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マーケティング 公開日: 2023.01.16

UX(ユーザー体験)を見直して自社に似た他社製品との差別化を図る

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 現在、マーケティングにおいて、「このサイトはUX(ユーザーエクスペリエンス)がしっかりしている」「UIだけでなくUXも大事だ」と言われるように、UXは非常に重要視されている。しかし、このUXは非常に感覚的なものであるため、なんとなくしか理解できていないというビジネスパーソンも少なくない。本記事では「ユーザー体験」とも呼ばれるUXについて解説する。

【画像】Shutterstock

目次

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?

 UXとは「User eXperience(ユーザーエスクペリエンス)」の略で、日本語では「ユーザー体験」などと訳される。これはユーザーが製品を利用する際の「主観的な体験」を指す用語であり、ユーザーが製品やサービスを受けたときに感じる心地よい印象、楽しい印象、高揚する印象、それらポジティブな体験のことを「UX」と呼び、またUXを考慮したデザインを「UXデザイン」という。

似ているようで違うUXとUI

 UXとよく似た言葉に「UI」がある。UIとは「User Interface(ユーザーインターフェース)」の略だ。

 UIとは主にIT分野で用いられる用語で、ユーザーとサービスとの接点を指す。ここでいうサービスとはWebサービスやWebサイト、アプリケーションのことであり、これらのデザインやフォント、画面遷移の仕方、画像、動画、音楽、入力フォームなどをUIと呼ぶ。

UIは接点、UXはそこで得られる体験

【画像】Shutterstock
 IT、特にWeb業界では、「UI/UX」とUIとUXを合わせて扱うことが多く、それらの区別を付けず同じようなものだと考えている人も多い。確かにUIとUXには密接な関わりがあるが、この二つは異なるものである。

 UIはユーザーとの接点を指し、UXはその接点から得られる主観的な体験を指す。しかしUXはUIから受け取るものではなくその一部だ。UIとUXを具体的に紹介すると、例えばWebサイトであればハイパーリンクの張り方や文字の大きさ、フォント、文字の色、サイト全体のテーマカラー、メニューの位置、記事のカテゴリの分け方、問い合わせの入力フォームなどがUIだ。

 一方で、UXはそれらから得られる「使いやすい」「文章が読みやすく、わかりやすい」「探している情報にすぐたどり着ける」「楽しい」「定期的に閲覧したくなる」といったユーザーの体験だ。

 ここで注意しなければいけないのは、UXはUIだけから得られるものではないという点だ。Webサイトから得られる情報や、問い合わせに対するスタッフからの返信、商品やサービスを利用して得られた結果からもUXは発生する。つまりUXをもたらす要素の一つがUIであり、UIはUXの一部にすぎない。

今、良いUXが求められる理由

 これまでは、商品やサービスの良し悪しを決めるのは機能性やスペックだった。しかし、技術や製品のコモディティ化により、市場が飽和してくるにつれて機能性やスペックだけでは他社製品との差別化が難しくなってきた。

 また、現代は価値観が多様化している。昔は多くの人が同じようなライフスタイルを送り、同じ新聞広告やテレビCMを見て、同じ商品を欲しがった。しかし、現代は、ライフスタイルも価値観も個々人によって異なる時代だ。「スペックが高いから買う」「便利だから買う」時代から「この製品のファンだから買う」「このブランドが好きだから買う」時代へとユーザーの購入する理由が変わってきている。

 さらに現代はSNSの時代でもある。テレビや新聞だけの時代ならばマスマーケティングで商品やブランドの情報をコントロールするだけで良かったが、現代はユーザーの一人一人が発信者でもあり、一元的な情報コントロールが難しくなっている。いくら製品のスペックが高くても、主観的な体験がネガティブであれば、ユーザーはネガティブな口コミをSNSに書き込む。UXが重視されるようになった背景には、このSNSなどによる口コミの影響力が大きくなったということもある。

UXを改善するためのポイント

【画像】Shutterstock

ターゲットを明確にする

 UXはユーザーの主観的な体験であり、年齢や性別、属性によって傾向が異なるものである。したがって漠然と良さそうなデザインにするのではなく、自社のターゲットに刺さるようなデザインにする必要がある。

 例えば若年層の女性と年配の男性では好みの色やデザイン、フォント、文体などが違ってくる。若年層の女性にとってポジティブな体験でも、年配の男性にとってはネガティブな体験になることもありえる。他にもサービスを受ける目的や、その商品領域における知識のレベルによってもUXの良し悪しは変わってくるだろう。

ユーザーの視点で考える

 UXの改善において失敗してしまうケースの多くは、デザイナーや担当者の自己満足で終わってしまうのが原因だ。自身が好む体験ではなく、ユーザーが好む体験を作る必要がある。

 そのためにはユーザーの行動を追跡してデータを取ったり、アンケートによりユーザーの声を直接聞いたりなどの機会を設けて、客観的な判断ができるようにならなければならない。特にWebサイトやアプリケーションなどは、ユーザーの動きを細かく把握できるため、なぜそのような動きをしたのか、考察することができる。

社内の制度の根本から考える

 UXの評価が芳しくない理由は、好みによってネガティブな体験を与えている時と、誰がどうみてもネガティブな体験の時がある。後者を是正するためには社内制度そのものを変える必要がある。誰がどう見てもネガティブな体験とは、例えばシステムやアプリケーションにバグや不具合があり、ユーザーの目的が達成できなかったり、スタッフの問い合わせ対応のスキルが不十分で、ユーザーが不快感を得たりするケースが挙げられる。これらの体験をポジティブに捉えるユーザーはほとんどおらず、発生しただけでほぼ確実にUXが低下するので、優先して対処しておくべきである。

 例えば店舗の販売スタッフに対し、UXを重視した接客をするように指示しても評価制度が個人の売上を基準にしているとUXは向上しない可能性がある。なぜなら、売上を基準にしてしまうとUXへの配慮よりもユーザーの不快感を度外視して強引な売り方をするスタッフが評価される場合があり得るからだ。UXを改善するにはユーザーと接するスタッフがUXに配慮することでインセンティブを得るような制度を作る必要があるだろう。

優れたUXのデザイン事例

【画像】Shutterstock

メルカリの事例

 社内制度を変えてUXが成功した事例としてフリマアプリのメルカリは、UXデザインに基づいた設計で知られている。その施策は多岐に渡るが、革新的だった施策の一つに評価制度の改善が挙げられる。メルカリはユーザー同士がリユース品を売買するアプリであるが、取引が終わった後にユーザー同士がお互いを評価する仕組みがある。

 かつてのメルカリはこれが「良い」「普通」「悪い」の3段階評価であったが、これが良質なUXを阻害する原因となっていた。なぜなら「普通」の解釈がユーザーによって異なるからである。よくない意味で「普通」を選ぶユーザーもいれば悪くない意味で「普通」を選ぶユーザーもいるため解釈の違いでユーザー同士が揉めるケースが多発していた。

 そこで「普通」を撤廃し、「良い」「悪い」の二段階評価にした。「良い」と「悪い」ならば解釈の違いは生じにくいからだ。その結果ユーザーがネガティブな反応を示すケースも低減されたという。

UXを改善して他社との差をつける

【画像】Shutterstock
 UXはユーザーの主観的な体験であり、昨今のマーケティングにおいて重要な概念である。現代のコモディティ化した市場では製品やサービスの機能やスペックだけでは他社との差別化がしにくく、ユーザーの体験を含めた価値を提供しなければならない。UXの改善に取り組めば他社に差をつけられる可能性が高まるだろう。

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