※ 上の写真は左がレクサスのLS400(89年)、右が最新のLS500(写真提供:Lexus International)

 高級車とは何か。これからどこへ向かおうとしているのか。興味深いテーマである。デジタルテクノロジーもそこに絡んでくる余地がおおいにあるだろう。


 高級車にははっきりした定義がない。価格、サイズ、市場での評価など、パラメーターはいくつか思いつくが、明確ではない。そこがおもしろいともいえるのだけれど。


 日本を代表する高級車ブランド、レクサスはどう考えているだろうか。それを知るいい機会があった。2019年7月に開かれた「Lexus Milestones レクサス・マイルストーンズ」と題したジャーナリスト向けのイベントである。


 舞台はコスタリカのリゾート地リベリア。そこで、レクサス車の開発を統括するレクサスインターナショナルの佐藤恒治エグゼクティブバイスプレジデントが、史上最速で一流ブランドになったと欧米のメディアで評されてきたレクサスの歩みを振り返るとともに、将来への展望を披露してくれた。


フォーシーズンズリゾート・コスタリカでの「Lexus Milestones」でジャーナリストに向けてプレゼンテーションを行う佐藤恒治エグゼクティブバイスプレジデント
(写真提供:Lexus International)
佐藤恒治エグゼクティブバイスプレジデントは、早稲田大学理工学部卒、1992年トヨタ自動車入社。技術管理部配属の後、シャシー設計に携わる。製品企画として北米カムリを担当し、2005年からレクサス車の開発に従事。レクサスGSを主査として担当した後、LCのチーフエンジニア。
(写真提供:Lexus International)

 佐藤氏への最初の質問は、高級車の定義についてである。冒頭にも触れたように、高級車とは何かをめぐる議論は果てがない。ただ従来、顧客が重視してきたのは多気筒エンジンだった。


 「米国では時々、なぜ12気筒搭載モデルを作らないのか、という質問を受けました。12気筒より8気筒のほうが効率がいいのですが、ラグジュアリーカー市場は理屈ではありません。市場から”やっぱり12気筒でしょ”と言われたら、それに反論して納得していただくのは難しいです」


 いま、世の趨勢はダウンサイジング化である。たしかに、BMWやベントレーやアストンマーティンといったブランドは12気筒を持っている。一方でメルセデス・ベンツは看板車種のSクラスの12気筒モデルの生産を取りやめた。


 「新しい時代のラグジュアリーとは何か。好例は米国のテスラです。EV(電気自動車)のベンチャーとしてスタートし、2008年に第1号車のロードスターを発売しました。圧倒的な加速力でもって、ごく短時間で(多くの人が認める)ブランドになりました。従来はありえなかったことです」。佐藤氏はこう話す。


 テスラ車は電気モーターで走るので”気筒”そのものを持たない。8気筒だ、12気筒だ、16気筒だという議論すら無意味なのである。佐藤氏はライバルになるかもしれないテスラ車がマーケットを築いた事実を奇貨とするのだと語る。大排気量の多気筒エンジンで勝負するのは、もはや、レクサスのやり方ではないというのだ。


 「これからのラグジュアリーのキーワードは”圧倒的”だと思っています。顧客の心を揺さぶるものを提供していくことで、来るべき時代のラグジュアリーブランドとしての地位を確固たるものにできるのでは、と考えています」


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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