マーケティング
公開日: 2022.12.06
ERPとは? 基幹システムとの違いは? 導入手順やメリットも解説
ERPという言葉は知っているが、きちんと理解できている人は少ないかもしれない。特に基幹システムとの違いはわかりにくい。本記事では、ERPとは何か、基幹システムとの違い、メリット・デメリットや導入手順について解説する。

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ERPとは?
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略で、日本語では「企業資源計画」と訳される。企業にはヒト、モノ、カネ、情報の資源が存在するが、それらをどのように配分するかによって経営効率が変わってくる。ERPはそれらの資源を管理し、効率よく運用するための手法を指す。
ERPと基幹システムの違い
ERPとよく似た概念として「基幹システム」がある。基幹システムとは基幹業務を担うシステムである。具体的には以下のようなシステムをいう。
● 生産管理システム
● 販売管理システム
● 在庫管理システム
● 会計管理システム
● 給与管理システム
このように基幹システムとは業務ごとに独立したシステムであって、そこにデータの統合や連携はほとんどない。一方でERPはすべての経営資源に関するデータを一元的に集約し、会社全体がどのように動いているかを俯瞰できる。それがERPと基幹システムの違いである。
● 生産管理システム
● 販売管理システム
● 在庫管理システム
● 会計管理システム
● 給与管理システム
このように基幹システムとは業務ごとに独立したシステムであって、そこにデータの統合や連携はほとんどない。一方でERPはすべての経営資源に関するデータを一元的に集約し、会社全体がどのように動いているかを俯瞰できる。それがERPと基幹システムの違いである。
ERPの目的と由来

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ERPの由来
もともとは欧米で普及していた基幹システムだが、1992年から日系企業でも基幹システムを使っての経営が始まった。しかし、先述したように、これらは業務ごとに分かれており、それぞれの部門が独立して運用している。なぜなら、それぞれの部門の業務は異なっており、システムも別々のもので良いと考えられることが多いためである。しかし実際には、それらは同じ企業であり、完全に独立しているわけではなく、お互いの業務がそれぞれ影響し合っている。
重要なのは「部分最適をいくら繰り返しても全体最適とは関係ない」という点だ。個々の基幹システムをいくら効率化したところで、会社全体で効率がよくなっているとは限らないからだ。そこで経営資源を最適化し経営を効率化するために全体を管理できるERPが必要になってきたのである。
世界最初のERPはドイツのSAP社が1973年にリリースしたが、それから約20年後の1992年に、日本法人のSAPジャパンが設立された。加えて、1990年代後半には会計制度のグローバル化が進み一気にERPが普及したのだ。
重要なのは「部分最適をいくら繰り返しても全体最適とは関係ない」という点だ。個々の基幹システムをいくら効率化したところで、会社全体で効率がよくなっているとは限らないからだ。そこで経営資源を最適化し経営を効率化するために全体を管理できるERPが必要になってきたのである。
世界最初のERPはドイツのSAP社が1973年にリリースしたが、それから約20年後の1992年に、日本法人のSAPジャパンが設立された。加えて、1990年代後半には会計制度のグローバル化が進み一気にERPが普及したのだ。
ERPの目的
ERPの目的は、会社における業務全体の効率の最適化にある。業務工程のどこで効率が悪くなっているのかを可視化し、効率が悪くなっている工程を改善することで会社全体を最適化できるのだ。これは従来の基幹システムでは部門ごとにバラバラに管理されているためできないことである。
改めてになるが、ERPで最適化するのは部門内の効率化よりも、むしろ部門間での連携の効率化だ。また、EPRの使用で経営層はリアルタイムで全体の情報を把握できるため、意志決定のスピードの向上が期待できる。
改めてになるが、ERPで最適化するのは部門内の効率化よりも、むしろ部門間での連携の効率化だ。また、EPRの使用で経営層はリアルタイムで全体の情報を把握できるため、意志決定のスピードの向上が期待できる。
ERPのメリット・デメリット
ERPのメリット
従来の基幹システムとの違いや、ERPの由来や目的などについてこれまで触れてきたが、ERPのメリットは主に以下の三つである。
1. リアルタイムでの経営状態の可視化
2. データドリブンの実現
3. 管理会計の強化
従来の基幹システムの場合は各システムが独立で動いているため、全体を把握するには社員にデータをまとめさせなければならない。頼まれた社員は各部門を回ってデータを集め、異なる形式のデータを正規化し、Microsoft Excelなどでまとめなければならない。各部門がすぐにデータを出せばよいが、忙しいときなどデータを出すのに何日もかかる場合もあっただろう。これではリアルタイムで経営状況を把握できない。
ERPを利用していれば、データが常に集約されているため、そのような集約作業は必要ない。経営者が経営状況を確認したいと思ったときにERPのダッシュボードにアクセスすれば、常に全ての部門の状況が可視化されている。このことにより迅速でデータドリブンな意志決定や管理会計の強化が可能となるのだ。
1. リアルタイムでの経営状態の可視化
2. データドリブンの実現
3. 管理会計の強化
従来の基幹システムの場合は各システムが独立で動いているため、全体を把握するには社員にデータをまとめさせなければならない。頼まれた社員は各部門を回ってデータを集め、異なる形式のデータを正規化し、Microsoft Excelなどでまとめなければならない。各部門がすぐにデータを出せばよいが、忙しいときなどデータを出すのに何日もかかる場合もあっただろう。これではリアルタイムで経営状況を把握できない。
ERPを利用していれば、データが常に集約されているため、そのような集約作業は必要ない。経営者が経営状況を確認したいと思ったときにERPのダッシュボードにアクセスすれば、常に全ての部門の状況が可視化されている。このことにより迅速でデータドリブンな意志決定や管理会計の強化が可能となるのだ。
ERPのデメリット
ERPのメリットに続いて、次にERPのデメリットを解説する。デメリットは主に以下の二つである。
1. 運用を徹底しないと正確なデータが取れない
2. システムの利用コストがかかる
まず挙げられるデメリットとして運用を徹底しないとデータが正確でなくなる点がある。ERPは効率的にデータを管理するシステムだが、人力でデータを入力しなければいけない部分は必ず存在する。
例えば、営業をデータ化するには営業スタッフが商談の記録をシステムに入力しないといけないケースも多いが、優秀な営業スタッフほどたくさんのクライアントを抱えるため、入力の工数も膨大になる。ERPを利用する際には自社の各部門で発生する入力の手間や運用ルールをどうするかについて事前に考えておかねばならず、また社内研修なども検討する必要があるだろう。
また、ERPも利用するのにコストがかかるのは言うまでもない。ただ最近は、クラウド型のERPも出てきており、月額で継続的なコストはかかるが導入コストは安価だ。クラウド型のERPは、カスタマイズ性こそオンプレミスに劣るが、サーバー管理作業がなくバージョンアップの作業も担当者が行ってくれるというメリットもある。一方、オンプレミス型の製品は自由度が高いため、自社専用にカスタマイズして作ることができるが、クラウド型のERPよりもコストがかかる。予算が限られている企業はクラウド型のERPを検討するのがおすすめだ。
1. 運用を徹底しないと正確なデータが取れない
2. システムの利用コストがかかる
まず挙げられるデメリットとして運用を徹底しないとデータが正確でなくなる点がある。ERPは効率的にデータを管理するシステムだが、人力でデータを入力しなければいけない部分は必ず存在する。
例えば、営業をデータ化するには営業スタッフが商談の記録をシステムに入力しないといけないケースも多いが、優秀な営業スタッフほどたくさんのクライアントを抱えるため、入力の工数も膨大になる。ERPを利用する際には自社の各部門で発生する入力の手間や運用ルールをどうするかについて事前に考えておかねばならず、また社内研修なども検討する必要があるだろう。
また、ERPも利用するのにコストがかかるのは言うまでもない。ただ最近は、クラウド型のERPも出てきており、月額で継続的なコストはかかるが導入コストは安価だ。クラウド型のERPは、カスタマイズ性こそオンプレミスに劣るが、サーバー管理作業がなくバージョンアップの作業も担当者が行ってくれるというメリットもある。一方、オンプレミス型の製品は自由度が高いため、自社専用にカスタマイズして作ることができるが、クラウド型のERPよりもコストがかかる。予算が限られている企業はクラウド型のERPを検討するのがおすすめだ。
ERPの種類

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ERPにも、どの分野の管理・最適化まで包括するかなどに応じてさまざまな種類が存在する。本セクションでは三つにわけてそれぞれの種類について解説する。
統合型ERP
統合型ERPとは、企業の経済活動を、すべてを統合したシステムで管理するためのERPである。ここまで説明してきたERPのイメージは、この統合型ERPだ。その特徴はすべての部門のデータがシームレスに統合されている点である。例えば営業部門がデータを更新すると、他部門のデータも同時に更新され、カスタマーサービスやバックオフィスの業務にすぐ反映される。会社全体で一つのデータベースを共有しているイメージである。
コンポーネント型ERP
コンポーネント型ERPとは既存のシステムの最適化を目的としたシステムである。いくらERPが有用とはいえ、既存システムをすべて一度に置き換えるのが難しい企業も多いだろう。その際には既存システムを拡張し、連携によってコンポーネント型ERPを構築する。既存システムを活かしつつ、順次導入をしたい場合はコンポーネント型を選択するとよいだろう。また、統合型ERPと比べ、費用や開発期間を短縮できるというメリットもある。
業務ソフトERP
業務ソフトERPとは、コンポーネント型に比べて、より特定分野の業務に適したERPである。例えば、生産業務のデータだけを統一したり、財務部門のデータだけを統一したりする。基幹システムに近いERPであり、費用が安く、導入期間も短いことから小規模な企業でも導入しやすい。
ERPの導入形態
ERPには前のセクションで説明した三つの種類のそれぞれに、二つの導入形態が存在する。
クラウド型ERP
クラウドサービスで提供されるERPである。クラウドサービスとは、サービス提供事業者が構築したクラウド上のERPにインターネットを通してアクセスする形態だ。そのメリットはコストが安価な点と、メンテナンスの手間が省ける点である。クラウドサービスはいわば集合住宅のようなものであり、一つのサービスをさまざまな企業が共有して使うため、一社が負担する費用は比較的安価に抑えられる。また、サーバーのメンテナンスやセキュリティー対策もサービス提供事業者が行うため自社では不要となる。
オンプレミス型ERP
自社でサーバーを用意して構築するERPである。システムが全て自社の資産となるため、カスタマイズが自由で自社の業務に合ったシステムを構築できる。その反面、開発費用や運用・維持・カスタマイズなどのコストや手間を自社で負担しなければならないデメリットがある。また、開発に時間がかかる点も考慮する必要がある。
ERP導入の基本的な流れ

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続いて、ERP導入の流れを解説する。導入に際しては、部署単位などではなく、基本的に会社全体を巻き込んで進めるため、強い推進力が必要となる。
1.目的の明確化
どのような目的でERPを導入するのかをまず明確にする。自社の資源管理の何が問題なのか、どのような課題を解決したいのかを明確にしよう。
2.推進メンバーを選抜する
目的が明確になったらプロジェクトを立ち上げ、推進メンバーを選抜する。ERPは全社を横断するシステムであるため、各部門から一人はプロジェクトに参加してもらう必要があるだろう。さらに、プロジェクトのリーダーは各部門に対して発言することが多いため、発言力を持つ経営層に近い役職者が望ましい。
3.適用する業務プロセスを洗い出す
ERPを導入するに際して、現状、どのような業務になっているのかをすべて確認する。そして、ERPの導入に際して変えなければいけない問題点を整理する。
4.既存の業務フローを変え、試験運用する
3で発見した問題点に基づいて、業務フローを改善する。改善できたらERPを試験的に導入し、本格運用に向けて調整を繰り返す。
5.本格運用する
試験運用で問題なく運用が可能であるとわかったら、本格的に運用する。全体に適用する際には混乱が予想されるため、社内全体に向けたマニュアルの整備や説明会の実施、ヘルプ窓口などを事前に準備しておこう。
ERPの導入で企業の価値を高めよう
ERPの導入によって。バラバラだった社内のデータを統合し、意志決定の迅速化、管理会計の強化、データドリブンの実現が可能となるため、ERPの導入はDX(デジタルトランスフォーメーション)の一種であるといえる。ERPをはじめとしたDXの推進によって企業のビジネス価値を高めることが可能だ。