Lifestyle
公開日: 2018.09.20
ボルボが示したクルマの未来──ビジネスクラス仕様、毛布がシートベルト代わり
飛行機で出かけるよりも、寝ながらクルマで移動しましょう──ボルボが示した未来。
ボルボのコンセプトカー「360c」は、まるで飛行機のビジネスクラスのようだ。フルフラットにして就寝している間、衝突安全性を確保するために開発しているのが「セイフティブランケット」と呼ばれる毛布だ(写真=Volvo Cars)
自動運転の行き着く先は「レベル5」と言われる。これは「完全自動運転」を意味し、あらゆるシーンでの走行をクルマに完全に委ねることになる。9月5日にスウェーデンでボルボカーズが公開した「360c」は、そんな未来のコンセプトカーである。
ボルボ・360cはミニバンを平たくしたようなスタイリングだ。大きなキャノピー型のキャビンを持ち、おそらく4輪に配された電気モーターを制御して走行するのだろう。
高度な自動運転システムを搭載するクルマには、ドライバーという存在が必要なくなる。360cにもステアリングホイールはつかない。私たちは運転者ではなく、乗員としてクルマに乗り込むのだ。
ボルボ・360cはミニバンを平たくしたようなスタイリングだ。大きなキャノピー型のキャビンを持ち、おそらく4輪に配された電気モーターを制御して走行するのだろう。
高度な自動運転システムを搭載するクルマには、ドライバーという存在が必要なくなる。360cにもステアリングホイールはつかない。私たちは運転者ではなく、乗員としてクルマに乗り込むのだ。
ボルボ・360cはボルボカーズのデザインセンターでお披露目された
飛行機の代わりにクルマを
お披露目は、ヨーテボリというスウェーデン第2の都市にあるボルボカーズのデザインセンターで行われた。ホーカン・サミュエルソン社長 兼 CEOが登場し、報道陣相手に未来のクルマについてのビジョンを語った。
「ビジネスで短距離の飛行機を使う人は多いと思います。しかし45分の飛行(たとえばヨーテボリからストックホルム、あるいはストックホルムからヘルシンキ)のために、どれだけ時間のかかることか」
「ビジネスで短距離の飛行機を使う人は多いと思います。しかし45分の飛行(たとえばヨーテボリからストックホルム、あるいはストックホルムからヘルシンキ)のために、どれだけ時間のかかることか」
「家から空港まで1時間、乗り込むまでに荷物検査などで1時間、搭乗して離陸まで30分は待ち、到着してから空港を出てタクシーで目的地に向かう……。この時間を節約したいと思いませんか」
ボルボカーズが提案しているのは、デジタルテクノロジーを駆使した360cをハイヤーのように考え、短距離の行き先では飛行機の代わりに使ってもらうことだ。以前、「アストンマーティン、空を飛ぶ」という記事で、自動車メーカーの“飛行計画空”を解説したが、ボルボは“逆張り”である。
ボルボカーズが提案しているのは、デジタルテクノロジーを駆使した360cをハイヤーのように考え、短距離の行き先では飛行機の代わりに使ってもらうことだ。以前、「アストンマーティン、空を飛ぶ」という記事で、自動車メーカーの“飛行計画空”を解説したが、ボルボは“逆張り”である。
車両の周囲360度を常に各種センサーで確認して走る(写真=Volvo Cars)
車体を取り巻くような帯が色や光り方を変えて周囲とコミュニケーションする役目を果たす
ビジネスクラスのような室内空間を作ったインテリアデザイン統括のデザイナー、ロビン・ペイジ氏は、いくつかのインテリアを考えているそうだ。
「会議室、オフィス、あるいはフルフラットシートのビジネスクラスなど、目的に応じて選べるようにしたいですね」
「会議室、オフィス、あるいはフルフラットシートのビジネスクラスなど、目的に応じて選べるようにしたいですね」
4つぐらいの仕様を用意することを考えているそうだ(写真は会議室仕様、写真=Volvo Cars)
ボルボカーズでインテリアデザインを統括するロビン・ペイジ氏
もう一つ、今回のプレゼンテーションでボルボカーズが強調していたのは安全性だ。特に、一般道も走ることを想定しているため、歩行者に対する安全性能を強調している。カメラをはじめとするセンサーをフル装備した360cは歩行者を見つけると停止し、ライトと音で歩行者に合図を送り、例えば車両前の横断をうながしたりもする。(写真は歩行者を検知すると車両は自動で停止し、車両前の横断などをうながしている様子)
以前、ジャガー・ランドローバーが自動運転の実験で、大きな眼をつけたプロトタイプが歩行者とコミュニケーションをとるレポートを掲載した。
この点について意見を求めると、「眼のコミュニケーションは文化の壁を乗り越えられないと思います」とボルボカーズのコミュニケーションデザイン担当者は述べ、それよりシンプルなライトの明滅の仕方や優しい連続音のほうがメッセージが明瞭とした。
この点について意見を求めると、「眼のコミュニケーションは文化の壁を乗り越えられないと思います」とボルボカーズのコミュニケーションデザイン担当者は述べ、それよりシンプルなライトの明滅の仕方や優しい連続音のほうがメッセージが明瞭とした。
シートベルトの代わりになる毛布
現場ではヘッドセットをつけてビジネスクラス仕様での旅をバーチャルで体験させてもらった。大きなシートに腰をおろしていながら、外の景色がほぼ360度眺められるし、窓をスマートデバイスのように使えるのが面白かった。景色が夜になるとシートがベッドになり、星空が広がるのを見ていると、これはきっと快適そうだと感じた。
発表会の日に記者たちはヘッドセットをつけてVRで体験した(写真=Volvo Cars)
就寝時の安全を確保するために、「セイフティブランケット」というシートベルトの代わりになるブランケットも開発しているという。一見するとシルク混ウールといった感じの手触りの良い普通のブランケットだが、内部に特殊な繊維構造を仕込んであり、寝ている時は4つのアンカーポイントでシートに固定する。何もない時はふんわり身体を覆っているが、衝突の危険性が高まった時などは乗員の身体を拘束し、衝突による怪我を防ぐ働きをしてくれると、担当者は教えてくれた。
写真は1人乗りのビジネスクラス仕様。荷物の収納スペースも確保されている(写真=Volvo Cars)
ビジネスクラス仕様はひきだし式の収納スペースに加え水を使う洗顔もできる
自動運転というと既存のクルマの延長線上で考えてしまいがちだが、ボルボカーズは一歩踏み込んで、飛行機の代用というコンセプトを打ち立てたのが興味深い。
「実用化するのは15年後くらいになるでしょう」
サミュエルソン社長 兼 CEOはこう語った。「専用レーンを走ることを想定していますが、各国で規制の異なる欧州より早く、米国や中国で実現するかもしれません」。
運転する楽しみはなくなってしまうけれど、それはまた別のかたちで提供されることになりそうだ。
小川 フミオ
「実用化するのは15年後くらいになるでしょう」
サミュエルソン社長 兼 CEOはこう語った。「専用レーンを走ることを想定していますが、各国で規制の異なる欧州より早く、米国や中国で実現するかもしれません」。
運転する楽しみはなくなってしまうけれど、それはまた別のかたちで提供されることになりそうだ。
小川 フミオ
本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.
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