デモデイでほかに目立ったテーマとしては、食料問題もあった。これもYコンビネーターが注目している課題の一つである。デモデイに登場したシル(Shiru)は、卵と乳製品の代わりになる可能性があるタンパク質の原料を開発している。代替タンパク質の市場は米国で急成長しており、2019年5月に上場したフェイクミートのビヨンド・ミートの企業価値は約8900億円(9月10日現在)に達している。創業者のJasmin Hume博士はニューヨーク大学でタンパク質エンジニアリングの博士号を取得した後、この業界のパイオニアであるハンプトン・クリーク(Hampton Creek)で、食品化学のディレクターを務めた。同社は新薬の発見に活用されているマシンラーニング技術を利用している。人工知能(AI)で動物の肉と同様の性質を持ち、栄養価も豊富、そしてよりサステナブルな食品のタンパク質の材料をいち早く探し出す。コンピュテーショナルデザインの手法を使う例は、業界他社には、いまのところ見られない。同社の特徴的なところだ。


 健康・ウエルネス関連では、スマホアプリを活用した様々なサービスが発表された。ストイック(Stoic)は感情をトラッキングするモバイルアプリを開発している。毎日、朝と夜に自分がどう感じているか、どのような問題に直面しているかアプリが質問する。ストレスを感じていると、ストレスを緩和するように導き、怒りっぽくなっていると、怒りへの対処方法をアプリが示唆してくれる。1日の終わりには、自分がうまくストレス管理できているか、省み、感情のコントロールの状況を毎日トラッキングできる。ストレス解消のためにパーソナライズされたコンテンツが提供され、例えば瞑想のプログラム、深呼吸、聖書、老子、釈迦の言葉、CBT(Cognitive Behavioral Therapy:認知行動療法)の思考訓練などが提供される。料金は年間$29.99で、利用者は増えている、という。


 若返りに取り組むスタートアップも登壇した。レジュべネーション・テクノロジー(Rejuvenation Technologies)はDNAの末端を保護する役目をもつテロメア(Telomere)を使った寿命の延伸を試みている。同社によると、テロメアは細胞分裂のたびに短くなり、短くなりすぎると、細胞が正常に機能できなくなり、これが老化や病気の主要な原因となっている。そこで同社は、テロメアを安全、短時間で伸ばすために、ヌクレオシドを変更したTERT mRNAを開発した。既にマウス実験では成果が出ており、これから臨床実験を加速させる計画だ。創業者はスタンフォード大学ニューロサイエンスの博士たちで、TERT mRNAベースのテロメア伸長の発明者である。


 数年後、これらの企業の中からユニコーンが生まれるか。楽しみにしたい。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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