(注:この記事では社名をSUBARU、車両はスバルとした)

 新世代のアイサイトは、その名も「アイサイトX(エックス)」と呼ばれることになる。アイサイトについては、すでに知る読者も少なくないだろう。大きくいうと、衝突回避と、運転支援の二つを目的としたSUBARU独自の安全技術だ。


 市場導入を控えた、「アイサイトX」を、筆者はひと足先にテストする機会に恵まれた。現行より大型化した2基のカメラと前方用レーダーが組み合わされて、新しいレヴォーグに搭載される。


 2基のカメラを使うことで、二次元でなく、距離情報も取り込めるのがメリット。レヴォーグのウィンドシールドを見ると、リアビューミラーの近くに、カメラユニットが存在を誇示するかのように、据え付けられているのが分かる。


 「アイサイトで追突事故発生率は84%減少、歩行者事故発生率は49%減少しました」。SUBARUのホームページには、これまでアイサイト技術が事故低減に貢献した証明として、交通事故総合分析センターのデータ分析による数値が掲げられている。


 実際に、スバル車を運転したことのある人は、事故に遭っていないまでも、先行車追従走行や車線中央維持といった走行における機能や、アクセル、ブレーキそしてステアリングホイールの操作支援の恩恵を感じた経験を持っているのではないだろうか。


 私が、アイサイトX装備の新型レヴォーグ・プロトタイプを試したのは、テストコースだ。今回は主に運転支援システムがいかに働くかを、実車で確かめるという内容である。結論からいうと、すばらしい技術だ。


薄型ヘッドランプの採用などでルックスがシャープになった新型レヴォーグ・プロトタイプ
薄型ヘッドランプの採用などでルックスがシャープになった新型レヴォーグ・プロトタイプ

 ”車内に乗り込んだとき、これ(アイサイトのカメラユニット)を見ると安心する”と言うスバル車オーナーがいる。体験すると、それもなるほどと思うのだ。(現在、スバル車では、レヴォーグ、フォレスター、インプレッサ、スバルXVで標準装備)


 カメラを安全装備に採用するというSUBARUのコンセプトは、1999年にレガシィとランカスターに採用された「ADA(アクティブドライビングアシスト)」にさかのぼる。


 「アイサイト」と呼ばれるようになったのは2008年。衝突被害軽減を主目的に、かつ比較的低価格のオプションとして提供されたのが特徴だ。現行の最新版は「バージョン3」と呼ばれ、2014年に現行レヴォーグにまず搭載された。


 このバージョン3は、全車速域で追従走行および車線中央維持、そしてアクセルとブレーキ、さらにステアリングホイール操作をアシストする機能と合体して「アイサイト・ツーリングアシスト」へ進化しているのが特徴である。


 このコンセプトは、「アイサイトX」にも引き継がれた。カメラの画素数が約2倍になって、より広範囲をカバーできるようになったことに加え、3D高精度地図と組み合わせたソフトウエアが充実したのが注目点だ。準天頂衛星”いただき”を使ったGPS情報を利用している。


 アイサイトは「常に前方を監視し、人の“目”と同じように距離を測ることが可能」とされる技術だ。「クルマや歩行者、白線などを識別できるほか、広い視野角と視認距離、カラー画像によるブレーキランプの認識など、高い認識性能を誇ります」とSUBARUではする。


操舵を誤ると警告が発せられる
操舵を誤ると警告が発せられる

 アイサイトXでは、センサーの画素数が、現行バージョン3の1.2メガピクセルから2.30メガピクセルにグレードアップし、認識する対象物の範囲が拡大している。


 「SUBARUのアイサイトは、カメラをヴィオニア(Veoneer)に発注といったように、ハードウェアは外注ですが、ソフトウェアのアルゴリズムは社内で開発しています。認識ユニットも、SUBARUは独自。それによって、このシステムの性能を限界まで引き出しているのがアイサイトのメリットです」


 テストコースで製品の説明をしてくれた技術者の言葉だ。


 果たして印象は、というと、車両がステアリングホイール操作を支援しながらの走行が、よりナチュラルで、かつ正確で、感覚的にいうと、より信頼して頼っていられるようになったことだ。


 私が試したのは、直線とカーブ、それにいくつかの”障害物”を組み合わせたコースだ。直線では”下界”の高速道路の制限速度をはるかに上回る速度も試せる。


 新しい1.8リッターターボエンジンに、制御が緻密になった変速機と、サスペンションシステムの設計が変更されて操縦安定性と乗り心地が向上した、といいことずくめの新型レヴォーグ・プロトタイプ。それ以上の評価は、ここでは触れないでおく。


 今回もレヴォーグでの初採用になる、新しいアイサイトXの機能の高さも、このクルマの大きな魅力のひとつになるはずだ。


 感心した機能の一つが、カーブの曲がり方である。車両が自動的に減速し、かりにステアリングホイールから手を離していたとしても、きれいなラインでコーナリングするのだ。驚くほどナチュラルな感覚といってもいい。


 システム作動中に、高速道路でウインカーを出すだけで、車両が隣のレーンへと移るよう、車載コンピューターがステアリングホイールをアシストする機能も、スバル車として初めて採用された。


 同時に、ステアリングホイール操作へのアシスト機能は、事故防止の面でも働く。隣の車線に車両がいる場合、その存在を教えるとともに、ドライバーがそちらへ操舵しようとしても、ステアリングホイールに反力を与えて注意を促す。上記の「アクティブレーンチェンジアシスト」を作動させても、こちらがオーバーライド(優先して機能)する設定は、メーカーの安全思想ゆえだ。


アイサイトXは隣の車線に車両を認識すると操舵に反力を加える
アイサイトXは隣の車線に車両を認識すると操舵に反力を加える

 デジタル化がこれからもクルマの安全に寄与していく余地はたくさんあるだろう。その中で、人間の眼の機能を基にしたステレオカメラにこだわり、同時にほとんどの車両に標準装備することで安全を多くの人に提供するSUBARUの姿勢には感心させられるのだ。


(写真提供=SUBARU)


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