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総務・法務 公開日: 2021.10.22

テレワーク阻む「請求書業務」、出社強いられる非効率な実情とは?

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 テレワークには導入しやすい部門とそうでない部門が存在する。紙の書類を扱う業務が多い総務・経理部門などは障壁の多い部門の一つと言えるだろう。この記事ではそういった部門がテレワークを円滑に導入する方法を解説する。

画像:Shutterstock

目次

テレワーク阻害の原因は「紙の請求書の処理」

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、テレワークが社会的に重要視され始めてから1年以上が経過した。2020年10月の毎日新聞の調査では、新型コロナウイルス収束後もテレワークを続けたいと回答した企業が9割にものぼった。
 しかしながら、前向きな意識とは裏腹に、テレワークの導入には課題がある。東京商工会議所が2020年11月に発表した調査結果では、新型コロナウイルス拡大のタイミングでテレワークを導入していた企業のうち、3割が取りやめている。取りやめた理由はさまざま挙げられているが、その中に「経理は現場とのすり合わせが多く、オンラインは難しい」との声があった。
 一般的には、テレワークを利用しやすい部門はソフトウエア・エンジニアリングなどの専門・技術部門や研究部門などが挙げられるだろう。

 一方で、利用しにくい部門は工場や店舗、施設などの現場業務の部門が挙げられるが、総務・経理部門も意外にテレワークを利用しにくい部門と言える。総務・経理部門をテレワーク化している企業もあるが、あくまでも部分的導入に留まっているケースが多い。なぜ総務・経理部門はテレワーク化しにくいのだろうか。

 総務・経理部門がテレワークを利用しにくい理由は請求書など紙の書類の業務に出社が必要だからである。テレワークを利用している総務・経理担当者の中にも、請求書の処理のためだけに出社している人がかなりの割合で存在する。

 月刊総務が2020年6月に実施した調査では、緊急事態宣言中に「完全にリモートワークだった」総務担当者はわずか1.6%しかいなかった。

請求書の受け取りのために出社せざるを得ない実情

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 2021年1月に実施されたSansanの調査によると、請求書を処理するために出社している経理財務担当者は92.3%にものぼっている。請求書の処理の中で何がテレワークを阻害しているのだろうか。

 同調査では請求書に関する業務のうち「出社して対応しなければならない業務」についても質問し回答を得ている。それによると出社して対応しなければならない業務の第1位に、実に46.9%もの担当者が「請求書の受け取り」と答えている。

 2位以下は請求書の「内容確認」「振り分け」「支払申請」と続くが、「受け取り」だけが突出して多いのは、やはり取引先の意向がある業務だからであろう。いくらテレワークが必要だと分かっていても、取引先から「うちは紙の請求書しか発行できない」と言われたら現実にはそれに応じたやり取りをするしかないからだ。

 同調査では普段受け取っている請求書の媒体についても調査しているが、「ほぼ全ての請求書を紙でもらっている」との回答がトップで60.8%に上った。「4分の3が紙の請求書」「半数が紙の請求書」と合わせると実に9割以上にのぼる。

 また「取引先から紙など特定の形式でしか請求書を発行できないと言われた経験があるか」という問いに54%が「はい」と答えている。このような場合、請求書をオンライン化している会社では紙で受け取った請求書をスキャンして電子化している場合が多い。そうすると、送られてきた紙の請求書をスキャンするために、結局出社しなければいけないのだ。請求書にまつわる業務をオンライン上で完結させ、テレワークを推進するには、取引先が紙の請求書しか発行できない場合にどうするかが課題となるだろう。

請求書業務にかかわるのは経理部門だけではない

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 紙の請求書の処理で出社しているのは経理部門だけだと考えてしまいがちだが、実は経理財務以外の部門においても紙の請求書の影響は強い。先述のSansanの調査では経理以外の部門についても調査しているが、実に82.5 %が「請求書に関する業務を行うために、出社する必要がある」と答えている。

 なぜ経理以外の部門が紙の請求書のために出社しているのだろうか。これは各企業の社内フローや社内ルールによる影響が大きい。請求書の処理のフローは部門横断的であり、さまざまな社員の手を介して処理されるからだ。

 しかも請求書の内容によって関連する部門やフローが異なる事実もオンライン化を妨げている。例えばある取引先からの請求書は営業担当が内容確認と申請を行い、営業部長が承認し、経理部門が仕訳と支払を行う。また別の取引先からの請求書は経営企画部の担当者が内容確認と申請を行い、企画部長が承認し、経理部門が仕訳と支払を行う。このように部門を横断して発生する請求書の対応がテレワークを阻害しているのだ。

 請求書に関する業務のオンライン化が必要な理由としては、2023年度から導入される予定の「インボイス制度」の存在もある。インボイス制度とは、課税事業者が発行する「適格請求書(インボイス)」に書かれている税額のみを仕入税額控除の対象にできる制度である。

 なぜこのような制度が必要かと言えば税制のロジックの不整合を解消するためだ。現行の制度では売り上げ1000万円未満の事業者は免税事業者であるため、消費税は非課税である。にもかかわらず、免税事業者に消費税を支払った事業者はそれを控除の対象にできてしまうのである。それはおかしいのではないかと考案されたのがこのインボイス制度だ。

 この制度が導入されたら経理財務部門の負担は大きくなる。なぜなら、インボイス制度が導入されると、発行した側も請求書を保存しなければならなくなるからである。インボイス制度の下で仕入税額控除を受けるにあたって、適格請求書等事業者として登録を受けた課税事業者は、交付した適格請求書や帳簿を保存することが条件となっているのだ。
 現行では受領した請求書を保存している会社がほとんどだが、発行した請求書も保存しなくてはならなくなると経理財務部門の事務処理の負担は跳ね上がる。

 このような事情もあり、請求書に関する業務のオンライン化は急務となっている。しかし、上述したように社内フローの問題でオンライン化が阻害されている現実がある。

 また、紙の請求書が業務に及ぼす影響はテレワークの阻害だけではない。まず紙の請求書は保管するのに物理的なスペースが必要になる。請求書の控えは7年間の保管が義務づけられており、保管コストがかかる。また、受領した際に会計ソフトに手動で仕訳入力しなければならならず、時間的なコストもかかっている。

 さらに紙の請求書には紛失のリスクもある。取引先から受け取った請求書を紛失し、取引先に再発行をお願いするミスが考えられる。再発行には手間とコストがかかるため、取引先にも迷惑をかけてしまいかねない。

 オンライン化された請求書であれば記録が残るので、このようなミスを低減できる。

請求書の処理に発生する時間は83時間!? 全社で解決しなければならない課題

 先述したように、テレワーク実施中でも請求書に関する業務のために8割以上の社員が出社している事実がわかった。同調査ではその他にも「請求書の処理に発生する時間」や「請求書に関する業務で担当者が感じるストレス」についても言及している。同調査の詳しい結果と解説は以下の資料にまとめている。総務・経理業務の実態をひも解きながら、総務・経理部門のテレワークを推進するための対策が書かれているので、ぜひダウンロード(無料)してみてほしい。

テレワークを推進するためにはまず請求書のオンライン化を

 本記事では、請求書に関する業務がテレワークを阻む原因になっていることを解説した。請求書の処理のために多くの社員が出社を余儀なくされており、テレワークの推進を阻害している事実が分かった。それは総務・経理部門に限った話ではなく、他部門の社員も請求書の処理のためにテレワークがしにくい現状があるのだ。テレワークを円滑に推進するためには、まず請求書のオンライン化から手をつけるのが肝要といえるだろう。

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