 ファーストフードの次はファースト・ファーニチャー?家具のサブスクは家具屋を破壊するのか

お気に入り

月額固定費を支払えば、好きな家具を大幅ディスカウントでレンタルできる、家具のサブスクリプションサービスとは。

 2019年5月に家具のサブスクリプション型レンタルサービスのFeatherが、著名なベンチャーキャピタルから1200万ドル(約13億円)の資金を調達し、サンフランシスコから、ロサンゼルスなどにサービス地域を拡大すると発表した。同社サービスの会員は、月額固定費を支払えば、好きな家具を大幅ディスカウントでレンタルできる。
Featherのサービス紹介「あなたと一緒に変わる家具」というメッセージ(出所:FeatherのWebサイトより)
 米国には、家具のレンタルサービスは昔からある。例えば、シリコンバレー地区でもよく見かけるCORTは40年前に設立された。シリコンバレーのアパートに短期で滞在する日本からの駐在員も利用している。米国の旧来の家具レンタルの顧客は大まかに2タイプいる。一つは主に不動産関係で、用途は例えば展示販売する家の装飾。もう一つは低所得者層である。今、注目されているスタートアップ企業による家具レンタルは、それらとはターゲット顧客、ブランディング、扱う家具のタイプが違う。

 Featherがターゲットとするのは18〜35歳のミレニアル世代である。音楽、洋服、自動車も所有しない世代は、家具のレンタルにも抵抗がない。さらに、この世代は大学入学、就職、転勤と引っ越しの機会が多く、モノを所有することで縛られる生活はあまり向かない。引越し先、収入、ライフスタイルなどカスタマイズしたものをオンデマンドで選んで使えるサービスのほうが、彼らの生活には合っている。Featherのサービスは、まさにそんな利用者に向けたものだ。

 ほかに、例えばAirbnbなどで短期的に部屋を貸し出したいときにも、Featherのサービスを使えば、多大な費用をかけることなく部屋をスタイリッシュにできる。家具単体はもちろん、デザイナーがコーディネートしたをまとめてレンタルすることもできる。

 もう一つの消費者トレンドが、サステナビリティ、地球環境への配慮である。これまで、家具は一人の所有者により選ばれ、やがて捨て去られるものだった。米国商務省のデータによると、2015年にゴミ廃棄された家具は970万トンに及ぶ(参考)。安価でスタイルのいい家具も増えており、安価なため利用者は容易に使い捨てるケースも増えているかもしれない。。

 複数の利用者によって長く使われるようになれば、地球の環境へのインパクトは大きい。Featherのサービスでは、家具を実際に使ってみて満足できなければ返却し、別の家具に借り換えられる。返却された家具はまた別の利用者が活用するから、廃棄物にはならない。
製造、廃棄、リサイクルされた家具の量(米国商務省データ)
 既存のプレーヤーもこの動きに対応している。特に、スタイリッシュで比較的安価な使い捨て型家具を展開する世界最大の家具グループIKEAは、2019年2月にデスク、ベッド、ソファのレンタルサービスの提供を検討すると発表。4月に同社がドイツのカールストにあるサスティナブル・ストアで開催したイベントでも、レンタル事業について言及した。IKEA CEOのBrodin氏は、地球の温暖化への対策、Eコマースの強化など、ビジネスモデルの変革に積極的に取り組んでいる。IKEAは2030年までに同社の全製品をリニューアブル/リサイクル可能な材料で作ることをコミットしている。

 レンタルサービスの試みは、IKEAにとっては家具の耐久性がわかり、それを次のデザイン、製造に活かす機会にもなる。これまで販売時の一度きりの顧客との接点を長く維持することもできる。同社は既にオランダで、学生向けにベッド、机、テーブル、椅子を月額30ユーロ(3700円程度)でレンタル提供している。

 FeatherとIKEAとの違いは、Featherは複数のブランドを扱えることと、家具の在庫を持たなくて済むことである。Featherはターゲットとする顧客層が購買している家具ブランドから家具の提供を受けている。しかも独占契約となっているようである。

 Featherのサービスは会員制サービスと非会員制サービスの2つにわかれている。会員制サービスでは、1年の契約で月額$19(約2000円)と、レンタルしたい家具ごとに指定された額を支払う。家具の価格は、1年間払いつづければ、小売値の約50%になるぐらいに設定されている。レンタルしていた家具を購入したい場合には、それまで支払った合計額を売値から差し引いた額を支払えばいい。

 最初の家具の配送、組立て費は無料、1年で1回の家具の変更は無料、引っ越し時の家具の移動が$99(約1万900円)となっている。非会員の場合、月額費用はかからないが、レンタルする家具の価格が会員向けに比べて高くなる。配送、組み立ては$99(約1万900円)かかる。

 Featherは家具のリバースロジスティクス(通常の物流の流れと逆になる、消費者から生産者への物流の流れ。既存在庫からの収益の確保、資源の無駄の削減などを目指す)でナンバーワンになることを目指している。家具のサブスクリプションモデルには、Feather社以外にも複数の新規参入があり、家具のデザイン、耐久性について顧客の声のフィードバックを得ることができ、データ収集/分析が重視されている昨今のビジネス環境で、勢いが増しそうである。


川口 洋二=Delta Pacific Partners CEO


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

関連記事

DIGITALIST会員が
できること

  • 会員限定記事が全て読める
  • 厳選情報をメルマガで確認
  • 同業他社のニュースを閲覧
    ※本機能は、一部ご利用いただけない会員様がいます。

公開終了のお知らせ

2024年1月24日以降に
ウェブサイトの公開を終了いたします