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総務・法務 公開日: 2021.11.02

働き方改革関連法とは? 内容や施行時期・旧制度からの変化を解説

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 現代では個々のライフスタイルに合わせた働き方が求められている。そこで労働力確保や生産性向上のために政府が打ち出している施策が「働き方改革関連法」だ。本記事では働き方改革関連法の内容や旧制度からの変化を解説する。

【画像】Shutterstcok

目次

働き方改革とは?

 働き方改革とは、政府が一億総活躍社会の実現に向けて発足した取り組みのことだ。厚生労働省では働き方改革を下記のように定義づけている。
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
 一億総活躍社会とは50年後も人口1億人を維持し、老若男女や障がいのある人、事業に失敗してしまった人など全ての人が尊重され活躍できる社会のことである。しかし日本の少子高齢化問題は深刻化しており、働き盛りの年齢層が減少することで国内GDPが低下してしまっている。また、育児や介護との両立、働く人のニーズの多様化など、さまざまな課題が山積みである。このままでは一億総活躍社会の実現が厳しいどころか、国力の低下は避けられない。

 そこで政府は労働力不足を解消しつつ一億総活躍社会を実現するため、働き方改革に乗り出した。働き方改革により従業員の労働環境が改善されるだけではなく、自由に選択し働く環境を整えられる。そして日本全体の労働生産性が向上すれば、一億総活躍社会に近づけるという見通しだ。

働き方改革関連法とは?

【画像】Shutterstcok
 働き方改革関連法とは、働き方改革を実現するための具体的な法律である。正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」だ。

 働き方改革関連法は新たな法律として制定されたのではなく、以前から施行されている労働関連法規を改正した内容を総称したものだ。改正された具体的な法令は以下である。
  • 労働基準法
  • 労働時間等設定改善法
  • 労働安全衛生法
  • パートタイム労働法
  • 労働者派遣法
  • 労働契約法
  • 雇用対策法
 この法律の目的は、現代の労働者の多様化する事情に応じて自ら働き方を選べる社会を作ることである。働き方改革関連法は以下のように大きく八つの項目に分けられる(カッコ内は施行時期)。
  1. 時間外労働の上限規制(大企業:2019年4月~・中小企業:2020年4月~)
  2. 勤務間インターバル制度導入の促進(大企業・中小企業とも2019年4月~)
  3. 年5日の年次有給休暇取得の時季指定(大企業・中小企業とも2019年4月~)
  4. 割増賃金率の引き上げ(中小企業:2023年4月~)
  5. 労働時間の客観的把握(大企業・中小企業とも2019年4月~)
  6. フレックスタイム制の拡充(大企業・中小企業とも2019年4月~)
  7. 高度プロフェッショナル制度の新設(大企業・中小企業とも2019年4月~)
  8. 産業医・産業保健機能の強化(大企業・中小企業とも2019年4月~)

働き方改革関連法と従来の制度、変更点は?

 ここでは従来と比べて変わる可能性がある制度を説明する。

従来の制度との違い①時間外労働の上限規制

 一つ目の大きな違いは、時間外労働の上限に規制が設けられた点だ。従来と改定後の制度を詳しくみていこう。
【従来の制度】
・基本的な法定労働時間は「1日8時間・週40時間まで」とする
・これを超えて労働させる場合には、事業者と従業員の間で労使協定(36協定)の締結が必要
・労使協定には「1カ月45時間以内・1年360時間以内」と上限が定められていたものの、年6カ月までは臨時的で特別な事情があれば、これらの上限を超えた労働も可能
・上限を超えても特に罰則はなく、行政指導が入る程度

【改定後の制度】
・労使協定の上限「1カ月45時間以内・1年360時間以内」を基本的に超えることはできない
・臨時的で特別な事情がある場合には、「月100時間未満(休日労働を含む)・年720時間以内・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)」の上限を超えてはならない
・労使協定の原則である「月45時間を超える時間外労働は6カ月まで」とする
・上限を超えて労働させた事業者には、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰則が科せられるおそれもある
 これにより長時間労働による労働生産性の低下を防ぎ、過労死などのリスクを抑える効果も期待されている。

従来の制度との違い②年5日の年次有給休暇取得の時季指定

 働き方改革関連法では2019年4月から、年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての従業員を対象に、年5日の有給休暇を確実に取得させるよう企業に義務づけた。

 従来の年次有給休暇制度は、従業員が「〇月〇日に有給休暇を取らせてください」と自己申請をして取得に至っていた。事業側は基本的に申し出を拒否できないが、風通しの悪い企業ではそもそも自己申請がしにくいといった状況が発生していたため、日本の有給休暇取得率は49.9%と低い。
 そこで現行は「事業者が従業員の希望を聞いて、その希望を踏まえて有給休暇取得の時季を指定する」とルールが変わった。これにより計画的に最低5日間の有給休暇取得を義務化したのである。もしも従業員が希望を言わずに5日間の有給休暇が取れない場合には、事業者自らが時季を指定して有給休暇を与える必要があるわけだ。

従来の制度との違い③高度プロフェッショナル制度の新設

 働き方改革関連法では新たに高度プロフェッショナル制度が設けられた。高度プロフェッショナル制度とは対象の従業員を労働時間の枠から外し、成果報酬型にする制度である。自律的で創造的な働き方を希望する人が、高収入を確保しながら自由な働き方を選択できるようにするのが目的だ。

 同制度の対象となる従業員とは高度な専門知識や技術を持ち、労働時間と成果の関連性が低い業務を担っている専門職である。例えば以下のような業務だ。
・金融商品の開発業務
・金融商品のディーリング業務
・研究開発業務
・アナリスト業務
・コンサルタント業務 など
 また対象者の中でも同制度の利用を希望する者かつ、年収が1,075万円以上の従業員が対象だ。
【画像】Shutterstcok

従来の制度との違い④勤務間インターバル制度導入の促進

 勤務間インターバル制度とは、1日の業務終了後から翌日の就業開始時刻までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みのことだ。例えば規定の勤務時間よりも2時間残業してしまった場合には、翌日の就業開始時刻を2時間遅らせて調整する。こうした制度により従業員の十分な生活時間や睡眠時間を確保することが目的である。

 また厚生労働省によるとインターバル時間は「8時間~12時間」を推奨している。その時間幅の中であれば、具体的なインターバル時間はある程度企業が決めて問題ない。

従来の制度との違い⑤割増賃金率の引き上げ

 月60時間を超える残業は割増賃金率の引き上げを行う。従来の残業割増賃金率は大企業が50%なのに対して、中小企業は25%であった。今回の改定では大企業と中小企業ともに50%となる。大企業は従来と変わらないが、中小企業は2倍の引き上げだ。

 ちなみに60時間以下の残業における割増賃金率は、大企業と中小企業ともに25%のままである。

従来の制度との違い⑥労働時間の客観的把握

 全ての従業員において労働時間の客観的把握が義務化された。労働安全衛生法では、裁量労働制が適用されている従業員や管理監督者は対象外であった。なぜなら裁量労働制が適用された従業員はみなし時間に基づいた割増賃金の算定がされており、管理監督者は時間外・休日労働の割増賃金支払義務がかからなかったためである。

 改定後は健康管理の観点から、全ての従業員において労働時間の客観的把握を義務づけた。

従来の制度との違い⑦フレックスタイム制の拡充

 子育てや介護など、従業員一人ひとりの事情に応じて柔軟な働き方が可能となるフレックスタイム制。同制度における労働時間の精算期間が1カ月から3カ月に拡充された。

 従来ではフレックスタイム制を利用して4月にマイナスになった労働時間は、4月中に精算する必要があった。しかし改定後の精算期間は3カ月間となったため、例えば6月に多く働いた分を8月に休んだ分として振り替えることが可能となる。

従来の制度との違い⑧産業医・産業保健機能の強化

 従業員の健康を守るために産業医の活動強化が行われた。具体的には従業員の業務状況や労働時間などの情報を、事業者が産業医に報告する義務を設けた。また事業者は産業医から勧告を受けた場合、衛生委員会に報告しなければならない。

 加えて産業保健機能の強化として、事業者は産業医が労働者からの健康相談に応じられる体制づくりに尽力し、健康診断などを受けられるように改定された。

働き方改革における助成金は?

 前述の通り国が総力を挙げて働き方を改革しようとしており多岐にわたる政策が講じられている。しかし中小企業では、定められた制度に対応し、働き方改革を推進するためには負担が大きい。そこで政府からは働き方改革における助成金が設けられているので紹介しよう。

働き方改革推進支援助成金(旧:時間外労働等改善助成金)

 働き方改革推進支援助成金とは、生産性を高めながら労働時間の縮減などに取り組む企業に対して、その過程で生じた費用の一部を国が支援する制度だ。対象となる企業は中小企業・小規模事業者や傘下企業を支援する事業主団体である。

 そして同助成金制度は労働時間の設定改善を促進するものであり、以下五つのコースに分けられている。
・労働時間短縮・年休促進支援コース
・勤務間インターバル導入コース
・労働時間適正管理推進コース
・団体推進コース
・テレワークコース
 これらのコースの2021年度の交付申請は、2021年10月15日(金)をもって受付を終了。またテレワークコースに関して、昨年分は2020年8月12日(水)に募集を終了しており、2021年分の申請受付は未定である(2021年10月25日時点)。

業務改善助成金

 業務改善助成金とは中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援することで、事業場内の最低賃金を引き上げるための助成金制度だ。具体的には生産性の向上を図るために機械やPOSシステムなどの設備投資をした上で、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、設備投資にかかった費用の一部を助成してくれる。

 同助成金制度では、次の四つのコースが設けられている。
・20円コース(引き上げ額:20円以上、助成上限:20〜70万円)
・30円コース(引き上げ額:30円以上、助成上限:30〜100万円)
・60円コース(引き上げ額:60円以上、助成上限:60〜230万円)
・90円コース(引き上げ額:90円以上、助成上限:90〜450万円)
 各コースで賃金引き上げの人数や対象の事業場などが決められているため、詳しくは厚生労働省の「[2]業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」を確認してほしい。

キャリアアップ助成金

 キャリアアップ助成金とは、非正規雇用者の人材育成や処遇改善に取り組んだ企業に対して助成する制度である。非正規雇用者とは具体的に短時間労働者や有期雇用労働者、派遣労働者などだ。

 この制度を利用すれば非正規雇用者のモチベーションや能力を向上させられるだけではなく、企業全体の生産性向上にもつながる。同助成金制度は主に以下七つのコースに分けられているため紹介しよう。
・正社員化コース
・障害者正社員化コース
・賃金規定等改定コース
・賃金規定等共通化コース
・諸手当制度等共通化コース
・選択的適用拡大導入時処遇改善コース
・短時間労働者労働時間延長コース
 各コースの詳細な内容は厚生労働省の「キャリアアップ助成金」をチェックしてほしい。
 またこれらの助成金制度の他にも、ITツールを活用して生産性向上を図る制度「IT導入補助金」もある。こちらについては別の記事で詳しく解説しているため併せて読んでほしい。

働き方改善のために、企業内制度や風土の見直しを

 国内経済の停滞や、労働人口の減少、働き方の多様化など、企業を取り巻く課題が増える中で企業経営を存続させるためにも、順次施行されている働き方改革関連法への対応に取り組み、企業内の制度改革を目指す必要があるだろう。そのためには政府が用意しているさまざまな助成金制度を活用し、積極的に労働環境の改善を図っていこう。

 また生産性を向上させるためには企業の風土改革も必要だ。下記の資料では経営者や管理職が学ぶべき生産性向上につながる風土改革について書かれている。会社の働き方改革を推進したいと考えている場合にはぜひ読んでみてほしい。

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