音声対話で多機能家電を使いこなす

音声認識ということは、音声での操作もできますか?

 できます。例えば「レンジで600ワット、3分」と言えば、ボタンを探したり操作したりすることなく、ハンズフリーで簡単に設定が可能です。


 また、音声認識による操作は、調理家電の様々な機能を使いこなすうえでも便利です。例えば、お惣菜の天ぷらを温めたいという場合、ヘルシオの過熱水蒸気を使った「さっくりあたため」機能を使うと、サックリ、揚げたてのように美味しく温めることができます。しかし、その機能がどこにあるか探すのは面倒ですし「そんな機能があった気がするけどなんて名前だったっけ」ということもあります。そんなときには「天ぷらを温めたい」と言えば、ヘルシオの方で「さっくりあたため」という機能を提案してくれます。


いろいろな機能がついたオーブンレンジを買ったはいいものの、面倒くさくて結局ほとんど使わなかった経験、あります……。


 ヘルシオにもたくさんの機能がありますが、それらを全て把握するのは難しいですし、探すのが面倒で結局使わなくなってしまうというケースはよくあります。それらを全部知らなくても、やりたいことを話すだけでそれにあう何かを提案してくれるようになれば、もっと気軽に毎日のように使っていただけるのではないかなと思います。


 機能を使いこなすには音声対話だけでなく、調理履歴による学習も有効ではないかと考えています。せっかく色々な機能がついているのに使われないのは、ただ面倒というだけでなく、失敗したくないから挑戦しないという気持ちも大きいでしょう。主婦/主夫の方々は「マンネリ化したくない」「新しい料理にもチャレンジしたいが慣れない機能を使って失敗したくない」というジレンマを抱えています。


 そこでAIがその人の習熟度に合わせて、「この機能を使ったことがあるならこの料理も作れますよ」「それをアレンジすればこんな料理もできますよ」「今のあなたならこれくらいできますよ」というように提案するメニューを少しずつ変えていければ、無理なく使い方の幅が広がり、料理の幅も広がっていくのではないでしょうか。現時点ではまだそこまでの段階にたどり着けていないのですが、今後はこういう機能も追加しながら、より頼れるパートナーにしていければと思います。


 今回、AIoTによって実現できる様々な便利さを紹介しましたが、中でも重要だと感じたのは「今日は何作ろう」という相談に乗ってくれるということでした。


 「今日は何作ろう」---。料理が好きな人や時間に余裕のある人にとってはそれほど大きな悩みではないかもしれません。しかし、時短・手間短レシピが人気を集め、調理の手間を省く道具や便利食材が広く活用されていることを鑑みると、実際に日々料理をする人の中には、作らなければいけないから作っている、忙しい時間の合間を縫ってなんとか作っているという人は決して少なくないはずです。そういう人にとって「今日は何作ろう」は日々重くのしかかる悩みなのではないかと思います。


 「今日の夕飯何がいい?」家族にこの質問をしたことがある人、もしくは、されたことがある人は多いのではないでしょうか。「なんでもいいよ」と返せば「それでは困る」と怒られ、「ハンバーグがいい」と答えれば「それはめんどくさい」「豚肉が余っているからそっちを使いたい」などと文句を言われ、結局お互いイライラするばかり……。


 「今日は何作ろう」とは、自分や家族が食べたいものという情報以外にも、最近似たようなものを作っていないか、使える時間や労力、費用、在庫、栄養バランス、季節感など様々な情報を総合的に考える複雑な思考です。そんなややこしい相談をしておきながら「それは嫌だ、もっとこうしてほしい」という要求をしてくる相手に腹も立てず、様々な情報を基に適した回答を検索して提案する、というのは人間よりもはるかにAI向きの仕事なのではないでしょうか。


 人間でなければできないこと、人間でなくてもできること、人間よりも機械(家電)の方が得意なこと、これらをうまく分担していくことによって、家電がただの便利な道具ではなく、良きパートナーになっていくのかもしれません。


著者:平松 紘実

科学する料理研究家。食・科学ライター。科学をわかりやすく楽しく伝えたいと考え、大学在学中に、料理のコツを科学で解説するブログを始める。2011年よりライター、科学する料理研究家として本格的に活動を開始。2013年には初のレシピ本『「おいしい」を科学して、レシピにしました。」を刊行。


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本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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