CDOとして与えられたミッションは何ですか。

楢崎 グループ全体でデジタル変革を断行することです。言い換えれば、デジタル技術によって顧客にとっての新しい価値を生み出すことです。


新しい価値を生み出すために、具体的に何をするのでしょうか。

SOMPOホールディングスでグループCDOを務める楢崎浩一氏
(以降、撮影:新関雅士)

楢崎 変革には大きく2つの柱があります。持続的イノベーションと破壊的イノベーションです。持続的イノベーションは、既存のサービスを改良し、質の向上を図ることです。顧客との接点を増やして、よりきめ細かくニーズに対応します。


 破壊的イノベーションでは、これまでのビジネスとは全く異なるサービスを開発します。イメージとしては、顧客の生活を「安心・安全・健康」のテーマパークにしてしまうようなものです。従来の保険は、事故などが起こったときに補償するものですから、いわばマイナスをゼロにするもの。テーマパークは違います。新しい経験ができ、人生に喜びや楽しみをプラスしていける場です。


 デジタルはツールでしかありませんが、これからはデジタルのない世界は考えられません。既にスマートフォンやクラウドが当たり前になっています。そしてデジタルがつくり出す世界は、これからも大きく変化するでしょう。そうした進化を前提に事業を考えなければいけません。サービスが変化しても、その提供は事業部が担うわけですが、事業部の横には必ずデジタル担当の部署が必要になります。


保険ビジネスを超えた、人生のテーマパークづくり。そのアイデア創出などには、どのように取り組まれていますか。

楢崎 3つの方法を使い分けています。1つは自分たちで作り出す方法です。消費者は本当に欲しいものに気がついていないことが多い。ですから、ニーズを探るよりもむしろシーズを集めて、何ができるのかを消費者に提示していくわけです。


 例えば、東京とシリコンバレーに設立した「SOMPO Digital Lab」でPoC(概念実証)を重ねて、成功と失敗を繰り返しながらシーズを集めています。そのために、東京とシリコンバレーだけでなく世界中に10拠点くらいまでラボをつくりたいと考えています。また、データサイエンティストを養成する目的で、「ジーズアカデミーTOKYO」と共同で「Data Science BOOTCAMP」を開設しました。これによってシーズをつくり出す人材を社内に持つことができます。


 次の方法はM&A(合併・買収)です。既にシーズやノウハウを持っている専門企業があるのであれば、買収して手に入れるのが最も効率がいいからです。時間を圧倒的に節約できる。3番目の方法は他の企業との協業です。エクセレントカンパニーと世界観を共有して、同じ目的に向かって事業をつくり出すことも、自社にないものを手に入れる有効な方法です。


将来、SOMPOはどのようなサービスを提供するのでしょうか。

楢崎 12年間シリコンバレーに住んでいて、多くの成功者を見てきました。最先端のビジネスに触れる機会も多くありました。やはり米国は新しいビジネスモデルを生み出すことにたけています。その米国の動きを見ていれば分かることですが、ビジネスも私生活もあらゆる分野にすべて人工知能(AI)とクラウド、ロボティクスが導入されていくでしょう。キーボードは必要なくなり、ボイスエージェントで「風呂」と言えば、家に帰ったタイミングで風呂が沸いている。体にチップを貼れば、すべてのバイタルデータを測定できてしまうようになる。そんな世界がすぐそこに来ています。


 そういう前提から逆算して、SOMPOは「安心・安全・健康」を軸に顧客に価値を提供していきます。金融業は最大のソフトウエア産業だと考えています。金融業はいらなくなると言う人もいますが、そんなことはありません。価値の兌換(だかん)という機能を最大限に生かせば、大きな価値を生み出すポテンシャルを持っています。安心して暮らせて、楽しい経験ができ、人生が豊かになる。保険業はその根幹を支える産業になるでしょう。

「CDOは壊し屋」と楢崎氏

本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.