※ 上の写真は農村淘宝(taobao)のイメージ(出所:百度百科)

 中国の農村部というと、特に上海や深センといったきらびやかな都市部と対比して貧しいイメージで捉えがちだ。確かに所得は低いし、インフラも都市部に比べて充実していないが、それでもかなり整備されてきた。小都市や農村部はブルーオーシャンとして、ネットサービスが普及しつつある。しかも最近の傾向としては、大都市で人気のサービスが普及していくのではなく、小都市や農村部で人気のサービスがあり、それが拡大している。言い換えれば、ネット市場においても、一つの中国市場から、二つの中国市場に分かれているともいえる。


 それを紹介する前に、まずは中国の小都市や農村の状況を紹介しよう。手短に言えば、貧富の差はあり、中国の都市部と比べて貧しそうな景色には見えても、日本人が想像する以上に、スマートフォンをはじめとしたデジタル製品を所有していて、配送インフラや通信インフラも整っている。


 AppleやOPPOやvivoなど、主要メーカーのスマートフォンは、小都市部でも都市部同様に農村部の中心的な街では売られている。ミドルレンジはもちろん、フラッグシップモデルもある。農村部の中心となる街の家電量販店に行けば、50インチクラスの液晶テレビも売られている。買わない中高年もいるが、多くの働き盛りの人々が大都市から故郷に帰る春節の際には、スマートフォンや家電を故郷の家族にプレゼントする。


 農村部から都市部に出稼ぎにいく若い世代が多く、出稼ぎにいった家族ではハイテクを受け入れにくい中高年だけが農村部に残りがちなので、インターネット普及があまり進まないということもあろう。筆者が行脚して見た光景でいえば、農村部の中心地に残る若者については誰もがスマートフォンを利用しているという印象がある。毎年の春節には都市部で働く世代が故郷に戻って、家族親族にトレンドのサービスを伝えるためか、このタイミングで新しめのサービスの利用者が増える(が、春節がすぎるとそれなりに下がる)。


 小都市や農村部の人々ほど、ブラック労働からは無縁で時間に余裕がある。北京大学社会調査研究中心と智聯招聘が合同で提出した「中国職場人平衡指数調研報告」によれば、大都市よりも残業時間が短いという結果が出ている。


 統計や各種発表から現状を紹介すると、農村部のインターネット利用者数は2018年末で2億2200万人。インターネット利用率は、2013年には28.1%だったのが、2018年には38.4%まで上昇している。都市部のインターネット利用者数は6億700万人で、インターネット利用率は73.3%となっており、大きな差がある。


 とはいえ、インフラがないわけではない。農村部の中心となる街にはOPPOやvivoをはじめとしたスマートフォン販売店や、パソコンショップがある。また2018年の時点で4Gの人口カバー率は99%、光ケーブルによるネットワークは中国全土の村の95%をカバーしている。また配送網も整備されている。2019年全国郵政管理工作会議での発表によると、2019年の年末までには全国の農村の95%に郵便局の配送拠点を設ける。さらに、物流会社各社も各地に拠点を増やしおり、郵便局よりもより迅速に配送できる民間のサービスが広がりつつある。ともなればECも一気に利用しやすくなる。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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