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Lifestyle 公開日: 2019.05.30

【デジタルな生活はいかが?】IoTで進化する「未来の家」とは

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住むだけで健康になる家、人の暮らしを自らサポートしてくれる家…。“アフターデジタル”の世界には、そんな未来の家がありそう。

横浜市などが実証実験を進めているトレーラーハウス「IoTスマートホーム」の外観
 IoT(Internet of Things)という言葉はここ数年で一気に身近なものになりました。スマートフォンアプリから操作できる家電機器や、クラウド上で活動量や体重を管理できるヘルスケア機器など、様々なIoT機器が私たちの生活に入り込みつつあります。今回は、多くのIoT機器を設置したIoTスマートホームの実証実験を行う「未来の家プロジェクト」を紹介します。

 このプロジェクトでは、住むだけで健康になる家や、家そのものが暮らしをサポートしてくれる家の実現を目指しています。IoT機器やセンサーによって家が居住者の状態を理解し、室内環境を自動調節したり、健康への気づきを与えてくれたりするわけです。

 もともとは横浜市、NTTドコモ、and factoryの3者で始まったプロジェクトですが、その後様々な企業がメンバーに加わり、現在は全15者による取り組みにまで発展しました。以前、「【デジタルな生活はいかが?】写真を撮るだけ 食生活をデジタルで管理」で紹介したFoo.logもこのプロジェクトのメンバーで、日々の食事を解析し、摂取カロリーの計算や食事アドバイスを行う機能を提供しています。
 現在、実証実験を行っているのは広さ25平方メートルほどのトレーラーハウス「IoTスマートホーム」で、被験者には1人1週間ずつここで生活し、機能や実用性について評価・検証してもらっています。(写真はIoTスマートホーム内観)
 このIoTスマートホームには様々な工夫が盛り込まれていますが、大きく「無意識」「一括管理」「可視化」の3つに分けられそうです。

意識せずにログがとれるUI/UX設計

 まず、無意識。このIoTスマートホームには、居住者の状態を把握するため、生活動線に沿って多くのセンサーや測定機器が取り付けられています。床には行動を把握する圧力センサーが敷き詰められ、ベッドには睡眠の状態を測定する睡眠センサー、洗面台の前には体重計が設置され、何となく生活しているだけで、行動パターンや睡眠時間、体重などが記録されるように設計されています。

 体重計に乗るような、ちょっとした動作であっても毎日欠かさずに実施するのは結構大変ですよね。筆者は日記や家計簿が続かないタイプの人間で、健康管理のため睡眠時間や体重を記録しようとしたり、「行動のログをとって無駄時間を減らしましょう」という特集を読んでログを取ろうと試みたり、いろいろと試しましたが、ことごとく失敗してきた口です。未来の家プロジェクトでは、誰でも、そういった記録を無意識のうちにとれるようになっています。

複数の機器をまとめて管理

 次に、一括管理。未来の家プロジェクトではたくさんのIoT機器が使用されていますが、それらの全てを、共通のアプリ、クラウド上でまとめて管理・制御できるようにする「IoTアクセス制御エンジン」が導入されています。

 IoT機器を生活に取り入れている人はすでに実感しているかもしれませんが、IoT機器を増やせば増やすほど、その操作やデータの管理に必要なアプリケーションの数が増えていきます。筆者も、自分のスマートフォンを確認したところ、活動量計の数値を確認するアプリ、スマートスピーカーの管理アプリ、カーテンの開閉を行う機器の操作用アプリなど既に5個のアプリが入っていました。今後、生活の中で使用するIoT機器は増える一方でしょう。それら一つひとつを別々のアプリを立ち上げて操作したり、記録された数値を別々に管理したりするのはなかなか煩雑です。

 IoTアクセス制御エンジンは、これらの管理・制御を一つのアプリ上でまとめて行うことを可能にするクラウド基盤です。

 下の画像左側は、機器のコントロールを行うリモコンアプリの画面です。鍵の開閉や空調、照明の調節など、様々な機器の操作を全てここから行えるようになっています。例えば外出前、テレビと照明、空調を消そうと思った場合、それぞれのアプリをいちいち立ち上げなくても、一つのアプリ上でまとめて操作を行うことができます。家を出てから「そういえば照明とエアコン消したっけ……?」と不安になっても、アプリ画面上ですぐに確認できるというのも便利そうです。

 洗面所に設置された体重計やベッドに設置された睡眠センサー、身につけている活動量計など、さまざな機器で計測した健康に関する数値も、右の画像のようにスマホ画面上でまとめてチェックできます。
リモコンアプリとヘルスケアアプリの画面
 また、アプリを一つにまとめられるだけでなく、メーカーや仕様の異なる複数のIoT機器同士を連携して使えるようにできるのもこのエンジンの特徴です。現在行われている第3期実証実験からは、センサーで収集した情報を機器の制御に連動させる「ホームオートメーション」という機能が実装されました。これは例えば
  • ドアの開閉センサーで居住者の帰宅を感知したら、自動的に照明と空調をオンにする
  • 就寝時に玄関の鍵やシャッターが開いている場合は、自動的に閉めて安心安全な生活をサポートする
  • ベッドのセンサーが居住者の起床を感知したら、自動的にカーテンを開け、照明をオンにして快適な目覚めをサポートする
など、居住者の行動に合わせて、安全で快適な状態を家が自動的に整えるという機能です。最近は、用を足し終えると自動で流れるトイレが一般家庭にも普及しつつありますが、照明や空調、カーテンの開閉なども人の行動に合わせて自動で行われるのが当たり前という時代がやってくるかもしれませんね。

気づきが健康への意識を高める

 最後に可視化です。例えば、先ほど健康に関するスコアをアプリ画面上でまとめて表示できると紹介しましたが、これらの数値がアプリ上に可視化されるだけでなく、洗面台に設置されたスマートミラーにも表示されます。朝、身支度のために洗面台の前に立つと、鏡に数値が自動的に映し出されるので「今週は睡眠時間が不足気味だから今日は早く帰ろうかな」「昨日はカロリー消費量が少なかったから、今日はエスカレーターを使わずに階段で移動しようかな」など、様々な気づきを与え、行動に影響を与えます。

 活動量計をつけてみたものの、マメにアプリを開いて数値をチェックしたのは最初のうちだけで、だんだん見る回数が減ってしまった、という人は筆者だけではないはず……。こちらから見に行かなくても、毎朝目の前に表示されるのであれば、もう少し継続できそうな気がします。

 このスマートミラーの機能は、被験者にも好評だったようで、「睡眠時間や運動量の不足に自ら気づき、気をつけようと思えた」といった声が多く聞かれ、アンケートでは「IoTスマートホームでの生活を通して健康への意識が高まった/やや高まった」と答えた人が合計75%もいました。「無意識」と「可視化」によって、ストレスや負担感なく、健康への意識を高めることができそうです。

 また、床センサーによる行動の可視化は、一人暮らしの高齢者と離れて暮らす家族の間で情報を共有し、見守りに活用するなどの使い方にも応用できそうです。IoTアクセス制御エンジンは、機能単位で権限を設定できる(例:Aさんは鍵の開閉が可能だが、Bさんは鍵を開ける権限だけを持ち、閉める権限はない など)ので、遠隔地の家族に床センサーの行動情報だけを開示するといったことも可能です。
スマートミラーに健康に関するスコアを表示

今後の展開

 未来の家プロジェクトの実証実験は現在第3期が行われているところ。第4期は2019年夏、第5期は2019年冬に予定されています。第4期では、ホームオートメーションによって自動的に快適な環境を作り出すとともに、居住者が希望するライフスタイルをサポートする仕組みづくりが計画されています。

 例えば、睡眠の質を改善したいと考えたとき「朝起きたら日光を浴びると良い」「夕方に一度体温を上げると、寝付きが良い」「夕食は●時までに。寝る●時間ほど前に軽い運動をしましょう」などのアドバイスをもらっても、これらを全て実行するのはなかなか大変です。

 では、これらの実行を家が助けてくれたらどうでしょうか。居住者の起床に合わせて自動的にカーテンを開けたり、食事や風呂のタイミングをスピーカーからアナウンスしたり、寝る前にはアロマでリラックスを促したり…。本人が実現したいライフスタイルに合わせて、家側が働きかけ環境を整えてくれれば、3日坊主にならず生活習慣を変化させることができるかもしれません。

 睡眠の他にも、美容に良い生活スタイルや勉強が捗る生活スタイルなど、なりたい自分、送りたい生活に合わせて、家が環境を整えサポートしてくれる仕組みが検討されています。

 第4期までは1週間ずつの短期間の実験でしたが、第5期にはもう少し長めに実験期間を設定し、実用性や継続性を評価する予定です。最終的には商用化され、実際に世に出てくる日が楽しみです。なお、第3期以降は被験者が公募されています。商用化を待てない!という方は被験者に応募してみてはいかがでしょうか?
著者:平松 紘実
科学する料理研究家。食・科学ライター。科学をわかりやすく楽しく伝えたいと考え、大学在学中に、料理のコツを科学で解説するブログを始める。2011年よりライター、科学する料理研究家として本格的に活動を開始。2013年には初のレシピ本『「おいしい」を科学して、レシピにしました。」を刊行。
オフィシャルWebサイト「Official web site


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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