LEXUS DESIGN AWARD(以下LDA)は、世界中の次世代を担うクリエイターの育成・支援を目的とした国際デザインコンペティション。2013年に創設されて以来、毎年、刺激を与えてくれる。


 2020年の受賞者は、オープンソースのソフトウエアを使ってコミュニティーを作っていくアイデアを発表した、ケニアのデザインコンサルティング事務所だ。


 注目して欲しいのは、今、デザインと言っても大変広義になっていて、とりわけデジタル技術の活用が重要なことだ。2000近い応募を世界中から受け付け、6組のファイナリストを選出するLDAでも、デジタルとクラフツの融合を試みる提案が少なくないようだ。


 2020年のグランプリに選出されたのが、ケニアのBell Tower(ベルタワー)による「Open Source Communities(オープンソース・コミュニティーズ)」。安定した水資源が確保できていない地域の生活水準を改善するコミュニティデザイン、なる提案だ。


「ベルタワー」のジョン・ブライアン・カマウ氏
ベルタワーのジョン・ブライアン・カマウ氏

 建物の素材は100%リサイクル可能な合成樹脂と、地元で入手しやすい木材が中心になる。同地に多い竹も積極的に採用される。オープンソースを使って設計を行い、そこにデザイナーが参画。基本設計に手を加えることで、合目的的な構造にするという。デジタル技術で地域の抱える問題を解決しようという姿勢ゆえ、話題性も十分だった。


 デザインとは、どちらかというと、クルマを含めた日用品を対象にした工業デザインと思われがちだ。しかし、実はカバーする領域は、人間が生きている世界の全てであることを再確認させてくれた意味でも、おおいに注目に値する。


 「人類がその環境を変革したり、それに適応したり、その能力を拡張したりしながら、さらに広く自分自身をも変革してゆくために用いる道具」とデザインを定義したのは、優秀なデザイン思想で世界中に影響を与えた米のビクター・パパネクだ(「人間のためのデザイン」阿部公正・和爾祥隆共訳より抜粋)


 そもそもLDAは、イタリアで4月に開催される「ミラノ・デザインウィーク」がグランプリ発表の場だった。LEXUSは大規模なインスタレーション(一時的な展示)が展開できるトルトーナ地区を好んできた。


 そこに特設された会場では、LDAのユニークな作品が展示されるとともに、例えば2019年はコラボレーションデザイナーにアーティスト集団Rhizomatiksを迎え、ミラノの観客に「LEADING WITH LIGHT」なるインスタレーションを見せた。


 LEXUS自身の言葉で内容を説明すると、「暗闇に動く無数の光線が、人間の動きに呼応するようプログラムされたロボットやパフォーマーと一体となったもの」で、審美性と技術が合致した印象的なものであった。


 LDAによる、単なるデザインアワードを超えた、デジタル技術を活かし、時代の表現としてもすぐれた内容が、グローバルな評価を確立してきたのである。


 2020年は、しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて、デザインの祭典と言われるミラノ・デザインウィークそのものが、惜しまれながら中止となってしまった。


 LDAも、ミラノでの公開はなくなり、その代わり世界中にいるファイナリスト、審査員、メンターが、オンライン形式で参加する発表となった。ファイナリストに選出された6組にはメンターが付き、数カ月にわたってメンタリングプログラムを受講。メンタリングのもとに磨き上げてきた自身のアイデアを動画にまとめ、審査員にオンラインでプレゼンテーションをした。異例であった。