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その他ビジネス 公開日: 2021.07.13

36協定における残業時間の上限は何時間? 仕組みや注意点を解説

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 働き方改革関連法の施行で36協定が注目されているが、協定の内容を正確に理解できていない人も多いだろう。本記事では、36協定とは何なのか、そして規定されている時間外労働や休日労働の規制はどのようなものなのかを解説する。

【画像】PIXTA

目次

36(サブロク)協定とは?

 36協定とは、労働基準法第36条に基づいて企業と労働組合が締結する協定であり、社員の労働時間が法定労働時間を超える場合に企業が遵守すべき項目を規定したものである。労働者を法定労働時間以上の時間で働かせたい企業は労働基準監督署に届出をし、労働組合と36協定を締結しなければならない。

 36協定の締結に当たっては厚生労働省が留意するべき指針を出しており、それは以下のような内容である。

 以下、厚生労働省の指針から引用する。
  • 時間外労働と休日労働は必要最小限にとどめる。
  • 36協定の範囲であっても企業は安全配慮義務を負う。
  • 時間外労働と休日労働の際の業務の範囲を明確化する。
  • 時間外労働の上限を守る。
  • 1ヶ月未満の有期雇用の場合は時間外労働の目安時間を超えないようにする。
  • 休日労働の日数と時間数はできるだけ少なくする。
  • 限度時間を超えて労働させる場合には健康に配慮した措置を講ずる。
  • 限度時間が適用除外されている業種においても限度時間を勘案するのが望ましい。
 絶対に法定時間以上の労働を社員にさせない、かつ、法律で定められた休日に労働をさせない企業であれば36協定を締結する必要はない。ただ、ほとんどの企業は社員に時間外労働をさせているので、36協定はほぼ全ての日本企業と労働者に関係がある協定である。

時間外労働や休日労働の基礎知識

 時間外労働や休日労働は労働基準法により明確に定義されている。労働基準法では、労働時間は1日8時間、週40時間と定められており、これを「法定労働時間」という。一方で、企業は就業規則などで自社の労働時間を定める。これを「所定労働時間」という。労働基準法では所定労働時間が法定労働時間を上回ってはならないと規定されている。

 労働基準法における「法定時間外労働」とは実際の労働時間が法定労働時間を超過した場合の超過分の労働をいう。一方で俗に言う「時間外労働」とは所定労働時間を超過した場合の超過分の労働を言う。つまり、時間外労働の本来の意味は労働基準法が禁止する法定時間外労働とイコールではないのだ。

 例えば所定労働時間が1日7時間の会社では、1時間の残業をしてもそれは法内残業となり、法定時間外労働とはならない。なぜなら残業を加味しても労働時間が法定労働時間の中に収まっているからである。法内残業は時間外労働ではあるが、法定時間外労働ではない。

 36協定において時間外労働について規定されているが、これは法定時間外労働である。便宜上「法定」の言葉が省略されているので注意してほしい。当記事においても特段の記載がない限り時間外労働とは法定時間外労働を指すものとして記述する。

 休日労働とは労働基準法に定められた法定休日に行う労働である。労働基準法には1週間に1回あるいは4週間で4日の休日の付与が規定されており、この日に労働した場合は休日労働となる。労働基準法では36協定を締結しない状態での時間外労働と休日労働を規制しているが、これはどちらか一方でも該当すると協定を結ぶ必要がある。つまり、たとえ週の労働時間が40時間以内であっても、休日労働をさせた場合は協定を結ばなければならない。

残業時間の上限について

【画像】PIXTA

時間外労働の限度時間とは

 もちろん36協定を締結したとしても無制限に時間外労働をさせられるわけではない。時間外労働の上限は原則として「月45時間、年間360時間まで」と決まっている。

 この時間外労働の上限に関しては働き方改革で変更が行われた。変更前の制度では業務上やむを得ない理由がある場合は年6回までこの上限の超過が許可されていた。この例外規定を「36協定の特別条項」という。

 この場合の「やむを得ない理由」には客観的な根拠が必要だ。ただ忙しいからというあいまいな理由では不十分である。例えば繁忙期で客が集中しているとか、毎年受注が増える時期だからとか、一時的な経営努力ではどうしようもないという明確で具体的な根拠が必要になる。

 ただ、従来の制度はこの特別条項の条件さえ満たしてしまえば残業規制が除外され、青天井の時間外労働が可能になるという制度でもあった。いくら年6回までとはいえ、時間外労働が無制限になるのは社員の健康上問題があるので、働き方改革によって従来の上限を超えた上に、新たに規制が設けられたのである。

36協定の「特別条項」の改正について

 改正後の36協定においても、特別条項の条件を満たせば時間外労働の上限を超えることができる。それは従来と同じである。しかし、新しい制度では、上限を超えた場合でもさらにその上に上限が設定された。

 具体的には1年間の時間外労働と休日労働が合計で720時間、1カ月の時間外労働と休日労働の合計が100時間、2~6カ月の平均時間外労働が80時間までとなっている。
 もちろん、法定の上限内であっても個々の36協定で決めた特別条項の上限を超えたら違法となる。

36協定届の作成方法

【画像】PIXTA
 このセクションでは労働基準監督署に届け出る36協定届の書き方を解説する。漏れがないように記入しないと受理されないので注意してほしい。

特別条項なしの場合

 まず、特別条項なしの36協定届けについて、記載しなければならない主な項目は以下の通りである。厚生労働省が発表している様式から引用する。
  1. 事業の種類
  2. 事業の名称
  3. 事業の所在地
  4. 協定の有効期間
  5. 時間外労働をさせる具体的理由
  6. 業務の種類
  7. 労働者数
  8. 所定労働時間
  9. 法定労働時間を超える時間数(1日、1か月、1年の時間数をそれぞれ記載)
  10. 休日労働をさせる具体的理由
  11. 業務の種類
  12. 労働者数
  13. 所定休日
  14. 労働を課せられる法定休日の日数
  15. 労働を課せられる法定休日における始業時刻と終業時刻
  16. 時間外労働の上限規制の確認(チェックボックス)
 記載において間違いやすい部分を以下に解説する。
 2「事業の名称」については、会社名だけではなく事業所単位で記載が必要である。例「○○株式会社 △△営業所」

 4「協定の有効期間」については特に上限の定めはないが、厚生労働省によれば1年間が望ましいとされている。

 5「時間外労働をさせる具体的理由」については「緊急の対応を要する場合」のような抽象的な内容ではなく、具体的な業務内容まで書かなければならない。例えば「製品の不具合対応」や「受注の集中」などである。

 9の「法定労働時間を超える時間数」については、1年間の時間数の欄に起算日を書く必要がある。この起算日は協定の有効期間の起算日と同一の日である必要がある。これは協定の有効期間の長さに関わらず合わせなければならない。

 16のチェックボックスは、時間外労働と休日労働の合計が1カ月に100時間未満、2~6カ月の平均が80時間であることを確認するものである。チェックボックスが目立ちにくいので忘れないように注意する必要がある。このチェックを忘れると36協定は無効である。

特別条項ありの場合

 特別条項ありの場合は先述した特別条項なしの場合の記述に加えて、以下の記述も必要である。厚生労働省が発表している様式から引用する。
  1. 臨時的に限度時間を超えて労働を課せられる場合(理由)
  2. 業務の種類
  3. 労働者数
  4. 1日、1か月、1年の上限時間数
  5. 時間外労働が限度時間を超える場合に必要な手続き
  6. 健康および福祉のための措置
  7. 時間外労働の上限規制の確認(チェックボックス)
 以下に間違いやすい部分を解説する。
 17は限度時間を超える理由であるが、こちらも一般条項と同じように具体的に書く必要がある。また、この理由は「突発的な仕様変更」「トラブル対応」のような臨時的、突発的な理由でなければならない。例えば「業務上やむを得ないとき」のような恒常的な長時間労働を招くおそれのある理由は認められない。

 22については特別条項のみに課せられた義務で、社員の健康や福祉を確保する措置を講じる必要がある。こちらも「産業医との面談」など具体的な措置でなければならない。

 23については一般条項にも同じチェックボックスが存在したが、特別条項の様式も同じようにチェックする必要がある。これを忘れると36協定は無効である。

36協定に関する注意点

割増賃金について

 社員に時間外労働をさせる際には割増賃金を支払う義務がある。労働基準法で定められている賃金割増率は以下の通りである。
【画像】編集部作成
※時間外かつ深夜の場合、休日かつ深夜の場合は、深夜労働手当が時間外労働手当や休日労働手当の上にさらに加算される。
※中小企業に対しては2023年4月1日から適用となる。

代表選出が必要な場合について

 労働組合のない会社が36協定を締結するためには、労働者の代表者を選出する必要がある。この選出には以下の要件が定められている。
  • 労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者(いわゆる管理職)ではない
  • 36協定の締結のための労働者代表の選出を明らかにした上で、投票または挙手によって選出する

徹底した勤怠・労務管理が必要

 ここまで述べてきたように、36協定は働き方改革によって制限が厳しくなっており、徹底した勤怠・労務管理が必要である。特に社員が自発的に時間外労働をして会社に届け出なかったり、終業時刻を過ぎているのにいつまでも会社に残っていたりすると36協定違反であるとして問題化するリスクがある。

 このような勤怠・労務管理を徹底するにはITツールを活用するのも一つの手段だ。ITツールは全て勤怠履歴が残るので社員の時間外労働の可視化が可能である。

 特に昨今ではリモートワークの導入も進み、社員の時間外労働時間が余計見えづらくなっている。以下の記事では、リモート下の見えない残業を改善し、労働環境を整える方法について解説しているので、ぜひ読んでほしい。

徹底した労務管理で社員のワークライフバランスを守る

 本記事では36協定と時間外労働について解説した。近年は働き方改革によって36協定が注目を集めている。さらにテレワークの推進とも合わせて、徹底した勤怠・労務管理は企業に不可欠となっている。社員のワーク・ライフ・バランスの向上は企業のブランド向上にも有用である。

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