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総務・法務 公開日: 2020.03.09

働き方改革関連法の施行に伴う、就業規則の変更・改定・見直しのポイントとは

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 働き方改革関連法の施行に伴い、企業の就業規則にも変更・改定が求められる。大企業・中小企業を問わず義務化された、労働時間の客観的把握、年5日の有給休暇取得義務化は、就業規則の記載内容に関わるものである。

 そこで本記事では、就業規則を見直すときのポイントを、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」やオンライン作成支援ツールの活用を交えて解説する。

目次

対応しなければならない、働き方改革関連法に対応した就業規則の改定

 働く人のニーズが多様化している現代において、個々人の事情に合わせて柔軟な選択ができる働き方を実現するために、「働き方改革法案」は、2018年6月に成立し、2019年4月から順次、施行されている。そのため、企業はこれらの改革内容を反映させた就業規則の変更・改定が求められている。

 就業規則は、就業時間や休暇、給与や手当などの待遇といった労働条件、就業する上で従業員が守る規律などについて定めたものだ。常時10人以上の従業員がいる企業では、労働基準法の規定により就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出る義務がある。就業規則の内容を変更する場合にも、同様に届出が必要である。

 働き方改革関連法の施行に伴う就業規則の変更・改定については、社会保険労務士、経営コンサルタント、所属商工会議所などの専門家に、自社ではどのような対応が必要なのかを確認し、法令違反とならないように対応を進めていかなければならない。

厚生労働省「モデル就業規則」(平成31年3月版)に見る就業規則の見直しポイント

 就業規則の変更・改定に取り組む際に参考となるのが、厚生労働省が発表している「モデル就業規則」である。現在、公表されている「モデル就業規則」(平成31年3月版)は、2019年4月1日から始まった「年5日の有給休暇取得義務化」などの労働基準法の改正に対応できるよう、必要な事項についての条項を、追加で記載または修正が行われている。

 必要最低限ではあるが、労働基準法に定められた事項や、国が推奨する事項などが盛り込まれているため、テンプレートとして十分に活用することができる。次項から就業規則の見直しポイントについて詳しく見ていこう。

労働時間の客観的把握の義務化への対応(2019年4月~)

 労働者の安全と衛生に関する基準を定めている法律が「労働安全衛生法」である。職場での労働災害の防止や、従業員が健康的な環境で働くことができるように、安全面・衛生面での基準を規定している。この「労働安全衛生法」が働き方改革に伴い改正され、2019年4月から「労働時間の客観的な方法による適正な把握」が企業に義務付けられた。

 これまでも労働基準法において賃金台帳などの記録・保存義務はあったものの、支払い賃金を計算するのが目的であり、法律では労働時間の把握についての規定は明文化されていない状態であった。そのため、タイムカードの不正な打刻操作、残業代未払いといった過重労働の温床になっていたとも言われている。
今回の法改正により、使用者(企業)は従業員の労働時間を客観的に把握できる方法で記録・保存し、適正に労働時間を把握する必要がある。

 就業規則において、始業および終業時刻、休憩時刻・休憩時間に関する事項は必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」(労働基準法第39条)である。勤務形態に応じて、どのように労働時間の記録をするのかを就業規則に記載して、所轄の労働基準監督署へ届けなければならない。

 「モデル就業規則」では「第3章 服務規律」の「第17条 始業及び終業時刻の記録」などに記載されている。

年次有給休暇の年5日取得義務化への対応(2019年4月~)

 過重労働を防ぐ労働環境の見直し策の一つとして労働基準法が改正され、大企業・中小企業を問わず全企業を対象に、2019年4月から年5日間の年次有給休暇の取得が義務化された。

 正社員、パートタイム、アルバイト、契約社員などの雇用形態に関わらず、また、管理監督者も含めて、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての従業員が対象である。有給休暇は従業員の申請で取得するため、これまでは、業務が多忙で取得できなかったり、周囲の同僚に遠慮したりするなどの理由で、思うように取得できない現状が社会問題になっていた。こうした状況を打破するために、企業が対象者の希望を聴いた上で、取得時季を指定し、年5日は確実に取得するように義務付けたものである。

 就業規則において、休暇に関する事項は必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」(労働基準法第89条)である。時季指定の対象となる従業員や、時季指定の方法などについて、就業規則に記載して所轄の労働基準監督署へ届け出る必要がある。

 「モデル就業規則」では「第5章 休暇等」の「第22条 年次有給休暇」に記載されている。

働き方改革に対応した就業規則作成支援ツール(テンプレート)

 就業規則は、労働時間や賃金をはじめ、採用・異動、服務規律など、労働条件や待遇についてのさまざまな規定を具体的に定めている。前項でも触れた厚生労働省が公表している「モデル就業規則」を参考にして作成することもできるが、同じく厚生労働省が提供している「就業規則製作支援ツール」を活用すると便利である。

 「就業規則作成支援ツール」は、オンライン上で就業規則を作成できるツール。表示される質問項目を順番に入力していくと、PDFファイルの生成・ダウンロードまで可能だ。これを印刷するだけで、労働基準監督署へ届出ができる。

 作成支援ツールを使うためにはユーザー登録が必要であるが、一度登録をすれば、いつでもログインして過去のデータの保存や更新も可能なため便利である。「法改正に対応するために何を盛り込めば良いのか分からない」、「現行の就業規則を見直したい」という方にはお役立ちのツールであるので、ぜひ、チェックしてみてほしい。

知っておきたい、就業規則の基礎知識

 就業規則は、従業員が安心して働くことができる就業環境を確保し、労使間でのトラブル防止のためにも不可欠である。そのため、労働基準法で定められた要件を満たしていることが重要で、企業や従業員が自由に記載内容を決められるものではない。

就業規則が必要な従業員数とは(作成と労働基準監督署への届出義務)

 就業規則を作成・変更する条件や届け出る際の手続きについては、労働基準法で細かく定められている。内容は次の通りだ。

【就業規則の作成および変更の手続きについて】

  • 労働基準法第89条の規定により、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、定められた事項について就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出る義務がある。変更する場合も同様。
  • 営業所や店舗など2つ以上の事業所を営んでいる場合、企業全体ではなく、常時10人以上の労働者がいる事業所ごとに作成の義務が生じる。
  • 労働基準法第90条の規定により、就業規則を届け出るときは、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を記載し、署名または記名押印がある書面(意見書)を添付しなければならない。

就業規則には必ず記載しなければならない事項とは(絶対的必要記載事項)

就業規則には、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、各事業場内のルールを決める「相対的必要記載事項」の2つがある。

それぞれの記載事項は次の通り。

【絶対的必要記載事項】

1. 労働時間関係
・始業と終業の時刻
・休憩時間
・休日
・休暇
・交代勤務(シフト制)を採用している場合は、その内容

2. 賃金関係
・賃金の決定
・賃金の計算方法と支払い方法
・賃金の締切りと支払い時期
・昇給に関する事項

3. 退職関係
・退職に関する事項
・解雇に関する事項

【相対的必要記載事項】

1. 退職手当関係
・適応される労働者の範囲
・退職手当の決定方法
・計算方法と支払い方法
・退職手当の支払い時期

2. 臨時の賃金・最低賃金額関係
・退職金を除く臨時の賃金
・最低賃金額

3. 費用負担関係(従業員に負担させる場合)
・食費
・作業用品
・その他の負担させる内容

4. 安全および衛生に関する事項

5. 職業訓練に関する事項

6. 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項

7. 表彰・制裁の種類および程度に関する事項

8. その他、事業場の従業員すべてに適用されるルール

 なお、法令または労働協約に反する就業規則については、所轄の労働基準監督署長がその変更を命ずることができる(労働基準法第92条)。

就業規則は従業員がいつでも見られるようにしておく(就業規則の周知)

 作成した就業規則は、従業員一人ひとりが、いつでも見られるようにしておかなければならない。このことを「就業規則の周知」と言い、労働基準法第106条第1項で定められている。

周知の例としては、次のような方法が挙げられる。
  • 一人ひとりに印刷して配布する。
  • 職場の見えやすい場所へ掲示する、または備え付ける。
  • 電子媒体に記録し、常時モニター画面などで確認できるようにする(社内共有サーバーなど)。
 就業規則の効力が発生する時期は、就業規則が何らかの方法で従業員に周知された時期以降となり、就業規則に定められた施行期日か、定められていない場合は通常、従業員に周知された日となる。

働き方改革関連法の規制に合わせ、早急に就業規則の変更・改定の対応を

 働き方改革関連法が施行され、さまざまな労働関連法の規定が変更されている。本記事で紹介した「就業規則」のように、関連法案の改正によって企業の対応が求められている事項もある。

 企業の経営者、担当者は、具体的に何が変更となるのかをしっかりと把握し、対応を行うべきだ。対応に困った際には、厚生労働省をはじめ各都道府県労働局など、行政による支援サポートもあるため、相談してみるのも良いかもしれない。

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