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Lifestyle 公開日: 2019.01.17

これぞアストン・マーティン魂、クラシックカーをEV化

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「排ガス規制下でもクラシックカーは走らせられる」。アストン・マーティンの意欲的な取り組みがここに。

※上の写真は、当時ごくわずかな台数のみが生産された「アストン・マーティンDB6マーク2ボランテ」(出所:Aston Martin)
 新しい時代がくると、古いものは消え去る運命なのか。そうはさせたくない、と考えているのが、英国のアストン・マーティンだ。テーマはクラシックカーである。最近、デジタル技術を活用して、過去のスポーツカーを電気自動車(EV)化する技術を発表した。

 まず登場したのは1970年の「アストン・マーティンDB6マーク2ボランテ」だ。オリジナルのDB6は65年から70年にかけて作られ、室内から調節できる可変ダンパーなど“ハイテク”が搭載されていた。パワーステアリングが標準装備になったのもマーク2の特徴だ。50年代から続いてきた伝統的なクルマづくりと、新しい技術との接点ともいえるモデルである。

 アストン・マーティン(厳密にはアストン・マーティン・ワークスが担当)が今回考えたのは「Heritage Electrification Concept」だ。おおざっぱに訳すると、クラシックカー電気化計画である。詳細はまだ明らかにされていないが、端的にいうと、簡略的なEV化技術だと説明されている。
 メリットは、「どんな車両も簡単にEV化できるところ」とアストン・マーティンは説明する。そのために開発されたのが「カセット」コンセプトだ。この電気モーター(とおそらくバッテリーからなる)カセットシステムは、現在アストン・マーティンが開発中の「ラピッドE」というEVセダンからのスピンアウトだという。

 DB6マーク2ボランテがこのカセットシステムによって外部充電で走るEVになっているのと同様に、例えばDB4やDB5といった、歴史的なアストン・マーティンの名車もEV化できるのだそうだ。過去のモデルに応用する背景には、排ガス触媒を持たない歴史的な車両の走行規制が厳しくなるという現状がある。

 「私たちは、古いクルマに対する社会的および環境的なプレッシャーが高まりつつあることを理解しています。近い将来、古いスポーツカーに乗るのはごく限られた場合のみになりそうです」。アストン・マーティン・ラゴンダ(正式社名)のCEOを務めるドクター・アンドリュー・パーマーは語る。
 「私の次の100年計画には、環境適合車を新たに開発することにとどまらず、宝物といえるヘリティッジ(むかしのスポーツカー)を守ることも含まれます。今回のプロジェクトはアストン・マーティンだから思いついたことであり、この分野のリーダーと呼んでいただくのにふさわしい発想と自負しています」

 カセットシステムは、ベース車両の直列6気筒エンジンの代わりにインストールするものだ。ただしオリジナルのパワートレインは保存しておき、その気になれば、電気モーターをはずして、再度搭載することも可能だという。アストン・マーティンでは、プロフェッショナルがその任にあたるとしている。
「古いアストン・マーティンのスポーツカーのオーナーのなかでも、とりわけ都市で乗りたいという人にとって、今回の技術は朗報だと信じています。憧れてきたモデルに乗りたいけれど、規制でそれも諦めなくてはいけないのかと思っていた人が、ヘリティッジモデルのEV化で、アストン・マーティンとずっと付き合っていけるようになります」。アストン・マーティン・ワークスのプレジデント、ポール・スパイア氏はそう述べている。
 プロダクトデザインでは往々にして、内容(電源や駆動系など)が劇的に変わるとき、それを外観でも表現しようとする。クルマは端的な例で、e-tronを出したアウディのようにあえて保守的なコンセプトで一般への浸透を狙うメーカーがある一方、BMWのi3やi8のように斬新なスタイリングを採用するメーカーがある。どちらを選ぶかは消費者の判断だが、アストン・マーティンのように、都市内はEVで、クラシックカーのイベントなど“ここぞ”というときはエンジンに載せ替えて、という考えはとにかくおもしろい。
 デジタル技術は一つの方向にのみ進むものではない。生活においてさまざまな可能性を示唆してくれるのが、もっとも望ましいありかただと思う。クルマの楽しみに多様性をもちこもうというアストン・マーティンの「Heritage Electrification Concept」にこれからも注目していきたい。


小川 フミオ


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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