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その他ビジネス 2020.03.11

人手不足や業務のしわ寄せ……中小企業の働き方改革 課題と成功事例

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 近年、国策として推進されている「働き方改革」。国民一人ひとりが多様な働き方を選択できる社会の実現を目指すもので、働き方改革関連法が順次施行されるなど、法整備も進められている。これに合わせ、法規制への対応や働き方改善の取り組みを始める企業も増えている。

 その一方で、人手不足や多忙な業務といった課題に直面し、具体的にどのようなアクションを起こすべきか悩んでいる企業経営者・担当者も少なくない。

 本記事では、企業の働き方改革への取り組みの状況と、実際の取り組み内容の事例を紹介する。

目次

働き方改革に取り組んでいる企業は、60%

 株式会社帝国データバンクは、2019年12月に実施した「TDB景気動向調査」と合わせて、特別企画「働き方改革に対する企業の意識調査」を行った。
※調査期間は2019年12月16日~2020年1月6日。全国23,652社を対象に調査し、有効回答企業数は10,292社。
 この調査結果によると、働き方改革に「取り組んでいる」と回答した企業数は60.4%だった。2018年8月に実施した前回調査では37.5%だったことから、1年超で22.9%増という結果に。

 これを企業規模別に見ると、次表のようになる。
企業規模 「取り組んでいる」と回答した割合
大企業 75.7%
中小企業 56.7%
小規模企業 41.6%
 働き方改革関連法は順次施行されているが、「時間外労働の上限規制」は2019年4月時点で中小企業への適用は1年間の猶予がある。企業規模別に取り組みの割合に差があるのは、こうした法規制のスケジュールも影響していると考えられる。

 今後、働き方改革関連法の適用範囲が広がるにつれ、中小企業での取り組み割合も徐々に増加していくと予測される。

働き方改革の取り組み状況の変化

 働き方改革に着手している企業は、具体的にどのような施策を打っているのだろうか。

 同調査では、働き方改革について「取り組んでいる」(60.4%)、「現在は取り組んでいないが、今後取り組む予定」(16.3%)と回答した合計76.7%の企業を対象に、具体的な取り組み内容を尋ねており、回答数上位10項目を挙げると次のようになる。(※複数回答可)
  1. 休日取得の推進:77.2%
  2. 長時間労働の是正:71.0%
  3. 人材育成:49.6%
  4. 健康管理の充実:45.9%
  5. 職場風土づくり・ 意識の改善、コミュニケーションの活性化:44.7%
  6. 業務の合理化や効率化のためのIT・機器・システムの導入:43.6%
  7. 従業員の理解を得ること:40.8%
  8. 定年の延長・廃止、継続雇用制度の導入:38.3%
  9. 業務の集約化やプロセスの見直し・改善:37.5%
  10. 経営層が率先して推進すること:37.4%
 結果から、「休日取得の推進」や「長時間労働の是正」を挙げる企業が多く見られた。これらの取り組みに対して、実際に企業が行っている施策には次のようなものがある。
  • 有給休暇も含めた休暇を最大限利用できる環境の整備
  • 社内業務をシステム化して労働時間を短縮
  • 時間外労働・休日出勤の管理体制をペーパーレス化
 積極的に取り組んでいる企業では、「従業員の心身の健康を配慮しつつ、働きやすく自己向上できる職場づくりを目指していきたい」など、前向きな意見が見られた。

働き方改革に取り組んでいない理由

 76.7%と、4社中3社が何らかの取り組みをしている(または今後取り組む予定としている)一方で、「以前取り組んでいたが、現在は取り組んでいない」「取り組む予定はない」と回答した企業も全体の10.9%存在した。その理由として多かったのが、「必要性を感じない」(34.2%)、「効果を期待できない」(25.4%)、「人手不足や業務多忙のため、手が回らない」(22.4%)などだ。

 働き方改革への対応の難しさという点では、積極的に取り組みを行っている企業にも多くの悩みがあり、次のような課題が挙げられている。
  • 労働時間が仕事量になるため、時間短縮が社員の所得ダウンに直結しやすい(建設業)
  • 同一労働同一賃金で人件費は必ず上昇し、赤字になる可能性があるため、人員削減するしかない(製造業)
  • 資金力、余剰人員の問題、人材などが異なる大企業と中小企業を同じ法律で縛るのは厳しい(製造業)
  • 有給休暇を消化するタイミングが難しい。休むと工事が滞ってしまう(土木建築)
 人員や資金面に限りがある中小企業は、多くの課題を解決しながら働き方改革に取り組まなければならない。業種によっても取り組みに差が出てしまうことも課題である。

働き方改革における課題の一つは「人手不足」

 企業が働き方改革に取り組む上で大きな課題の一つとなっているのが、「人手不足」だ。最適な人員配置ができていない結果、今いる従業員の長時間労働や休暇取得率の悪化にもつながる。

 では、「人手不足」という課題に対して、どのような対策が打てるのだろうか。厚生労働省が開発した「働き方・休み方改善指標」を用いたコンサルティングに基づく対策例を見てみよう。

「人手不足」が引き起こす課題と解決ポイント

 「人手不足」は、企業の事業活動にさまざまな影響を及ぼす。「人手不足」が引き起こす課題と解決ポイントには、次のようなものがある。

課題1:所定休日以外の有給休暇は、急な病欠などでしか利用できない

 人手不足の問題で、よく耳にするのがこの課題だ。有給休暇を取得しようと思っても、チームの負担を減らしたくないから休みが取れないという従業員は少なくない。

 これを解消するためには、「連続休暇制度」などの仕組みを用意するという方法が挙げられる。しかしながら、制度を作っても浸透するとは限らない。全従業員が制度を活用するために、人員配置・業務内容の見直し、支社・店舗間の応援人員の確保など、休暇取得促進に向けた働き方の見直しも同時に進める必要がある。

課題2:従業員によって業務の効率にばらつきがある

 従業員数が少ない職場では、業務が属人化しやすい傾向にある。そのため、社内でノウハウが蓄積されず、業務効率が上がらないという課題に直面しやすい。これを防ぐために、コミュニケーションツールの導入やIT化を進め、一人ひとりの従業員の知識や経験を共有および収集できる環境を整えることが重要だ。

課題3:担当プロジェクト終了後、すぐに次のプロジェクトに投入される

 プロジェクト進行中はチームで動くことが多く、不測の事態への対処も求められるため、休日を含めなかなか休暇を取ることができない。こうした状況が慢性化するのを防ぐためには、プロジェクト終了後には連続○日の休暇を取得するといった制度を設ける方法がある。連続休暇を加味したスケジュールや事業計画を、マネジャーや上長に義務付けることも必要だ。

働き方改革への取り組みで、人手不足も解消

 働き方改革に取り組んだ結果、人手不足という深刻な課題の解消につながった中小企業も少なくない。その立役者となったのがITツールの導入だ。

 これから紹介する3社は、いずれもIT活用を推進したことで業務効率化に成功し、働き方改革を実現できた。なぜこの3社は効果的にITを活用することができたのか。それぞれの背景やIT活用の効果について紹介する。

温泉ホテルが顧客管理、予約管理、売上管理をITツールの活用で一元化

 新潟県南蒲原郡で旅館を営むホテル小柳。新潟の温泉地の一つである田上温泉にある4軒の旅館のうち最も規模が大きく、多くの宿泊客が訪れる。従業員はパートを含め90名いるが、人手不足による従業員の確保が課題であった。また、旅館での管理業務は手作業や重複作業が多く、マンパワーが必要なものばかり。人手不足解消とあわせて、業務効率化も進めていきたいと考えていた同社社長がIT活用に興味を示したのは、同業者からのアドバイスがきっかけだった。

 導入したのは、顧客管理や予約管理、売上管理など宿泊業に合わせたデータを連携・活用できるITツールだ。これらのITツールを採用したことで、現在ではインターネットからの予約データを取り込み、部屋割りまで自動で行えるようになった。また、予約データは調理予定にも自動で反映されるようになり、手作業による管理や入力作業が大幅に削減。スタッフはスマホ端末を持ち歩き、宿泊客の情報・メニュー変更にも素早く対応することができるようになった。

介護施設ではシフト管理、サービス実績記録をIT化することで時間削減を実現

 四国総合プランニングは、香川県高松市で複合型介護施設「檀紙」(だんし)を運営している。医療施設と連携した施設型介護サービスを展開しており、従業員43名の内、大半が介護福祉士、あるいは、看護師の資格を持っている。

 同社のシフト管理は、これまで紙を利用した手作業で行っており、従業員数が多いため、シフトの管理作業だけで毎月延べ3日の時間を要していた。また、提供したサービス内容を記録する「介護サービス実績記録」については、表計算ソフトを利用して作成していた。ファイルで日報、実績表などを作成し、それぞれの情報を演算式で連動できるようにしていたが、セルを更新して計算式を消してしまうなどのミスが多く、都度、その点検・やり直しに時間がかかっていた。

 同社は「IT導入補助金」を活用し、ITツールを導入することに。導入したツールでは、勤務シフト作成、介護サービス実績、勤務実績などの情報を一元管理することができる。これまで手作業で行っていたシフト作成をシステムが自動作成してくれるため、細かい調整だけで済むようになった。また、以前までの操作ミスによる修正作業もなくなり、書類作成の時間が大幅に削減されたことで、顧客への対応に集中できるようになったという。
IT導入補助金とは
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を国が補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするもの。自社の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析し、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ることを目的としている。
出典:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会

ITツールの活用で業務を効率化し、働き方改革を実現

 働き方改革関連法が順次、施行される中で、企業は働き方改革への対応を迫られている。人材や資金面などに制限がある中小企業にとっては、課題も多く、なかなか積極的な取り組みに踏み出せないケースもある。

 そんな中で、国の補助金を活用したIT化の取り組みなどにより、人手不足を解消したり、業務効率化を図ったりしている中小企業の事例を紹介した。介護や接客業といったマンパワーが不可欠な職場でも、ITツールを活用することで、業務改善が実現し、結果として人手不足の解消へとつながっている。

 現在の職場の業務課題を改めて見つめ直し、業務効率化をきっかけに働き方改革への取り組みを始めてみてはいかがだろうか。

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