sansansansan
  • DIGITALIST
  • Workstyle
  • 電子契約とは?経費削減に効果的なしくみや、導入の注意点を解説
Pocket HatenaBlog facebook Twitter Close
総務・法務 公開日: 2022.10.31

電子契約とは?経費削減に効果的なしくみや、導入の注意点を解説

お気に入り

 契約書を作成するときは印紙を貼るが、電子契約なら印紙が不要である事実をご存じだろうか? 電子契約とは、従来の紙の契約書を介して行われる契約とは異なり、電子文書に電子署名をしてデータ上で取り交わす契約方法のことである。印紙税は契約金額や契約数によっては意外と大きな金額となる場合もあり、例えば不動産売買契約書など第1号文書では、契約金額が1億円を超え5億円以下であれば一冊につき10万円の印紙税額がかかる。それをゼロにすることができるなら経費の節減に大きく寄与できるだろう。本記事では電子契約で印紙税が不要な理由と、導入に関する注意点について解説する。

【画像】Shutterstock

目次

私たちの身近にある印紙税

 印紙税とは印紙税法によって規定される税金のことである。印紙税法の第一章第二条と第三条に以下のような条文がある。

第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
   
 また、同法律の別表第一には以下のように規定されている。

2号文書 請負に関する契約書
7号文書 継続的取引の基本となる契約書(売買取引基本契約書、業務委託契約書、代理店契約書など)
17号文書 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(領収書など)
 この規定を読めば、我々が普段用いる契約書や領収書にも印紙税の課税対象となる文書が多数存在していることがわかる。税率は文書の種類ごとに決まっているが、すべての税率を書き出すと膨大な量になってしまう。一例として「請負に関する契約書」は以下のような税率となっている。

  記載された契約金額が
100万円以下のもの 200円
100万円を超え 200万円以下のもの 400円
200万円を超え 300万円以下のもの1,000円
300万円を超え 500万円以下のもの 2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円
5,000万円を超え 1億円以下のもの 6万円
1億円を超え 5億円以下のもの 10万円
5億円を超え 10億円以下のもの 20万円
10億円を超え 50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円
 
  印紙税の納税は、収入印紙の購入によって行い 、納税の証明として契約書類に購入した収入印紙を貼り付け、消印を押す。収入印紙は郵便局や法務局で購入できるほか、低額のものであればコンビニエンスストアでも購入できる。
 これまで印紙税を納税し、紙の書類で契約を行っていた作業を電子データで行うことが電子契約である。

電子契約なら 収入印紙は不要に

【画像】Shutterstock
 印紙税法には、現在のところ電子契約について規定されている条文はない。だが、国税庁が出している「印紙税法基本通達」という法令解釈通達(※)には、印紙税の課税文書の作成について、以下のような記載がある。

第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
 つまり、国税庁が想定する印紙税の課税文書の「作成」は、「紙に印刷し、行使すること」である。電子文書に電子署名をするなど、電子データで取り交わす電子契約の場合は、紙に印刷しないため、印紙税の対象にはならないのだ。

※ 法令解釈通達とは行政機関がどのように法律を解釈し運用しているか、その運用ルールを下位の行政組織に通知する文書であり、国民に対する法的拘束力はない。ちなみに、裁判所がこれを否認し、無効とするケースもある。加えて、行政がどのように法律を使って取り締まりを行うつもりであるかが規定されているので、コンプライアンス上、内容を押さえておいたほうがいいだろう。

電子契約を導入するためのステップ

【画像】Shutterstock
 このように、電子契約ではこれまで納税してきた印紙税を納める必要がなくなる、つまりコスト削減につながるということが目に見えてわかりやすいメリットといえる。

 では、電子契約をどのように導入すればよいのだろうか。以下に導入ステップの一例を紹介する。

1.適用範囲の策定

 一般的に、デジタル化の際はすべてを一気に変えるのではなく、一部の業務から段階的に導入した方が成功しやすい。それは電子契約も同じである。

 電子契約の場合、高額な契約金額が書かれている契約書のほうが印紙税の節税効果が大きいが、そのような大口の契約締結は取引先も緊張感を持って臨んでいる。不慣れなフローで取引先と交渉するとせっかくの大口の取引に支障をきたす可能性もある。したがって、電子契約のフローに慣れるまでは小口の契約書やNDA、雇用契約書などからの適用をおすすめする。

 少額か金額がない契約書で、なおかつ頻度が高い契約をまず電子化するほうがよいだろう。

2.電子契約サービスの選定

 電子契約の導入にあたっては、さまざまなサービスが存在している。さまざまな言語に対応していたり、当事者署名型と立会人型を選べて厳しく本人確認ができたりするなど、サービスによって機能が異なる。目的や取引先の業種や特性を考慮したうえで、必要な機能を洗い出し、自社に合うサービスを選ぶことが重要だ。また、機能だけでなく、サポート体制の充実度やユーザーインターフェースの使いやすさも、運用後を考えると重要なポイントだ。

3.運用の開始と社内外への周知

 契約の締結は自社だけで完結するのではなく、相手が存在する行為である。いくら電子契約サービスを導入したとしても、契約の相手がそれに応じてくれなければ紙の契約書を作成せざるを得ないだろう。また、その相手方と契約の交渉を行っている自社の現場担当者にとっても電子契約の導入が負担となり、紙の書面での契約を許可するように会社に求めてくるケースも発生するかもしれない。

 そのため、 取引先への依頼や周知を現場担当社員に任せっきりにせず、会社が能動的に支援するべきだ。例えば取引先へ電子契約導入の経緯を説明する資料の用意や、難色を示した場合の取引先とのやりとり方法のレクチャー、トラブル発生時に相談できる窓口の設置などが考えられる。

4.検証と改善、適用範囲の拡大

 電子契約にある程度慣れて体制が安定してきたら、どれだけ効率化されたのか、どれだけ印紙税が節約できたのか、どのようなデメリットが発生したか、検証を行うべきだ。そしてそのデメリットを改善し、より効率化できるように対策を練るべきである。さらに蓄積したノウハウを活用しながら電子契約の適用範囲を拡大していくべきだ。

電子契約における注意と対処

 電子契約を導入する際には、特有の気をつけるべき点がいくつかある。導入前に確認しておこう。    

契約書の類型によっては電子化できないものもある

 契約書類が電子化できることは先に述べたとおりだが、契約の類型によっては書面での契約書の作成が義務化されている場合がある。例えば、訪問販売や特定継続的役務の契約がそれに該当する。そもそも自社の契約類型が電子契約化できるのかどうかは、導入検討時に調べておく必要がある。    

サイバー攻撃のリスクを認識する

 電子契約はクラウドサービスを利用するので、サイバー攻撃という紙の契約書にはないリスクが存在すると認識しておかなければならない。多くの電子契約サービスではデータを一カ所で管理しているため、ハッカーから攻撃を受けると契約書の改ざんや情報漏えいのリスクがある。したがって、電子契約サービスを導入する際には自社やサービスのセキュリティー対策がどうなっているかをしっかりと確認しておく必要がある。

電子契約で印紙税を削減できた三つの事例

【画像】Shutterstock

高島屋の事例

 大手百貨店である高島屋は、年間2000件ほど店舗の改装や設備営繕工事の発注が行われていたのが電子契約サービス導入の背景である。発注数が多いことに伴い、印紙税がかかるだけでなく紙作業による手間が膨大に発生していた。また、契約書類を保管するコストもかかる上に紛失リスクも抱えていたため、改善に至ったのだ。

 高島屋は、改善を進めるにあたって従来紙で行われていた取引先との契約を電子化するだけでなく、自社の固定資産管理システムと電子契約システムを連携させている。その結果、印紙税や紙の契約書にかかっていた保管管理コストや作業時間を削減しただけでなく、契約進捗を可視化したり契約関連書類を自動で作成したりできるようになり業務が効率化された。

MARK STYLERの事例

 アパレルメーカーのMARK STYLERは、大手電子契約サービスの普及率が上がっていく様子を見て魅力を感じ、導入を決定した。というのも管理部門と事業部でそれぞれ書類の管理に課題を抱えていたからだ。管理部門ではワークフローをエクセルで管理しており、現在どこに稟議書類があるのかというステータスを随時手打ちしていたため負荷がかかっていた。事業部では管理部門のワークフローの遅さに不満が溜まっており、その結果、事業部と管理部門の分断が進んでいた。

 同社では電子契約の導入によってワークフローや契約締結のスピードが実感できるほど向上した。また、印紙の削減や、管理部門の法的リテラシー向上などの効果も出ているという。

第一工業製薬の事例

 第一工業製薬では、海外取引先からの要望があったことが電子契約サービス導入のきっかけとなった。法律上許される書類はすべて電子契約にするのが目標だったが、いきなりすべてを電子化すると混乱が予想されたため、eラーニングを利用して社員を教育しながら段階的に導入していった。その結果、短期間で社員間にも浸透し、新型コロナ下での出社頻度を減らすことができたといった成果も出ている。

電子契約と紙の契約書の一元管理をするには?

 電子契約の導入は、印紙税の削減や、管理コストの削減などさまざまなメリットがあることはこれまでに述べた通りである。しかし、つなぐマーケティングが2022年1月に実施した調査によると、電子契約サービスを導入している企業はいまだ4割を下回っており、まだまだ浸透した状態にあるとは言い難い。これからも、しばらくは紙の契約書でのやり取りが必要なタイミングもあるだろう。その際、問題になってくるのが、電子契約と紙の両立である。

 電子化された会社と紙の会社でスムーズに契約を行う必要があるのならさまざまな契約業務に対応するクラウド契約業務サービス「Contract One」がおすすめとなる。Contract Oneではオンライン上の操作で紙の契約書の発行と押印、印紙の貼り付けを代行してくれる。さらに受領した契約書をスキャンしてデータ化し、同サービスで保存もしてくれる。
 つまり、電子契約を採用した企業にとっては電子契約と同様の操作で契約作業を行うことができ、紙の契約書を使う企業から見ればこれまでの紙の契約書と何ら変わりなく契約作業ができる。詳しくは以下に書かれているので、ぜひご覧いただきたい。

関連記事

新着記事

DIGITALIST会員が
できること

  • 会員限定記事が全て読める
  • 厳選情報をメルマガで確認
  • 同業他社のニュースを閲覧
    ※本機能は、一部ご利用いただけない会員様がいます。