東大病院が糖尿病患者向けシステムに採用

なるほど。医療向けには色々と需要がありそうですね。


相澤氏 はい。以前「ダイアルベティックス(DialBetics)」という糖尿病患者を対象とした自己管理支援システムを東大病院の人たちが開発しました。これは、運動や食事などの生活習慣と、血糖値などの測定結果をスマートフォン上で記録し、その記録内容から半自動的に生活習慣への指導メッセージを送るというものです。


 東大病院では、この食事記録の部分にずいぶん苦労していたようです。そんなとき、FoodLogを見て、「ぜひ使いたい」と。それでダイアルベティックスの食事記録の部分に、FoodLogのシステムを採用しました。2016年には、これを発展させて「グルコノート(GlucoNote)」というアプリも開発しています。このアプリ開発は、Foo.logが手がけました。


アスリート向けも開発中

他にはどのような取り組みをしているのでしょうか。


相澤氏 現在は、FoodLogをベースにした、アスリート向けの食事記録・管理アプリ(FoodLog Athl)を開発しています。食事の写真から料理名を推定し、栄養価を計算・記録するという基本的な仕組みはFoodLogと同様ですが、そのデータを管理栄養士とのコミュニケーションに用いる機能が付加されています。


 大学の運動部に所属する学生など、アスリートの食事管理に管理栄養士が関わり、指導を行う際には、

  • アスリート:SlackやLINEなどのメッセンジャーアプリを使って食事の写真とメニュー名などを入力・送付する
  • 管理栄養士:それを見て必要があれば栄養価を計算し、次に何を食べたらいいか、どういう点に気をつけたほうがいいか、といったフィードバックのメッセージを返す
といったやり取りが行われています。


 アスリート向けのFoodLogでは、次のような仕組みで、このやり取りをよりスムーズかつ手軽に行えるようにしています。


 まず、アスリートは通常と同様に毎食、食事の写真を撮影します。これをアプリに登録すると、通常のFoodLogと同じように、自動で料理名が推定されます。テキスト検索によって料理名を入力したり、コンビニ菓子や飲料などの場合は商品に記載されているバーコードを読み取って入力したりもできます。推定・入力された料理名をもとに、その食事で摂取できる栄養価が自動で計算され、写真とともに、管理栄養士側に送られます。必要があればテキストメッセージも併せて送ることができます。


 管理栄養士は、送られてきた写真、栄養データ、テキストなどをチェックし、アドバイスを行います。アスリート側の画面とは別に、管理栄養士側の管理画面があり、必要なデータを一覧しながらフィードバックできるようになっています。


 専用のコミュニケーションツールを使うことで、写真、栄養データ、テキストなどの情報を整理して閲覧できますし、これまで行っていた栄養価の計算が不要であるため、よりスムーズかつ簡便にやり取りできます。


 現在は、実際に運動部の学生や管理栄養士に使ってもらいながら、改善点を検討したり、作業フローにどのような影響があったかを評価したりしているところです。


 今後は、フィードバックテキスト自体を自動生成できるようにしたいと考え、どのようなメッセージを出すのが適切かといったことについて検討しているところです。その日の記録や選手の体重などのバイタル情報、栄養価の数値をもとにメッセージを生成し、それを管理栄養士がチェックしてから送信ボタンを押す、という流れで、入力の手間を減らしつつ信頼性を担保するような仕組みを考えています。

FoodLogに蓄積された食事記録からわかること

相澤氏 FoodLog上に蓄積されたデータを用いた解析も行っています。 例えば、個人の食事記録のデータからワードクラウドを作成すると、その人が頻繁に食べているもの、習慣的に食べているものがクラウド中で大きく表示されます。この結果には結構個人差があって、この人はおにぎりやサンドイッチをよく食べているんだなとか、この人はプロテインがよく出てくるので運動している人かなといったことを推測できます。その人の食事の傾向がよく見えることから、糖尿病予防の食事指導に使えるのではないかといった話も出ています。


ユーザー3人の食事記録から作成したワードクラウド

相澤氏 ちょっと違った観点ですが、FoodLogのデータと、Googleトレンドのデータを比較すると、数字の変化が非常によく一致することがあります。例えば「湯豆腐」というキーワードは冬になるとよく検索されるため、Googleトレンド上の数字も上がります。実はFoodLog上でも同じようなタイミングで「湯豆腐」がよく登録されています。また、クリスマスシーズンになるとGoogle、FoodLogともにフライドチキンの件数が急激に上昇したり、サラダチキンの発売から徐々にGoogle検索数が増えているのに伴うようにFoodLogでもサラダチキンの登録数が増えたりしています。テレビの情報番組などで話題に上がった食材が、FoodLogでも多く登録されるというような現象も見られます。


GoogleトレンドとFoodLogの記録が一致するケース

相澤氏 こうした注目度の上昇は、GoogleトレンドやTwitter上での言及数、Wikipediaでの検索数などからも観察できますが、FoodLogの場合「実際に人々が食べた」数字を直接見ることができます。基本的には食べ物が登録されるので、色のオレンジと食べ物のオレンジのように複数の意味がある食材名についても調べやすいなどの利点があり、マーケティング方面でも使えるのではないかと考えています。




 健康的な食生活や栄養に対する人々の関心が集まる中、手軽に自身の食生活を把握できる仕組みは今後一層求められていくのではないでしょうか。FoodLogから生まれた仕組みは、既に糖尿病の治療や予防などにも活用されていますが、今後の活用や発展にも期待したいと思います。


著者:平松 紘実

科学する料理研究家。食・科学ライター。科学をわかりやすく楽しく伝えたいと考え、大学在学中に、料理のコツを科学で解説するブログを始める。2011年よりライター、科学する料理研究家として本格的に活動を開始。2013年には初のレシピ本『「おいしい」を科学して、レシピにしました。」を刊行。


オフィシャルWebサイト「Official web site

本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.